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    コミュニケーションがうまくいかない理由は『日本語力』ではなく『機微力』の不足にあった!?

    目次

    株式会社KIBI様-3
    株式会社KIBI

    代表取締役社長 山本 洋平 (Youhei Yamamoto)

    2004年 日本総合研究所に金融コンサルタントとして入社

    2005年 流体力学のベンチャー企業に入社

    2009年 ジャパンスタイルデザイン株式会社設立

    ★2015年2月 千代田ビジネス大賞(特別賞)受賞

    2018年 株式会社KIBI設立

    2019年 一般社団法人機微力研究所設立

    「なんて、常識がないんだ!」
    と怒る日本人上司と、

    「なんで、怒ってるんだ!」

    と憤る外国人部下。

    そんな光景が日常茶飯事になる前に、社員の「機微力(KIBI力)」を鍛えませんか?

    そう提唱し、コミュニケーションに関する研修や、コンサルティング、アプリ開発を推進しているのが、株式会社KIBI代表取締役の山本氏です。

    機微力?初めて聞くな。何それ?」

    と、思われた方のため、今回は職場のモヤモヤを劇的に改善する「機微力」の秘密について、同氏を取材いたしました。

    本記事を一読され、自社のコミュニケーションの問題に関して、

    「こんな解決策があったのか!

    と、少しでも新しい視点を得られましたら幸いです。

    コミュニケーションがうまくいかない理由は、「日本語力」ではなく、「機微力(KIBI力)」の不足にあった!?

    ーー早速ですが、なぜ現場のコミュニケーションはうまく行かないのでしょうか?

    山本氏:結論の前に、まず前提知識としてコミュニケーションは大きく下記の三つの要素で構成されていることを抑えてください。

    ①言語的コミュニケーション

    双方が理解できる「言語」を利用して行うコミュニケーション。

    ②非言語的コミュニケーション

    アイコンタクトや、身振り手振りなどでとるコミュニケーション。

    ③情緒的コミュニケーション

    相互に「感情」機微を読み取り合うコミュニケーション

    以上の三要素が複雑に絡みあうコミュニケーションにおいて、私たちは三つ目の情緒的コミュニケーション能力の欠如が現代の課題だと考えています。

    ーーそれはなぜでしょうか?

    山本氏:それは、世界的に情緒的コミュニケーション能力を育む機会が少なくなっているからです。昔は、兄弟やおじいちゃん、おばあちゃん、町内会等と、濃密なコミュニケーションを取る機会が豊富にありました。しかし核家族化やテクノロジーの発達により、現代はそのようなコミュニケーションの機会が減っています。実際、学術的にも1990年以降に生まれた、いわゆる、ゆとり、ミレニアル、Z世代と呼ばれる世代は、上の世代よりも生の感情のぶつかり合いによる痛み、喜びの経験が少ないと証明されています。

    ーー具体的にはどんな能力が不足しているのでしょうか?

    山本氏:人間のちょっとした感情の揺らぎを感じ取ったり、相手の気持ちを察したりする能力です。私たちはこの能力を「機微力」と定義しています。仕事の現場でもそうですが、プライベートな人間関係においても、「機微力」が不足しているために、齟齬や、摩擦が生じ、メンタルヘルスなどの様々な問題に繋がってしまっていると考えいています。

    ーー「機微力」についてより深く教えてください!

    山本氏:分かりました!「機微力」には大きく3つ重要な要素があります。一つ目は相手軸思考、二つ目は自己相対化、三つ目はアクセプタンスです。それぞれ詳しく説明します。

    ①相手軸思考

    相手軸思考とは、相手の目線に立って、相手と同じように考えたり、感じたりしようとする考えのことです。大学生向けにワークショップや課題型インターンシップを行うこともありますが、彼らが一番身近に感じてくれるのが、恋愛ですね。相手の気持ちを感じ取れないと、関係がうまくいかずに傷ついたり、苦しい思いをすることになります。実際は、研修よりも、実戦で痛い思いをして気づくのが一番成長するのですが、そうなる前になんとか防いだり改善ができないかという思いで研修などをしております。

