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更新日:2021/07/30

目次

外国人雇用協議会シンポジウム広報記事-5
外国人雇用協議会

理事 竹内 幸一(たけうち こういち)

1974年東京生まれ。群馬県藤岡市育ち。群馬県立富岡高校卒業後、アメリカに渡りサクラメント・シティ・カレッジ(Sac City College)に留学。カリフォルニア州立大学サクラメント校(Cal State University Sacramento)へトランスファーし、その後中退。1998年4月、外資ワイン商社へ就職。2003年、大手人材会社フルキャストへ転職。2005年、社内ベンチャーとして外国人の留学生採用支援事業部の設立に参画。2009年、事業部のMBOを経て株式会社グローバルパワー設立に参画。2010年12月、代表取締役に就任。2016年4月外国人雇用協議会理事に就任。現在に至る。

(快く取材に応じていただいた竹内氏)

最近、読者様より、

「特定技能の制度はあまりにも複雑すぎる!」

「特定活動46号って結局、どうやって使うべきなの?」

という声を多くいただきます。

新しい在留資格を利用して外国人人材の活用を積極的に図りたいという企業様やご担当者様程、制度の課題点に対しての疑問や不満を持たれているのが現状かと思います。

そんな中、

「不満を言っているだけでは何も変わりません!我々民間の総意を集約し、政府を動かし、制度をより良いものに作り変えて行きましょう!」

と旗を振るのが、一般社団法人外国人雇用協議会の竹内幸一理事です。

ご存知の方もいらっしゃるかと思いますが、同氏は外国人の人材紹介・派遣のパイオニアである株式会社グローバル・パワーで代表取締役を務めておられると同時に、一般社団法人外国人雇用協議会の発起人となり、外国人人材がより日本国内で活躍出来る環境作りを目指して、日々活動されておられます。

今回は、そんな竹内氏に、「外国人雇用協議会の設立の想い」と新しく出来た「特定技能、特定活動46号」について、そのほとばしる熱い情熱と共に教えていただきました。

本記事の概要が5分で分かるダイジェスト動画は↓↓

 

外国人人材の活躍を阻んでいるものは?

 

ーー早速ですが、外国人雇用協議会設立の背景を教えてください。

竹内氏:私は株式会社グローバルパワーの社長として長年、企業の外国人雇用をサポートしてきましたが、日本の将来を少し考えてみると、外国籍の方に活躍して頂くことの必要性は明らかなのに、思ったよりも進みが悪いということを感じていました。今後、日本の社会で活躍する外国籍の方をもっともっと増やすにはどうしたらいいのかと考えた時に、私が考える障壁は二つでした。

 

ーー二つの障壁とはなんでしょうか?

竹内氏一つは人口が増加する時代に基本設計された*出入国管理及び難民認定法(通称、入管法です。何度も改正され、少しずつ変わってきていますが、改正の余地はまだまだあります。

そしてもう一つは外国人人材を受け入れる日本人や日本企業の意識です。まだまだ、外国籍の方に対する小さな偏見は存在していて、外国人人材が日本の社会を担う仲間として活躍するのを邪魔していると感じています。

 

ーー障壁を解決するためには何が必要でしょうか?

竹内氏:結論からいうと、個人や一つの会社が考えているだけではなく、多くの会社、多くの人が共通認識を持って考えているんだということを、政府や多くの方々に示す必要があります。入管法に関しては政府、行政に政策提言できる力のある民間団体日本企業の意識に関しては、外国人労働者に対する考え方について考える機会を提供する組織が必要です。その目的を実現するための組織を作ろうと設立したのが『外国人雇用協議会』です。

 

ーーなるほど、現状に即した形に法律を変えるための組織、そして、外国人雇用について日本人や企業に対して啓蒙活動する組織が必要だということですね。

竹内氏:そうです。数年前に、元経済企画庁長官の堺屋太一さんに構想についてお話させて頂いた際に、絶対に日本の未来に取って必要なことだと賛同をいただき、じゃあこれはテーマが大きいから民間の総意として意見を言う組織を作りましょうということで、株式会社ニトリの似鳥会長や、株式会社AOKIホールディングスの青木社長、ワールドビジネスサテライトでコメンテーターをされているATカーニーの梅澤会長など様々な方にご協力、ご賛同いただいて、約4年前の2016年4月に設立しました。堺屋太一さんには初代会長を務めていただきました。

