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ミャンマー最王手送り出し機関最高顧問の北中氏が語る、ポスト・ベトナムがミャンマーでしかありえない理由とは?

目次

北中様 取材記事-8

↑快く取材に応じていただいた北中彰氏

「技能実習生として来日するベトナム人の質がだんだん下がっている気がするけど、なぜ?」

「ベトナムの次の送り出し国はどこになるの?」

数年前からベトナム人技能実習生を受け入れ、実習を進めて来た企業から、こんな声が上がるようになって来ました。

知り合いの監理団体職員の方も、

「もうそろそろベトナムは限界だ。」

と言っています。

ただ、依然としてベトナムは最有力人材送り出し国であり、ポスト・ベトナムがどの国になるのかははっきりとしていません。

そんな中、

日本に働きにくる外国人として、ミャンマー人は最高だ。」

と断言するのが、ミャンマー政府認定No.1送り出し機関「ミャンマー・ユニティ」の最高顧問を務められている北中彰氏です。

本記事の読者さまはご存知の方も多いと思いますが、同氏は技能実習・特定技能の運用について政府に政策提言をされるなど、外国人雇用の第一線で活動されています。

今回はご多忙を極める中、独占取材の機会をいただき、

「なぜ、ミャンマーなのか?」

その理由を教えていただきました。

又とない機会でしたので、ミャンマーにおける特定技能の最新情報も併せて伺っております。

実は本記事の作成中、

「どこをカットしたら良いだろうか。」

と悩みに悩みました。ミャンマー人材について知りたい方にとって、全て必要な内容に思えたからです。

結果、どこも捨てることができず、約1万3000字と至極ボリューミーな仕上がりになってしまいました!

「ながっ、飛ばし読みしよ。」

今、そう思われた方は下記の動画ダイジェスト版をご覧くださいませ!

 

詳細を知りたい方はぜひ一度記事をご熟読いただき、ミャンマーの素晴らしさ、そして原稿もなくこれだけの情報量をお話になられた北中様の熱量を感じていただきたいと思います。

それでは、お楽しみください。

なぜ、ミャンマーなのか?

↑ミャンマー・ユニティはミャンマーのヤンゴンにオフィスを構えている。

ーー短刀直入にお聞きします。なぜ日本で働く人材としてミャンマー人が最高なのでしょうか?

北中氏:大きく4つの理由がありますのでそれぞれ説明いたします。まず1つ目の理由はミャンマー人に日本に行きたい、ものすごく強い動機があるということです。

①日本で働くことへの強いモチベーション

ーーなぜミャンマー人は日本に行きたいのでしょうか?

北中氏:大きく2つの理由です。1つ目の理由はミャンマーには仕事が無いことです。2011年まで軍事政権の支配により、鎖国状態だったため、経済発展が遅れ、ミャンマーは依然として農業国です。そのため、どんなに優秀な方でも就職先がないという状況です。

ーー日本に行けば仕事があることが一つ目の理由ですね。

北中氏:もう一つの理由は日本で稼げる年収がミャンマーの20〜30倍であることです。最大都市ヤンゴンは都会化し、給料も上がってきていますが、そこに住んでいるのは大きく見積もっても全人口の10%です。ミャンマーの全人口は6000万人弱ですので、残りの90%、約5400万人弱が地方に住んでいます。地方はすごい田舎で、例えるなら無人島のような状況です。インフラの整備もまだまだ進んでいません。この田舎で働く約5400万人は仮に働いても月給7000円しかもらえない状況です。

ーー月給7000円ですか?!

北中氏:それだけではなく、標準的な家族構成が、両親と子供6人の計8人家族で、その家庭の中で働いているのが平均して約2人という状況なんです。つまり、月給7000円×2名で、合計月給14000円を一家八人で分け合って暮らしています。

ーーそれはミャンマーの物価でも苦しいものなのでしょうか?