    ②自己相対化

    自己相対化とは、自分視点でもなく、相手の視点でもなく、第三者の視点から状況を捉える力のことです。サッカーで例えると、中村俊輔選手や遠藤保仁選手などがよく、ピッチの上からのテレビの映像を見ているかのように状況を把握して適切な動きができると称されています。このように、自分とコミュニケーションしている相手を第三者の立場から相対的に把握するスキルがあると、より冷静に適切な表現を選択できるようになります。

    ③アクセプタンス

    最後にアクセプタンスとは、まず全てを受け入れることから始め、受け入れた上で、共通点を探ったり、違いを見つけたりしてこうとする考え方のことです。マネジメントの格言に、

    「無理と拙速は避けよ。」

    とありますが、ある出来事に拙速に反応するのではなく、まずは受け入れることから始めることで、より適切な判断ができるようになります。

    ーーなるほど、少し意識しておくだけでも、職場での摩擦が減っていきそうですね!

    山本氏:現状の世代間ギャップから生じる摩擦に関してもそうですし、今後は、外国籍の方が増えていく中で、文化的ギャップから生じる摩擦を克服するためにも「機微力」は重要になってくると考えています。というのも、現実として、封建的な旧態依然とした日本の組織には、縦社会のルールや空気を読む能力、メンツを潰さない能力が必須です。「機微力」を鍛えるだけですぐに、離職が防げるとまでは言いませんが、少なくとも、上司と部下、日本人社員と外国人社員が、お互いのモノの見方をすることによって生じる不幸な事例を減らせるのではないかと考えています。

    「機微力」の普及と現場の課題改善のための取り組み。

    ↑開発中の機微力診断アプリの簡易診断結果

    ーー「機微力」とは「人間のちょっとした感情の揺らぎを読み取る力」であり、この能力を醸成することによって、齟齬や摩擦などを減らすことができるということは理解いたしました。ここからはより具体的に、いかにして「機微力」という概念を普及させ、現場の課題を解決されるのか教えてください!

    山本氏:現在は、大きく研究領域と事業領域の2軸で課題解決に向けて取り組んでいます。まず、研究領域の取り組みとしては、東京大学、千葉工業大学そして東京工科大学との共同で、一般社団法人「機微力研究所」を立ち上げ、

    相手の気持ちを汲みとる能力はどのくらいか。」

    「どのくらい感情を察することができるのか。」

    「感情を察する精度はどのくらいか。」

    などを測定する、「機微力検定」を実施しています。

    ただ検定を実施するだけではなくて、そもそも理論として正しいのか、評価はちゃんとできているか、アセスメントに使えるのかといった所の学術的裏付けを日々深めています。

    先日もインドネシアの国際学会で研究結果を発表し、様々なフィードバックを得ることができました。大きな収穫は、アメリカやヨーロッパ、南アフリカなどの多くの国々の研究者から、「機微力」はうちの国にも必要だ!ということで、共同研究のオファーをいただいたことです。

    ーー素晴らしいですね!

    山本氏:ありがとうございます。2軸目の事業領域でやって行きたいのが、機微力向上アプリ「KIBIラーニング」の開発や、留学生の就職支援、企業向けの社員定着支援などです。機微力の理論を元にしていかに、現場の課題を解決できるのかということで取り組んでいます。手段としては、研修、出版、機微力検定の結果をもとにしたコンサルティング・People Analytics、機微力初学者向けの学習アプリ KIBIラーニング開発などです。

    ーー様々なチャネルで現場の課題解決に取り組んでいらっしゃるのですね.

    山本氏:今では色々とやっていますが、もともとKIBI事業を始める元になったのは、「マンガでわかる常識として知っておきたい社会人のルール」の出版です。

    常識として知っておきたい社会人のルール

    ↑山本氏の著書

    昔から、言語的コミュニケーションや非言語的コミュニケーションに関する本はたくさんありましたが、情緒面に関する本はあまりなかったので、

    「誰も教えてくれないが、コミュニケーションにとって大切なこと」

    を伝えるために、2013年10月にこの本を商業出版しました。すると中小企業経営者様などから

    社員研修をお願いします。

    と言うような引き合いを多くいただけるようになりました。

    それが最近では、

    「初めて外国人雇ったんだけど、尚更こういうことって必要だよね。」

    という依頼を受けるようになってきたという流れです。

    ーーそんなご経緯があったのですね。現在、現場の研修に取り組んでいる中で気づいたことなど何かありますか?