※ 編集部注 堺屋太一さんは、2019年2月にご逝去されたため、現在は、株式会社政策工房 代表取締役社長の原英史さんが外国人雇用協議会の代表理事を務められています。

入管法は国家戦略

ーー外国人雇用協議会の設立の背景についてよく理解いたしました。ここからは先ほどの二つの障壁について深く教えていただきたいと思います。まずは入管法について、問題の概要と、政策提言の方向性を教えてください。

竹内氏:まず現状の課題についてですが、出入国在留管理庁、法務省のみなさんがものすごく一生懸命に働いておられるのというのは百も承知の上で、あえて、直接的な表現を使うと、入管法の改正は日本の重要な国家戦略であるのにも関わらず、明確なビジョンが依然として打ち出されていないのが問題です

これから、日本の国をどんな形にするか決めるためには、政府だけではなく、様々な視点からの意見を反映して、多くの方で議論を進めることが重要だと考えています。

 

ーー国家戦略というところについて具体的に教えてください!

竹内氏:直近の日本の歴史を紐解いて行くと、明治維新以降、ずっと移民を受け入れずにやってきました。なぜそういう方針をとってきたかというと、ナショナリズムの台頭から、明治政府も「富国強兵」と言うスローガンを掲げて、その当時日本人だった人を中心に日本を強くしていきましょうと旗を振りました。また、明治維新以降日本は一貫して人口が増えて行く社会でしたので、それが成り立っていました。実際適切な政策だったと思いますし、当時の偉人の方々がそのように考え、努力されたことは勿論非常に尊敬しています。

 

ーーその状況が変わったと。

竹内氏:そうです。明治以降増加してきた人口が、2008年から人口減社会に変わりました。今後懸念される一番の国家的な課題は、社会保障をいかにして維持していくかです。現在日本の人口は1億2600万人ですが、これからは社会保障の制度によって支えられる側が増えていき、一方で支える側が減っていきます。これが由々しき問題だと思います。

 

ーー社会保障の問題を解決するために必要な施策はなんでしょうか?

竹内氏:ベースとなる施策としては、生産性の向上とAIロボットの活用が考えられます。1人あたりの生産性を上げることで、高まっていく社会保障費を賄っていく。無駄なことをやめて、生産性を上げる、本当に大事です。また、AI・ロボットの活用によって働き手を確保する、本当に重要ですよね。ただ、問題としては、AIやロボットはどれだけ活躍してくれても、社会保険料は支払ってくれないことです。

 

ーー1人あたりの支払い額をあげることはできるが、支払う母数の確保がさらに必要だということですね。

竹内氏:そうです。社会保険料を納める母数を増やす為には、どうすればいいかと考えると、まず出生率を上げるという議論になります。ですが、他の先進国の例を見ても出生率はそれほど変わりません。文化が醸成されていけばいくほど、先進国になればなるほど、少子高齢化を止める術はないのが現実です。例えば、日本国内で2018年に生まれた子供は92万人でしたが、2019年に生まれた子供が確定値ではありませんが86万人と言われています。ちなみに、僕は45歳で、同じ年に200万人が生まれています。45年前に200万人だったのが、一昨年92万人になって、去年86万人になりました。

仮に様々な施策でこれから出生率を高めることに成功し、86万人が100万人になったとしても、その人たちが働くのは早くても20年後で、それまでは社会保障に支えられる側です。

 

ーー確かに、出生率の向上だけでは、現実的に社会保障の問題を解決することは出来ませんね。

竹内氏:じゃあどうするのと考えると、やはり社会保障制度を支える側、つまり、社会保険料を払ってくれる人数を増やして行くことが必要です。その為には、大きく下記の3つのソリューションポイントがあります。

一つは、高齢者に活躍していただく。もらう側にいないで高齢者も支える側に回ってください、ということです。もう一つは、女性の活躍。もっと女性が活躍できる環境を整えて行きましょう。そして、最後が外国人人材の活躍です。外国人の方にもっと活躍できる環境、国にしていきましょうということです。

外国人雇用協議会で政府に提言していることは、国家戦略でいかに外国人の方々に来てもらうか、それも誰でも良い訳ではなく、日本人が嫌じゃない感じ、外国人の方々に失礼じゃない形で、どうやったら日本の力になってくれる人に来てもらえるのかということです。

 

