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  • 住山 崇 氏

技能実習生受け入れ企業の生産性向上の鍵は、人材送り出し国での日本語教育にあった!?

目次

↑快く取材に応じてくださった、株式会社Bloomsの住山氏

技能実習生受け入れ企業のモヤモヤが溜まる原因を因数分解したら、人材送り出し国での日本語教育に行き着きました。

そう語るのは株式会社Blooms代表取締役の住山氏です。

住山氏はアクセンチュア株式会社のコンサルタントとして、大手ゲームメーカーの経営指標見直しプロジェクトに在籍後、一転して技能実習生受け入れ企業のコンサルティング事業を立ち上げた、異色の経歴を持つ経営者です。

今回は同氏がなぜ技能実習生受け入れ企業のコンサルティング事業を立ち上げたのか、そして何が技能実習生受け入れ企業の生産性向上を阻んでいるのか取材いたしました!

本記事を読むと、自社の技能実習生受け入れがなんとなくうまくいっていない理由について、新たな視点が得られます。

ぜひご一読ください。

誰もが羨むキャリアを捨て、現在の事業を立ち上げた理由とは?

ーー「アクセンチュアのコンサルタント」という華々しいキャリアを捨て、技能実習関連事業での独立を決意されたのはなぜですか?

住山氏:アクセンチュアで2年間コンサルティングのスキルを学び、このスキルを用いて今後の日本をどうやって変えていけば良いのかを考えていた時、大学生時代の異文化体験を思い出したのがきっかけです。

ーーどんな体験だったのですか?

住山氏:順を追って説明すると、僕は高校生の時に、グローバルに活躍できる人材になりたいと志し、立命館アジア太平洋大学に入学することになりました。この学校は、入学式も英語で行いますし、寮では異なる国籍の方と相部屋になるという、それまでの自分からすれば異文化な空間だったのですが、その時に、寮で、バングラデシュの方と相部屋になりました。その方はタンスとか、靴箱とか至る所にスパイスをおいていて、その香りがお部屋の芳香剤を3日で切らしてしまうくらい強烈だったんです。

ーーかなりハードな環境ですね。争いは起きなかったのですか?

住山氏:初めは本当に受け入れられなくて、殴り合いの喧嘩になりそうなほど険悪なムードでした(笑)でもそこはお互いに、国籍に関係なく個人としてこうあるべきなんじゃないかという話し合いをすることで乗り越えることができたんです。この体験について思い出していた時に、ふと、

「日本の人口動態の変化と外国人労働者の流入を考えるのであれば、必ず自分が経験したのと同じような異文化の衝突が生じるだろう」

と思い至りました。それなら衝突の解決の方向性を示す旗振り役に自分がなっていければいいんじゃないかとということで、現在の事業を始めることになったんです。

ーーご自身の原体験から外国人労働者の流入とその後の包摂に興味を持ち始められたのですね。

住山氏:そうなんです。ただ、現状の姿を知らないままでは取るべきアクションも見えてきませんので、アクセンチュアで働いている最中に懇意にしてもらっている監理団体の方とベトナムの人材送り出し機関を視察することにしました。実際に視察してみると、ニュースで得た情報と、実際の姿との違いがあったんです。

実習生と企業の双方で期待と現実のギャップが生じている。

ベトナム人

↑住山氏が先日ベトナムの送り出し機関を視察された際の写真。実習前の生徒達のモチベーションは総じて高い。

ーーどんな違いがあったのですか?

住山氏:技能実習生等のニュースを観て私の中では、なんとなくマイナスのイメージだけが先行してしまっていたのですが、ベトナムでの日本企業とベトナム人候補者の面接では、お互い期待値が非常に高く、希望とモチベーションに満ち溢れていたんです。ただ、実際に来日し働き始めると、理想と現実のギャップが生じ、お互いどうしようもなくなっているということも、帰国後の調査で分かりました。そこが本当に勿体無いなと。

ーーなぜ実習生と企業双方で期待と現実のギャップが生じてしまうのでしょうか?