    山本氏:「メンツを潰す。」ことに関する面白い事例がありました。先日、複数の中小企業の新入社員を20人程度集めて3日間研修を行ったのですが、研修内容の一つに、

    「先輩と打ち合わせに行き、お客さんに先輩の間違いを指摘された状況で、後輩が

    「自分もそう思ってました。」

    と言ったところ、会社に戻ったら先輩からすごい怒られた。」

    という事例についてのディスカッションがありました。

    我々の持っている「普通」の価値観、見方からすると、

    「自分が先輩の立場に立ってそんなことをされたらしんどいよな。

    と思うじゃないですか?

    ーー思います!

    山本氏:今年の新入社員の皆さんが、全員口を揃えて言っていたのが、先輩が怒っているところに焦点を当てて、

    「これはパワハラじゃないか?」

    と。僕らからするとすごい違和感というか、新しい考え方だったのですが、口を揃えてみなさんそうおっしゃるんです。そうしたら、先日共同コンサルティングをやろうとしている企業さんも同じようなお話をされていて、我々の世代や、上司の世代が、

    「それは基本動作でしょ。」

    と思うことが、彼らにとっては基本ではないんだと。

    これだけ価値観が違うからこそ、相手の目線に立って、相手軸で考えるという機微力がますます重要になってくるなと必要性を強く実感しました。

    ーーなるほど!

    異なることを良しとし、混ざり合うことを宝とする。

    ーー最後に事業を通じてどんな世界を実現したいのか教えてください!

    山本氏:「異なることを良しとし、混ざり合うことを宝とする。

    そんな寛容な世界にしたいと考えています。この言葉はユーゴスラビア(現・ボスニア・ヘルツェゴビナ)の内戦がひどい時代に生きぬかれた、イビチャ・オシム監督の言葉です。虐殺が生じたり、同じチームの中に、敵国の国籍の選手がいたりする中で出てきた表現なので、重みを感じます。自分たちもそれを体現したいし、小さいながらでも、そんな世界に近づくための力になれたらなと思っています。

    ーーかっこいいですね!

    山本氏:ありがとうございます。時折、若い人からは、

    空気を読まなくてはいけない、そんな息苦しい世の中にしたいということですか?」

    というフィードバックを受けることもありますが、そういうニュアンスで機微力を役立てようと考えているわけでは全くありません。

    あえて空気を読まない、空気を読むを自由に自分で操れるようになれると一人一人がより満ち足りた人生を送りやすくなる、そういうポジティブな方向性で事業を進めていきたいんです。

    例えば、みんなが緊張している場で、あえて空気を読まずに冗談を言って場を和ませたり、逆に、なんとなくリーダーシップを発揮しなくてはならない場面では、空気を読んで、自信ありげな口調で発言したりと、一人一人がより世界を好転させていくためのスキルの一つとして機微力を向上させていくことが大事なんだと思っています。機微力の向上を通じみなさんが、幸せに働けるようにしていきたいです!

    ーー大変勉強になるお話をいただきありがとうございました!

    編集後記

    今回は、「機微力」という独自の切り口から職場のコミュニケーション課題の解決に取り組んでいる株式会社KIBIの山本社長を取材しました。異なるバックグラウンドを持つ人間同士が協力して価値を想像し、一人一人がより満たされた人生を送るためには、今後ますます「機微力」の向上が必要不可欠になっていくだろうと、お話を聞いていて、強く思いました。本記事の作成を通じ、少しでも、「異なることを良しとし、混ざり合うことを宝とする。」そんな寛容な世界を作る一助となれればと存じます!

     
     

    マーケティング部

    福島県内の高校卒業後、東北大学に入学。在学中は硬式野球部に所属。英語学、心理学、英語教育学を専攻。卒業後は社会を構成する『ヒト・モノ・カネ・情報』が遍在することで生じる歪み(社会問題)をビジネスを通して適正化するというミッションに共感しリフト株式会社に入社。現在はマーケティングを担当。