ーー先ほどおっしゃっていた、国家はビジョンを示すべきだというお話ですね。

竹内氏:現状、政府は本音と建て前を使い分け、例えば、特定技能についても、

これは移民受け入れ政策ではありません。」

とずっと言っています。

政治家、政府、自民党も勿論、先ほど申し上げた、生産性向上、ロボット、AI技術の活用というベースの上で、高齢者、女性、外国人の雇用を進めていかなければならないということはちゃんとわかっています。ただ、有権者の中にも、これまでの100年間、日本人だけでやってきた歴史の中で、外国人に対する変な偏見を有し、外国人を下に見てしまう層が一定数いて、そういった層からの支持、選挙の票が取れなくなってしまうからはっきりとものが言えない状況なんです。

 

ーーなるほど!

竹内氏:経済界からはずっと、強く言われています。

「人材が足りないから、ちゃんと人材獲得できる仕組みを作ってくれよ!」

と。多分ありとあらゆる経済団体から言われていると思います。ただ、票が取れなくなるから直接的には行動ができません。ただ、そんなこと言っていられないというのが、今の状況です。

 

ーー外国人人材の活躍に関する施策に緊急を要する理由を教えてください。

竹内氏これからありとあらゆる国が少子高齢化になっていくからです。現状、少子高齢化の国は少数で、むしろ人口が増えている国の方が多いですが、先程お話したように様々な国が経済発展し、文化が成熟して行くと、どんどん、人口減少社会の国が増えていきます。

すると、どうなるか?人材の獲得競争になります。

だから、今のうちに、どうやったら、うちの国で仲間になってもらう外国籍の方を増やせるかについて、もっと国全体で議論することが大事です。

 

ーー今はまだ外国籍の方に力になってもらえる可能性が高いということでしょうか?

竹内氏:そうです。日本には外国籍の方に対する根強い偏見がありますし、また、経済的にも既に、アメリカやシンガポール、そして中国の海岸部と比較して稼げる国ではなくなってきています。それでも、今であればまだ海外の方を募ることができます。なぜなら、日本のブランディングがまだ生きているからです。

 

ーーブランディングですか!?

竹内氏:そうです。1つは安全性、もう一つは日本人は優しいというブランドです。外国人人材に対する偏見を持っている方もいますが、まだ、多くの国で日本は安心で安全で優しい社会だというブランディングができているため、今はまだ募ることができます。

 

ーーなるほど!

竹内氏:ただ、現状のままでは、来日された外国人人材は日本を嫌いになってしまうかもしれません。こんな状況を繰り返してたら本当にまずいんです。本当に日本に来て、日本の仲間になりたいという人を、今から増やしていくために、今後10年、50年、100年というスパンの国家ビジョンを策定して、声高らかに、議論を交わしていく必要があります。

今日本の国家は世界中のどこよりも深刻な少子高齢化社会です。だからこそ、外国人人材の受け入れをどうするのか、突き詰めるとその法的な枠組みである入管法は国を挙げて取り組まなくてはいけない、国民を挙げて取り組まなければいけない問題なんです。

 

ーー具体的にはどんな議論をどのように進めていきますか?

竹内氏:今、約2%しかいない外国人の人達、これじゃまずいと「特定技能」ができたけど、例えば、特定技能2号が無い12業種で2号作らなくて本当にいいの?5年の期間が終わって帰してしまっていいの?ということ。(※ 編集部注 特定技能で設定された14業種のうち、特定技能1号の通算5年間の期間が終わった後、資格を更新出来る特定技能2号が設定されているのは2業種のみ)

また、特定技能ではないですが、現在技能実習制度を活用している企業のうち、7割が法令違反をしているという報道がありましたが、これは、事業所が悪いのではなく、技能実習の仕組みが悪いのだと思います。7割が法令違反するっていうのは、それは制度が適正であれば起こりません。そんなに日本人はひどくないですよ。現場の状況、現実に照らして技能実習制度に問題がきっとあるんです。

偏見をなくすために

ーーそれでは次に外国人人材に対する偏見について詳しく教えてください。

竹内氏:先ほどもお話したように、残念ですが、外国籍の方に対してまだまだ偏見がある日本人がいます。外国人が日本で働こうとすると、昔ながらの価値観を持った方々からまず上がる懸念が、