北中氏:そうです。多くの若者が、ギリギリの生活を強いられ、夢も希望も持てずに、暗澹と生活されています。

ーーそんな状況だったんですね。。。

北中氏:そんな中で、7000円の給料だった一家の働き手が日本に行くとどうなるかというと、給与額が20倍〜30倍になるんです。例えると、日本で10年働いたら、ミャンマーの200年分から300年分の収入が得られるという状況です。日本行きを決意するだけで、宝くじが当たるみたいなものなんですよ。

北中様 取材記事-4

↑北中様のお話を参考にリフト株式会社で作成

ーー日本に行くだけで宝くじが当たるのと同じというのは、衝撃的ですね。

北中氏:ミャンマーには現在、日本に働きに行ける適齢期の方が約2000万人います。この状況下でミャンマーユニティのような政府認定の信頼ある送り出し機関が丁寧に説明をすれば、半分の約1000万人は日本行きを希望すると踏んでいます。そのくらい、今のミャンマー人には日本行きのメリットがあります。

②ミャンマー人の国民性

北中様 取材記事-2

↑日本行きを前に集合写真をとる、ミャンマー・ユニティ出身者

ーーミャンマー人が日本で働くメリットについては理解いたしました。次に2つ目の理由を教えてください!

北中氏:二つ目はミャンマー人の国民性が日本で働くことにすごく合っているということです。ミャンマーは国民の9割が上座部仏教の敬虔な信者です。日本の念仏を唱えるだけで救われるという大乗仏教とは異なり、ミャンマー人はみんなお寺に修行に行きます。そんな彼らが信じているのが、

「現世で徳を積み上げれば来世で報われる。」

という考え方です。だから彼らは、なけなしの給与からお寺に寄付をします。たくさん徳を積まなくてはならないのに、ましてや悪いことをしている場合じゃないので、ミャンマーは夜に女性が一人歩きしていても全く問題が無いほど、日本並みに治安が安定している国です。

ーー発展途上国で治安が安定している国は中々ありませんよね。

北中氏:そうなんです。私が体験した象徴的な出来事をご紹介します。昔、ベトナムのホーチミンで、当時買えば10万円するIphone6+を持って、私は歩きスマホをしていました。しばらくすると後ろから「ブーン」と音がして、バイクに乗った青年から一瞬のうちにスマホを引ったくられてしまいました。

北中様 取材記事-2

アジアの発展途上国では、iPhoneは憧れの的で、みんな狙っています。途上国はどこに行っても、Iphoneを置いて3秒目を離すとなくなるとさえ言われているほどです。

ーー実際に10万円分を一瞬のうちに取られてしまったのですね。。

北中氏:それが、ミャンマーでは全く状況が違いました。ミャンマーで新たに買い替えたIphone7+を2回ホテルのレストランで忘れたことがあったのですが、2回ともホテルのスタッフが部屋まで届けに来てくれたんです。ミャンマー人のホテル従業員にとって、Iphone7+は年収以上の価値があります。見知らぬ日本人が忘れたものをそのまま持ち去ってしまえば、それだけで年収以上の額を稼ぐことができるのですが、徳を積むために、盗まないどころか、部屋まで届けてくれたんですね。

ーー確かに、他の新興国とは全く状況が異なりますね。

北中氏:全く異なります。共に働いている外国人に対して、この人何か悪いことするんじゃないかと思っているのと、信頼感を持って働くのではだいぶ結果が違いますよね。

ーー実際、北中様は100名を超えるミャンマー人スタッフと働いてらっしゃいますが、実感としてどうでしょうか?

北中氏:すごく働きやすいです。みんなニコニコしてね。人前で勝手な主張をすることは、徳が低いと言う考えでもありますので、非常に控えめで、自己主張も少ないです。外国人を雇って見たら自己主張があまりにも強くて、雇い主の方が困ってしまうということがよくあるのですが、ミャンマーの方は、日本人よりもおとなしいくらいです。

ーー日本人と国民性が合うんですね。

北中氏:共に働きやすいだけではなくて、もっとも私が驚いたのが、介護業界を志望される方の多さです。知っての通り、介護は日本でも不人気な仕事ですが、実は、アジア各国でも不人気な仕事です。不人気な理由は、ただきついだけではなくて、技能実習生として日本に来日するために、介護だけは、N4レベルの日本語力が必要になるという難点もあります。