住山氏:技能実習生としては、やはり言語力です。ベトナムで6ヶ月間学び培った日本語力と、日本で実際に住んで働くのに必要な日本語力で、圧倒的に差が生じてしまっているんです。当初思っていたよりも、思いのほか使えないし話せないという状況です。

一方で受け入れ企業としても、これまで通用していた指導法が通用しないことにギャップを感じてしまっています。

ーーなるほど、それがストレスになって失踪などの問題に繋がってしまっていたということですね。

住山氏:失踪などの表面的な問題にも繋がると思いますし、私が課題だと感じているのが、ストレスから発生するトラブルによって企業の生産性が下がってしまっていることです。失踪などの問題がなくとも、ほとんどの受け入れ企業に生産性の改善余地があると考えています。

例えば、ある建設企業さんは元々ベトナムで建設業のキャリアがある方を、左官業務についての実習を行う目的で受け入れました。しかし、そのベトナムの方は何度日本のやり方を伝えても前職で培ってきたやり方で業務を進めてしまいました。

ついに、教育係の日本人社員が、

「お前は日本の技術を学びに来たんじゃないのか!」

と激怒する事態に。。。

結局、監理団体が間に入って双方のヒアリングをし、解決のためのミーティングを開いて、少し改善し、だけど同じようなことがまた起きて、また同じように時間が取られてしまってという負のループに陥ってしまいました。

この時間について、本当に勿体無いなと私も思いますし、多くの企業様も思っていると思います。

ーーなるほど、語学力とマネジメント力をあげることで、こういったトラブルがなくなれば、そこに費やしていた時間を仕事に集中することができ、生産性が向上するということですね。

送り出し国における日本語教育のレベルが高まれば、実習生のモチベーションも高まる。

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↑ベトナム送り出し機関における日本語教育の現場①

ーー実習生の語学力と企業のマネジメント力が課題とありましたが、具体的にはどうやってそれらを解決していけば良いでしょうか?

住山氏:実習生に関しては、母国での日本語教育の質を高めること、企業に関しては、受け入れ企業のマインドセットを変えることが鍵だと考えています。

ーーなぜ母国での日本語の教育の質が課題なのでしょうか?

住山氏:端的にいうと、あまりにも日本語教育の質が低いからです。

私はベトナムでかなり多くの学校数の教育を観てきましたが、本当に先生の質が低いんです。なぜかというと、理由は2つあって、まず、彼らはほとんど元技能実習生で日本語の教え方を勉強したこともないし、そもそも日本語もN3レベルでそんなに話せないということと、教育技術が高まる前にすぐ辞めてしまうということです。

ーーそんな状況だったんですか!?

住山氏:実際に視察で見た例をご紹介します。

ある日本語教育の現場では先生が、

「今日は第17課を勉強します。」

というのですが、先生自身がその課の内容を理解していないとわかり、そこで、教科書をたたみ、

「今日は自習にします。」

と言うんです。

こんなことが、かなり高い確率で起きているんですね。

ーーそうなんですか!?

住山氏:また、先生方は日本語教師の仕事以外にも、組合との連絡など、雑務も兼務している場合が多いです。客観的に見るとそこまで大変な仕事量でもないですが、文化的に、家族との時間を最も大事にする文化ですから、割に合わないよねという話になって経験値が溜まる前に辞めてしまいます。

ーーそんな環境では勉強してもできるようになりませんね。

住山氏:技能実習生は量は本当に勉強しているんです。

以前監理団体さんともお話したんですけど、6ヶ月間みっちり日本語を勉強しているわけですから、もう少し話せてもおかしくないと思うんです。ただ、やっぱりその質が低いっということですよね。

生徒は日本の姿を全く知らない状態で、そんな先生方に教わると、それが日本のレベルだと思ってしまいます。日本に来てみれば、全く日本語が通用しない訳ですから、

「ぜんぜんイメージしてたのと違う!

となってしまいますよね。それはモチベーションも下がりますよ。

ーーなるほど教育の質が入国後のギャップに繋がっていたのですね。

住山氏:そうです。そこで弊社は、入国前の教育の質を高めるため、日本語学校向けの日本語教育教材「Hanabi Edu」を開発し、先生と生徒さんに使ってもらっています。

↑入国前の日本語教育と入国後のスマホアプリでの学習で語学力を高める。

これは、日本語教授法の資格を持った教師が、レベル別に日本語を教える動画やワークが収録されているのですが、生徒さんに好評なのはもちろん、先生方に動画を観て教え方の勉強になるとおっしゃっています。

質の高い日本語教材をもっと広めていくことで、日本語能力を高めることで、技能実習生の入国後のギャップを最小限にできますし、また、入国後も、簡単に日本語の勉強ができるアプリを提供し、継続的な語学力の向上を支えていきます。

ーー素晴らしい取り組みですね!