「犯罪率が上がるのではないか?」

というものです。現実は全然そんなことないですよと。日本をどんな社会にしたいのか、ビジョンを掲げて、ビジョンのもとにきちんと設計をして、その上で僕らが仲間になってもらいたい人にどういう風に活躍してもらえばいいのかちゃんとやっていけば、問題は生じません。

もう一つは、

「教育が遅れているでしょ?」

という間違った考えです。日本人は、日本語が下手なだけで見た目が一緒のアジア人を若干下に見てしまいがちです。むしろ、日本で活躍できる外国籍の方は非常に優秀な方が多いんです。日本人のほとんどは中国語や英語などの第二言語でのコミュニケーションはできませんよね。それが彼らは最も難しい言語の一つである日本語でできているわけですから。

 

ーー偏見を払拭するにはどうすればいいですか?

竹内氏:我々の活動内容としては、シンポジウムやセミナーによる情報発信を通じて、考える機会を提供することです。ただ、一番はちゃんとした雇用を作ることが大事だと思います。身をもった経験以上の教訓はないですよ。

 

ーーと言いますと?

竹内氏結局外国人に偏見を持っている方々は、外国人と真剣に仕事をした経験がないんですよ。一度でも真剣に向き合った経験があれば、根拠のない偏見はとり除かれると思います。

 

ーーなるほど、お話を聞いていて、最初に共に働く外国籍の方のイメージが重要になるのではないかと思ったのですが、その辺はいかがでしょうか?

竹内氏:確かに、外国人の人材でも日本の社会にフィットしやすい、順応しやすい方々がいます。それは、頭脳の明晰さとは関係なくです。逆にいうと、そういう人たちの雇用を増やすことから始めた方が、反発は起きにくいと思います。優秀だけど日本に順応できない人を、まだ偏見のある企業に入れてしまうと、やはり厳しいです。だから最初は、より日本人のマインドに近しい方を紹介した方が偏見をなくしやすいですよね。

 

ーーグローバルパワーさんがやっていることはその考えに基づいているんですね。

竹内氏:そうです。なぜグローバルパワーが日本に住んでいて日本語が堪能な方をなぜターゲットとしているかというと、まず日本の企業に、外国人雇用の成功体験を持ってもらうためです。そうすると、次には、日本の文化には順応しずらい方の受け入れもしやすくなると思っています。現在は優秀な方よりも、日本の文化に順応出来る方の方が企業で活躍している傾向にありますが、これはまだ日本人の方が時代に順応できていないからです。ただ、これから5年10年経つと、別に日本にそんな順応していなくても活躍できるようになっていきます。これは現在の女性の活躍と一緒です。

 

ーー確かに!昔は「寿退社」が当たり前でしたもんね。

竹内氏:そうです。今は結婚していいよ、産休取っていいよ、育児休暇とっていいよ、その後復帰して活躍してね、という流れになってきています。一昔前はダメで、優秀な女性でも順応できませんでしたが、制度が整い、多くの日本人の意識も代わり、今は結婚や出産を経験された女性が多くの職場で活躍されていますよね。

 

ーー日本で働く外国人に対する考え方についても変えて行かなければなりませんね。

竹内氏:変えていくべきだし、変えていける自信があります。というより、変えていかないと、社会や会社が成り立たなくなってきてしまいますよね。成り立たない世界がすぐそこまできています。ありとあらゆる人を仲間にしていけるようにならないと、外国人だから、順応しないから、と人を切っていたら、会社が成り立たなくなっていきます。

特定技能、特定活動46号の課題点

ーー昨年には、特定技能や特定活動46号の施行等、新しい動きがありましたが、外国人雇用協議会でもそれについての政策提言をされていたと伺いました。

竹内氏:まだまだ道半ばです。それぞれ、もともと我々が構想し、提言したものは全くの別物でした。

 

ーーその構想について教えてください。

竹内氏:特定活動46号からお話しします。現状の「技術・人文知識・国際業務」の在留資格で活躍している外国籍の方の中で、不法就労になってしまう人材が出ています。なぜなら、「技術・人文知識・国際業務」で認められる仕事は、学術的、学問的に学んだことを活かした仕事でなければならず、身体で覚える仕事はやってはいけないルールになっているからです。ただ、実際にはそれを含んでいる仕事をしている人達が一杯いますよね。

 