ーー特定技能も介護だけは3つの試験に合格することが必要ですしね。

北中氏:そうです。要するに試験があって、来日するための勉強期間が長い。それが不人気の理由です。日本は2055年まで人口が減り続け、将来80万人の介護職が不足すると言われています。今でさえ、約13万人が不足しており、業界では外国人材の受入れを促進しようという機運が高まっています。しかし、アジア各国でも介護職は不人気で、どうしようかと頭を抱えている状況でした。それがミャンマーは違うんです。大変な仕事、人の役に立つ仕事をすれば、徳を積むことができるので、自ら介護職を望む方が多いんです

ーーそれは知りませんでした!その国民性は日本人も見習わなければいけませんね。

③日本語習得のスピード

北中様 取材記事

↑ミャンマー・ユニティが作成した動画。他国の技能実習生と比較して、レベルは総じて高い。

ーーなぜミャンマーなのか、3つ目の理由はなんでしょうか?

北中氏:3つ目はミャンマー人の日本語習得スピードです。日本語とミャンマー語(ビルマ語)は文法が似ています。例えば、日本語の文法は英語や中国語とは異なりますが、ミャンマー語は日本語とほぼ同じ語順です。

<参考>

日本語:私はお茶を飲む。

英語 :I drink tea.

中国語:我喝茶.

ミャンマー語:ငါလက်ဖက်ရည်သောက်တယ်

単語を覚えるだけで良いので、日本人が英語を習得するよりも断然難易度が低いです。

また、ミャンマー人は発音が得意という強みがあります。日本語は50音で比較的発音が簡単な言葉です。一方、ミャンマー語は280音あり、日本語と発音が似ている音が結構あります。これが他国の人材と違い日本語力の習得が早い理由です。

ーーなるほど、確かに先日ミャンマーとベトナム出身の技能実習生と共に働いておられる方のお話を伺いましたが、ミャンマーの方の日本語上達の速さに驚かれてました。

北中氏:それだけ、言語が近いということです。

④ベトナムの発展

北中様 取材記事-6↑Jetro統計数値を参考にリフト株式会社で作成。現在のミャンマーは10年前のベトナムに近しい一人当たり名目GDPだ。

ーー現在ミャンマー人材が日本で働くのにもっとも適した人材である最後の4つ目の理由はなんでしょうか。

北中氏:4つ目の理由は、ベトナムの経済発展です。現在、技能実習は38万人日本で実習に臨んでいますが、その半数がベトナム人です。ミャンマーはまだ20分の1です。ところが、最大の送り出し国ベトナムで著しい経済発展があり、現在では月の給料が3万円〜4万円もらえるようになってきました。経済的負担をしてまで親元から離れて日本に仕事に行く必要性がなくなって来ているのです。

ーーやはり日本に働きに来る理由は経済的なところが大きいんですね。

北中氏:技能実習の目的は表面上は技術移転となっていますが、実際、来日する外国人としては、給与が増えるから来るのであって、月給4万円も母国で稼げるようになると、急速に日本に来る人は減っていきます。かつての中国がそうであったように、ベトナムも限界が近づいてきます。

ーーその兆候は出ているのですか?

北中氏:不人気な仕事ほど、求人に対する応募が集まらなくなっていきます。弊社のお客様の中でかつてベトナム人を受け入れていた企業が揃っておっしゃるのが、

「だんだん人材の質が落ちてきた。」

ということです。優れた人は、ベトナムで良い仕事に就職できるので、わざわざ日本に行く必要がないんです。だから現在ベトナムでは、ベトナムで就職できなかった人やどこか問題のある人が日本に行くという流れになっています。

そんな状況下で、次のベトナムはどこだとなったときに仏教国の中で最も人口の多い国であり、日本と親和性の高いミャンマーが今注目されているんです。

ミャンマー人技能実習生の失踪などのトラブルを防ぐ仕組みは?

北中様 取材記事-3

ーーなぜ、ミャンマー人なのか、その理由は納得いたしましたが、技能実習でよくニュースになる技能実習生の失踪などの問題はどのように対策されるのでしょうか?