相手の姿を知ろうとすることが全てのはじまり。

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↑ベトナム送り出し機関における日本語教育の現場②

ーー企業のマネジメント力についてはどのように解決していけば良いでしょうか?

住山氏:最も大切なのは、今までの伝え方で伝わらなかった時に、

こいつらあかんわ。

とならず、どんなやり方なら効果的なのかという、思考を巡らすことだと思います。

これまでと同じやり方ではダメか、それじゃどうしたらいいんだろう?」

ということです。現状は、

なんで、日本人はそうなんですか?

と聞かれた時に、

「なんでもや!」

価値観を押し付けてしまうことが現場で多く起こっています。

私も学生時代の経験があるので、そうおっしゃる方の気持ちは本当にわかるのですが、でもそれじゃやっぱりダメだろうと思います。

これまでのやり方ではうまくいかないということを認識し、その次に、違う理由を知ろうとすることが大事です。もちろん仕事が大変な中で、全てを外国人に寄せていくのは難しいと思うんですけど、その中でも、考慮できる余地というのはあると思います。

ーー相手の姿を知ろうとする姿勢が大事なんですね。

住山氏:先日もお付き合いのある技能実習生受け入れ企業さんから象徴的な話を伺いました。

ある休みの日に実習生の方が、近くの川に入って魚を取っていたそうです。そこは、魚をとるにはあまり綺麗じゃない川だったそうで、周囲の人から変な噂が立ってしまうのもまずいなと思ったその企業の社員さんは、その実習生に注意をされました。

その後、ただ注意するだけで終わらず、そもそもなぜこの実習生は川で魚を取っていたのかなと考えたその方は、その実習生に、

なんであの川で魚を取っていたの?

って聞いてみたんです。すると、

ベトナムでは自分の家の近くに流れている川の魚を取って食べる文化があったので、それが変だとは思っていなかった。」

ということなんですね。

担当者の方も納得して、ただ、

「近くの人にあまり良く思われないからやめよな。」

と、軽い注意をし、笑い話で終わりました。

事の軽重はあると思いますが、やはり相手を知ろうとする努力が、今後の技能実習生マネジメントの鍵になるのではないかと考えています。

成功事例を広めることで、諦めムードを変えたい。

↑現地送り出し機関職員との打ち合わせの様子。変革のための関係構築は着実に進んでいる。

ーー最後に住山取締役の今後の抱負を教えてください。

住山氏:現状、技能実習生を受け入れいている日本企業には、

技能実習生はそこまでモチベーションが高くない。

企業側も生産性について数々の問題があるのに、そんなもんだろと思ってしまっている。

という状況があります。

この状況を打破するために、

技能実習制度で生産性を高めて成功している企業」

というロールモデルを作り、ノウハウを広めたいと思っています。

具体的には、

「実習生は勉強していて、企業はマネジメントのノウハウが溜まっており、企業全体としてかつてないくらいの成果が上がっている。」

そんな事例をたくさん生み出していきます!

ーー非常に勉強になりました。お話をお聞かせいただき、本当にありがとうございました!

編集後記

今回は、アクセンチュア株式会社のコンサルタントとして、大手ゲームメーカーの経営指標見直しプロジェクトに在籍後、一転して技能実習生受け入れ企業のコンサルティング事業を立ち上げた、異色の経歴を持つ住山氏を取材しました。技能実習生に対する日本語教育を改善することを足がかりとして、外国人労働者の大規模な流入という変革期にある日本をリードして行こうとされている姿を見て、我々も同志として熱い気持ちになりました。住山様、この度は誠にありがとうございました。

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株式会社Blooms 代表取締役

2016年9月立命館アジア太平洋大学卒. 2017年3月アクセンチュア株式会社入社。在籍中は、大手ゲームメー カーの経営指標見直しプロ ジェクトに在籍。2019年退社、株式会社Bloomsを立ち上げ同社代表取締役に就任。