ーー確かに。。。

竹内氏:本当に大切なのは何かを見極める必要があります。ちゃんと日本の学校を卒業し、アルバイトなどを通して日本の社会に順応している、今後日本で活躍して行きたいという人が働くことを制限している場合なの?ということです。そういったお話を外国人雇用協議会の政策提言として続けていたこともあって、「特定活動46号」(※ 編集部注 日本の4年生大卒で日本語能力試験N1相当の日本語力を持った方なら風営法関連業務以外の、日本語を活用した仕事に幅広く従事できる在留資格)が新しく始まったのですが、僕らが目指しているのは、専門学校卒でN2以上の日本語力を持った方に特定活動46号のような資格で日本で働いてもらうことです。

現状の在留資格を考えて行くと、高度専門職があって、技術・人文知識・国際業務があって、その下に、特定活動46号があって、特定技能2号があって、特定技能1号があるという三角形の図が出来ると思いますが、今、技術・人文知識・国際業務の在留資格がN2で専門学校卒でも取れるのに、N1で大卒の人がわざわざその下の特定活動46号を取って働きますか?ということは疑問です。

 

ーー取らないですよね。

竹内氏:結果、学歴条件が合わずに技術・人文知識・国際が取れなくて困っている人と、技術・人文知識・国際業務は取れるものの、結果として、在留資格の条件範囲外の活動にも従事し、違法就労になってしまっている人が出ています。これは、ほとんどが専門学校卒の人です。なぜそこを特定活動46号でOKにしないんだと。そうすれば、専門学校を卒業して、日本語もN2で話せて、日本の社会に2年間住んで順応していて、日本で働きたいという日本ファンの外国籍の方が、例えば、日本で農業がしたい、外食の仕事がしたい場合にも、日本で働いてもらえることになります。

 

ーーよくわかりました。では、特定技能に関してはどんな提言をされていたんですか?

竹内氏:もともとは、技能実習制度に対する政策提言をしていました。技能実習制度のそもそものコンセプトは全然間違っていないと思います。実際、技能実習でちゃんと国際貢献したい人たちもいる訳じゃないですか?

 

ーーそうですね。

竹内氏:そういう方々がもっと胸を張って、国際貢献してますと言えるように、本音が国際貢献ではなく、人材が確保出来ないから労働力が欲しいという業界や、母国でなかなか満足できる仕事が見つからずに日本で働きたいという外国籍の方向けの、在留資格を作ろうよということです。

現状、企業としては労働力が欲しい、外国籍の方も技能の習得ではなく日本で働くことが目的なのに、他の在留資格がないから、技能実習制度を活用しているパターンも多くあると思います。その思い自体は当然なことだし、今後の日本の為に重要なことなんだから、そこは労働力確保を目的としたちゃんとした在留資格を作りましょうよということを提言していました。

 

ーー特定技能は制度が開始されて、そろそろ1年経ちますが、政府が当初発表した計画に対して進みが遅いようです。その点はどう認識されていますか?

竹内氏:現状の特定技能制度は方向性としては悪くないと思います。日本で初めて労働力を目的としてOKという在留資格になったことはすごく大きな方針転換だし、日本人が考えるきっかけになりました。ただ、私から見て3つの改善点があります。一つは制度設計が複雑すぎること、二つ目は認知の為の施策をもっと施す必要があること、三つ目は技能実習制度をもっと当初のコンセプトに沿った形にすることです。以上の3つを改善しないと、特定技能の在留資格で34万5000人なんてありえないと思います。

 

ーーまだまだ理想型には至っていないということですね。

竹内氏:特に既存の14業種は全て早く特定技能2号を作りたいですよね。既存の特定技能1号だけの業種に関しては、通算5年までですから、5年経ったらみなさん帰ってください。永住にもカウントしてはいけません。家族も連れてきていけません。という立て付けです。5年で帰ってもいいよという人は、明らかに出稼ぎの人ですよね。一方、特定技能2号は、もし、日本に残りたければ、永住につながる道がありますよ。という立て付けです。これなら本当に日本が好きな人、頑張れる人が来ると思います。

 

ーー制度の設計の違いで来る人が変わってしまうんですね。

竹内氏:既存の技能実習は本来の目的通り、国際貢献のためにきちっとやり、技能実習は現在80業種、142作業ありますが、そのうちの労働力が必要な業界には全て、特定技能制度が作られるべきですよね。本来の目的と違う技能実習制度をやっている場合ではないです特定技能をもっときちっと制度設計して、もっと発展させていくべきです。