北中氏:失踪の原因は大きく二つに帰結します。1つ目は送り出しが金儲け主義に陥ることです。いっぱい技能実習生から金をとって、騙すように送り出している企業が多いのでこうなってしまいます。

例えばベトナムでは送り出し機関が技能実習生から徴収しても良い手数料の上限が3600USドル(約40万円)と定められています。しかし実際には、技能実習生から70〜100万円取るのが普通です。それだけの大金を技能実習生がどうやって調達するかというと、そんなお金を持っている方はそもそも日本にきませんから、みんな高利貸しからお金を借りるわけです。

ーーそんなに借金をしてしまうのですね。

北中氏:「日本に行ったら儲かるから

と言われて100万円の借金をしてまで日本に来たら、想像していたよりお金は残らない。そうなると、悪魔のささやきにフラフラーとついて行ってしまうんです。

ーー悪魔のささやきとはなんですか?

北中氏:悪い集団が、SNSで高給を宣伝して、失踪に導いているんです。ベトナム語で書いてあるので、日本人には中々わからないんですが、借金で苦しんでいる技能実習生がふらふらっとなびいてしまい失踪に繋がっています。問題はこの後です。一度失踪になると違法状態になりますので、本人が表に出れない状態になります。そうすると生きていくために悪の手先になります。窃盗団に入ったり、自分がされたのと同様に他の技能実習生の失踪を手引きする集団になります。

ーー不幸の連鎖が生じてしまっているのですね。。。

北中氏:結局、我々は実習生自体から多額のお金を取ること自体が諸悪の根源だと思います。昨年の技能実習生失踪者が9000人ですが、そのうち5800人がベトナム人です。それが物語っていますよね。ベトナムは技能実習生から取りすぎているんです。昨今、ベトナム政府が悪い送り出し機関の取り締まりをはじめましたが、依然として改善の進みは鈍いです。

ーーなるほど、そもそも送り出し機関がそれほど技能実習生からお金を徴収してしまう理由はなぜなんですか?金儲けのため以外に何か理由がありますか?

北中氏:自社の金儲け以外に多額の金額をとる理由は大きく2つです。一つは現地のブローカーに支払うため。もう一つは送り出し機関から日本の監理団体への接待費用、バックリベート費用のためです。

ーー悪質なブローカーと監理団体が存在しているのですね。

北中氏:そうです。人材の募集に苦労している送り出し機関はそういったブローカーを使います。一人候補者を見つけるたびに、ブローカーに数十万円を支払っています。監理団体と送り出しの関係についてですが、要はズブズブの関係になっているところがあります。弊社で営業活動をしていても、送り出しからの接待を受けて、なかなかベトナムからミャンマーに変えられない監理団体があります。

ーーブローカーや監理団体に対する費用を捻出するために、人材からとっているってひどい構造ですね。

北中氏:ミャンマー・ユニティでは絶対にしません。悪質ブローカーも使いませんし、契約が取れないのなら、それでいいと割り切って、誠実な監理団体さんだけとビジネスをするようにしています。

ーー他の多くの人材送り出し機関が人材の獲得に苦しむ中、ミャンマー・ユニティさんがブローカーを使う必要がないのはなぜですか?

北中氏:それは「評判」です。ミャンマーの労働大臣から表彰を受けているように、我々当たり前のことを当たり前に、誠実にやってきましたので、ミャンマー人の間で良い評判が出回っています。きちっとしているし、ちゃんと日本にいけるという口コミで結構な人材が集まります。

ーー誠実にやってきた結果人材が集まるようになったのですね。

北中氏:それが大きな要因です。もう一つは日本語ブームです。現在ミャンマー全土に日本語学習のブームがあって、なんとなく日本語を勉強している方がいます。仕事もないし、友達も日本語を勉強しているから私も勉強しようという雰囲気ですね。そういう人たちに対し、日本語学校の校長先生から、日本語を目的なしに学ぶのではなくて、最終的に日本で働くことを目標にすると良いと、オススメしてもらうような働きかけをしています。それで我々は悪質ブローカーを一切使わずに人材の募集ができています。

ーーそういった誠実な取り組みが奏功し、昨年は送り出し人数No.1としてミャンマー政府から表彰を受けられてらっしゃいましたね。

北中氏:昨年、ミャンマーの労働大臣から呼ばれて、日本に対する送り出しでトップだということで表彰状をいただきました。我々のポリシーとしては、正式な送り出し機関として、きちんとルールを守って、ミャンマー人のためになる送り出しを誠実に、正しく事業運営をしてきました。世界中に送り出し機関はたくさんありますが、正しくやっていないところがほとんどです。正しくやっている我々が一位となるのは当然だと思っています。

北中様 取材記事-1

↑昨年の12月20日にミャンマー・ユニティはミャンマーNo.1の人材送り出し機関としてミャンマーの労働大臣から表彰を受けた。

ミャンマーでこれまで技能実習生の送り出しが進んでいなかった理由とは?

ーーここまでお話をお聞きした限り、技能実習生の内訳でベトナムが半数を締め、ミャンマーが20分の1だということが信じられません。なぜ、ミャンマーでは送り出し人数が伸び悩んでいたのでしょうか?

北中氏:我々はミャンマー人が日本に働きに来る外国人としてミャンマー人が最高の国民だと信じてやってきましたけれど、実は、昨年の4月まではミャンマー人が日本にくることの障害が2つありました。

ーーミャンマー人の人材送り出しを阻んでいた障壁についてぜひ教えてください!

北中氏:一つは「難民申請」です。民主党政権の時に、どんな形で来日しても、難民申請をすればその6ヶ月後に日本で働けるという制度が始まってしまいました。これを悪用する人が多発したんです。日本に難民申請を請け負うプロもいて、50万くらいの費用で難民申請の書類を書く人がいました。

私はミャンマーで政治的に迫害されていました。」

と主張し、証拠として、デモに参加しているような構図の写真を自作自演します。これは私の知人の話ですが、約30人くらいを受け入れて、来日まもなく、全員が同時に失踪しているという事態が起きたそうです。明らかにおかしいですよね。

ーーそんなことが生じていたんですね!

北中氏:日本政府も難民申請が悪用されていることを問題視していました。結果、約1年前に偽装難民申請を防止する、技能実習生が難民申請しても認めないし、就労できないという制度になりました。もともと技能実習生はミャンマー国が認めて日本に来ているので、難民のはずがないですから当然の措置です。

北中様 取材記事

↑制度改正により、難民申請者数は激減した。法務省統計よりリフト株式会社で作成

ーーそんな裏スキームがあったんですね、他にはどんな要因があったのですか?

北中氏:もう一つ大きな障壁だったのは、ミャンマー人を受け入れるために、監理団体が日本ミャンマー協会に10万円支払わなければならなかったということです。監理団体としてもなんでミャンマー人を受け入れるのに、謎の10万円を支払わなくてはならないんだという話で、ミャンマー人の紹介・監理には非常に消極的でした。

ーーそれはそうですよね。

北中氏:ただ、世の中から大きな批判があって、2019年4月からは、日本ミャンマー協会が技能実習の審査業務から撤退し、在日ミャンマー大使館が窓口に変わりましたので、10万円という障壁が無くなりました。その二つがなくなったので、これからはミャンマーだねと一気に変わったという経緯があります。

ミャンマー人材の今後の動向とは?

ーー障壁がなくなり、いよいよ本格始動されるということですが、人材送り出し事業は特定技能制度然り、外部環境が大きく影響されるビジネスだと思います。北中様は、今後ミャンマー人材の送り出しはどのように進んでいくとお考えですか?

北中氏:まず、既存の技能実習制度を活用した人材の送り出しについては、日本側の運用ルールが段々と厳格化されてきているという障壁はありますが、ほぼ無試験だということと、転職ができないという理由で、これからも拡大します。

一方で特定技能は、日本政府とすると正式な労働者と定め、今後推進していきたいようですが、報道されている通り、様々な障害があって、未だ在留されている方が千人程度と進んでおりません。

↑法務省資料より、リフト株式会社で作成

ーー特定技能の障害には具体的にどういったことがありますか?

北中氏:大きく日本側の問題と、ミャンマー側の問題に分けて説明します。まず日本側の問題ですが、それは試験の回数が少なすぎることです。ミャンマーでは宿泊の試験が募集して2分でいっぱいになります。冗談のような話に思われるかもしれませんが、試験の頻度、定員を今の100倍にしないと普及しないです。

※今後の試験についてはこちらの法務省ページをご覧ください。

ーーなぜ試験が少ないのでしょうか?

北中氏:特定技能を作った国の趣旨と現場の感情が乖離しているからです。現状、試験の運営は、各業界の試験を監督する協会がやっています。その団体からは、「人手不足」だとか、「試験問題を考えるのが大変」だとか、そういった声が上がっています。海外での試験なんかは本当に大変ですよね。言葉の通じない外国で試験をしなくてはならないんですから。国の趣旨としては人口減の危機感があり、一刻も早く推進しなくてはなりませんが、その実行を現場に丸投げしてしまったがために、適切なモチベートができていない状況だと推察します。

ーー日本側の問題には他に何かありますか?

北中氏:想定していたより、蓋を開けてみたらルールが厳格なものだったことです。例えば、社会保険料未払いの人は特定技能に変更できません。日本に在留している留学生はみんな社会保険料を払っていないので、いざ特定技能に変更しようとすると、約40万支払わなくてはいけなくなってしまい、とてもじゃないが、支払えないということになります。

ーー社会保険料の未納で不許可になった事例は私も耳にしました。

北中氏:他には、留学生の資格外活動28時間の問題があります。留学生はアルバイトしている人がほとんどですが、過去にはその28時間を厳しく取り締まっていませんでした。ほとんどの人が在留資格で28時間をオーバーして働いてきたんです。それが特定技能の在留資格の提出の時に、過去の収入の提出があって、バレてしまう。以前は許されていたことが、特定技能の申請になると通らないということになっています。厳格に在留資格を審査をするのは当然なことですが、蓋を開けてみたら、予想もしないほど壁が大きかったということですね。

ーーなるほど、外国側の問題には何がありますか?

北中氏:特に期待の大きかったベトナムの動きが遅いことがあげられます。その理由は技能実習と特定技能の公にされている目的が異なることにあります。

ーーどういうことでしょうか?

北中氏:技能実習に関しては技能を身につけて、帰国し、母国に貢献するという建てつけですから、どうぞ!と大手を広げて送り出すことができます。一方、特定技能に関しては単なる「労働者」ですから、送り出して母国にメリットはあるの?という話になります。教育を受けてくるならどうぞと言えるけど、働きに行くならちょっと厳しくしなければいけないんですね。その他様々なステイクホルダーの思惑が交差して、進捗を妨げているようです。

ーーミャンマー個別の話ではどうでしょうか?

北中氏:ミャンマーに関してはもう間も無く始まります。我々ミャンマー・ユニティも昨年11月真っ先に送り出し許可をとりました。

ーー送り出しに関するルールも定まったのですか?

北中氏:ミャンマーの送り出しに関する独自ルールはほとんど決まっていまして、あとはそこを詰めるだけという状況です。ただ、この独自ルールに難点が2つあります。1つ目が本人から送り出し機関が徴収できる金額の上限が1500ドルになるということです。これはもちろん本人にとってはいいんですが、送り出し機関としては収入源が減り、教育の質など、事業の存続が難しくなりますので、その分企業に負担してもらうことになります。フィリピンは本人負担額が0円なので、そこと比較するとまだ良いのですが。どうしても受け入れ企業の負担額が大きくなってしまいます。

ーーもう1つの難点はなんでしょうか?

北中氏:2つ目は、試験に受かる前に面接をすることが禁止されたことです。特定技能は介護が3つ、介護以外は2つ試験に受からないといけませんがミャンマーではこれらに受かった方しか面接ができない。そうすると面接がなかなか実施できないんです。現在ミャンマー・ユニティには二つの試験に受かった人材は一人もいません。特定技能の試験に受からせるためにはかなり長い期間の教育が必要です。技能実習生の場合には、まず面接をして、行き先が決まってから教育なので、勉強するモチベーションが高いのですが、特定技能の場合には行き先が分からない状態で日本語と業種別評価試験の勉強をし、試験に合格する必要があるので、モチベーションを維持するハードルが大きすぎると思います。

ーー報われるか分からない勉強を続けるのにはかなりの精神力がいりますもんね。

北中氏:ミャンマー政府はなんと特定技能人材を減らす政策をとってしまったのかと、非常に私は嘆いております。かといって、それに対応しないわけにはいけません。先ほども言いましたが、ミャンマーは非常に人材が豊富で、日本で働くには最適な国民性で、日本企業から求める声が日に日に高まっているので、リーディング企業の我々が特定技能諦めたというわけにはいきません。

そこで現在、特定技能として日本にいける人材を数十万人作っていこうということにチャレンジしています。ただ、すぐにはできません。日本語試験に合格して、技能試験にも合格しなければなりませんので、今年は申し訳ないんですが、試験に受かる人を養成する期間として世間の方にはお待ちいただいて、2021年からは特定技能で2万人を送り出す予定です。ミャンマーは非常に期待されていますし、我々もミャンマーの人材送り出しを引っ張っていく存在として、期待に応えていきたいと思っています。

ミャンマー人と共に働いていく上での留意点

北中様 取材記事-3

↑介護技術について熱心に学ぶミャンマー・ユニティの学生

ーー特定技能に関する現状を教えていただき、ありがとうございます。最後に外国人を雇用するための心構えについてご教示ください。

北中氏:外国人全般的な話とミャンマー人特有の話をします。まず外国人全般を雇用する際に言える話についてですが、残念ながら日本人には、単一民族日本人だということで、差別的な考え方を持っている人がたくさんいます。日本人以外のアジアの方々を上から目線で、

雇ってやっている。」

と考える人たちがまだまだいます。これが、外国人雇用の最大の障害です。やはり、外国人を雇う時には、日本人と同じ人間として、いやそれ以上に共に働く仲間、家族のように大事に扱っていただきたいと思います。これが絶対的に必要です。

ーーまず認識を変革する必要があるのですね。

北中氏:日本はこれから激しい人口減時代になります。政府の試算では80年後の2100年に人口が5000万人を割るという話になっています。いかに外国の方と共生していくかが課題になっていくのに、差別している場合か!という話です。今後ますますダイバーシティ、つまりは人間の多様性を認めていく時代になっていきます。女性の雇用、高齢者の雇用、障害者の雇用だけではなく、外国人の雇用も日本企業が必ず乗り越えなくてはならない壁だと思っています。ですから、まずは自社で雇用した外国の方を本当に大事にしていただきたいと思います。

ーー日本企業は人口減に対してもっと危機感を持って対応していかなければなりませんね。ミャンマー人を雇用する上での留意点はございますか?

北中氏:東南アジアの方々は皆そうですが、ミャンマーは特に、あまり叱られた経験がある人がいません。日本人は日本人のことしかわからないので、日本が常識的だと思っているんですが、日本はアジアの中でもちょっと変わった国だと思った方がいいですね。

ーー日本はアジアの中でちょっと変わった国なんですか!?

北中氏:そうです。今はだいぶなくなりましたが、昔は体罰が当然のようにありましたよね。スパルタ教育が当たり前で、人に厳しいことを言うのが当たり前でした。厳しく育てるのは本人のためだという文化だから、叱るのも当然だという考え方です。それがアジア人の大多数は、そんなしかる、厳しく叱責するという文化は全くといっていいほどありませんし、人の体に触れるということも、皆さん避けてます。もちろん日本に行くにあたって、日本は叱られますよ、厳しく指導されますよ。ということは伝えますが、体を触るのは厳禁、ましては暴力・暴言も厳禁ということで接していただければと思います。

ミャンマー進出を後押しした、ノスタルジーと悔恨

北中様 取材記事-4

↑ヤンゴンにて北中氏が撮影された一枚(2016年)

ーーここまでのお話をお聞きし、凄まじい熱量で事業に取り組んでおられることが、ひしひしと伝わって参りました。最後に、なぜそこまでミャンマーに対する愛情を持って、事業に取り組むことができているのか、その理由を教えていただけますか?

北中氏:ミャンマーという地との出会いは2011年にミャンマーが民主化された直後のことでした。もともと、これからの日本の発展を考えて行く上で、海外進出は不可欠だと考えており、どの国に進出するか、検討を重ねておりましたが、初めてミャンマーを視察した際に、

「あっこれはいい国だ。」

と心から感じました。

仏教国で皆さん優しくて、犯罪が全然ない、そんなミャンマーが醸し出す1970年代の日本のような雰囲気に一種のノスタルジーを感じたんです。

ーー幼少期の原風景に似たものがミャンマーにはあったんですね。

北中氏:私は三重県出身で現在59歳です。子供の頃、私の祖父や祖母は、毎日仏壇にお祈りして念仏を唱える非常に信心深い人たちでした。今は誰もそんな人はいなくなってしまいましたが、当時視察で見たミャンマー人はみんなお寺でお祈りして、心優しくて素朴で、私が暮らしていた昔の日本の田舎みたいな感じだったんです。

ーー最初からミャンマーに親しみを感じられていたのですね。人材ビジネスを始められて心境に変化はございましたか?

北中氏:私は三男坊で一人で生計を立てていかなくてはならないということで、大学から上京し、強い独立心を持ってこれまで生きてきました。今、ミャンマー人は自分の手で人生を切り拓いていくために日本に働きに行きます。その姿が大都会で一旗揚げようと上京した昔の自分を見ているようで、非常に胸が熱くなります。そんな彼らの強い思いを後押しするようなことがしたいというのが現在の私の原動力になっています。

ーー北中様の行動力はそんな熱い思いに支えられていたんですね。

北中氏:もう一つ、私の心に刻まれている非常に悔しい体験も原動力になっています。それは、30年前に視察で訪れた上海の発展を見抜くことができなかったことです。当時の上海は人口こそ多いものの、非常に汚い街で、人々の顔も暗く、私は、可能性を何も感じずに帰ってきました。しかし今や世界最大の都市になっています。なぜ、あの時私は上海の発展を見抜けなかったのかと、強い後悔をずっと持っていました。ミャンマーという土地と巡り合い、発展が約束されているときに、30年前と同じ轍を踏まず、その成長をもっとも近いところで見届けたいと思っています。

ーー今回は重厚なお話をいただきまして、本当にありがとうございました!

編集後記

今回はミャンマーNo.1送り出し機関として、ミャンマーの労働省から表彰を受けた、「ミャンマー・ユニティ」で最高顧問を務めていらっしゃる北中彰氏になぜミャンマー人材が日本企業が雇用する上で最高の人材なのか教えていただきました。長文になってしまいましたが、少しでもミャンマー事情について理解を深め、経営判断の一助となる記事になっていたら幸いです。

 
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1960年生まれ。中央大学法学部法律学科卒。大学卒業後、コンピューターサービス株式会社(現SCSK株式会社)に入社。のち1990年12月に株式会社オフィックス(現株式会社スリーイーホールディングス)を創業し、代表取締役就任。トナーカートリッジにおける環境問題に着目し、リサイクルトナー事業のパイオニアとなる。
2012年よりミャンマーに進出。のち2013年5月ミャンマーに「ミャンマー・ユニティ」を設立し、最高顧問に就任。2019年12月にミャンマー国内での総送り出し人数No.1となり労働大臣より表彰を受ける。現在までに累計1110名の技能実習生を日本へ送り出している。現在では、ラスト・フロンティアと呼ばれるミャンマーで有数の日本企業最高顧問として、日本の少子高齢化による人材不足問題に着目し、全国で技能実習や特定技能など外国人雇用に関する講演会および情報発信を精力的に行っている。
そのほか、3E Global Co.,Ltd Chairman、3E Yangon Co.,Ltd Chairman、株式会社サップ代表取締役、オフィネット・ドットコム株式会社代表取締役。