 

ーー技能実習と特定技能をしっかりと分けた方がいいんですね。

竹内氏技能実習をやっていて特定技能を始めても僕は並行する訳がないと思っています。既に技能実習を導入している場合は、技能実習の方が企業側は楽ですから。監理団体も同じです。特定技能を活用する際の書類も膨大です。これをやるわけがないですよ。労働力が必要なところには、特定技能1号、2号の制度をしっかりと整えて、技能実習としっかりと分けて行くことで、本当に日本で頑張れる人を増やすことができると思います。

 

ーー今伺った内容を今後も政策提言として続けて行かれるのですね。

竹内氏:そうです。それを実現して行く為にも、外国人雇用協議会の仲間をもっともっと増やして、民間の総意だよという形にしていかないといけません。何も、ここまで僕がお話したことに変わったことは一つもありません。みんな思っていることなんです。実際、会員もどんどん増えるし、仲間もどんどん増えています。みんな考えていることは一緒なんですよ。というよりちゃんと考えていたら、答えは一つしかないんです。だから協議会の組織を強くしていきたいと思っていますし、その為に仲間をもっと増やして、もっといい特定活動46号、特定技能の制度にしたいと思っています。特定技能も技能実習も、さっき言ったピラミッドをちゃんと、戦略立てて実現して行けるようにしたいと思います。

ワンチームを目指す。

ーー最後に竹内様が目指されている日本社会のあり方を教えてください。

竹内氏:今度出す本の後書きにも書きましたが、簡単にいうと、ラグビー日本代表のような日本社会にできればと思っています。ラグビー日本代表は、半分日本人で、半分外国人。日本国籍ではない方でも、最低3年日本での居住歴があって、日本でプレーをしていた経験があれば、日本代表になれる制度でした。つまり、外国籍ではあるんだけど、日本の社会で生きて、生活して、稼いで、家族も持っている人々が、世界でベスト8になろうという目標の元に一致団結して、努力して、素晴らしい成果をあげたんです。ああいう社会にしたいですよね。

 

ーーなぜラグビー日本代表をモデルケースにされているのですか?

竹内氏:ここからは僕の勝手な私見ですが、彼らは、

「日本代表としてあなたはベスト8を目指せますか?」

という問いに対し、

「目指したい!」

と答え、志を一つにして集まったわけです。ただ、それでも真のチームになるために、これまで、めちゃくちゃ面倒なことを乗り越えてきたと思うんです。なぜなら、日本人だけのチームと比較して、阿吽の呼吸が通用しないし、価値観も違うし、ああ言えば、こう言うし、重要なポイントも違うし、プライオリティも違うからです。

 

ーーまとまらなそうですね。。。

竹内氏:日本人だけなら、楽ですよ。阿吽の呼吸でできますから。ただ、それだけでは違う視点は生まれないし、それぞれ違った能力を活かすことは出来ないんです。例えば日本人には空気を読む能力があるけど、外国人にはそこを構わずに突破する能力があります。そういった多様性のあるチームがまとまるのって、目標は一緒にしても、本当にしんどかったと思うんですよ。でも彼らはそれを乗り越えて、さらに、それぞれの違いを尊重しあって成果を上げることができたんですよね。

 

ーーそんな苦難があったとは、想像しきれていませんでした。

竹内氏:私自身の経験を投影しているところもあるかもしれません。というのも、グローバルパワーは200人社員がいるうちの180人が外国人です。割合でいうと、ラグビー日本代表よりもえぐい。そんな僕らがどうやってやってきたかというと、お互いに譲れないポイントをいかに尊重しあえるかというのを面倒くさがらず、徹底的に話し合うんです。これが何よりも、ダイバーシティがある組織には必要だと思います。

 

ーーお聞きしただけで大変そうに感じてしまいます。

竹内氏:本当にめんどうですよ。1を言ったら10分かるという組織ではないから。なんでそんな事言うのってこともいっぱいあるし、だけど、そういうことがあった時に、徹底的に諦めず、重要なポイントを絶対に譲らず、ただ、リスペクトがあるから、譲歩する部分は譲歩して、そうやって良いチームになっていくしか道はないと思います。そしてそうすることで、意外性と多様性を出すこともできるんです。

 

ーー意外性と多様性ですか?

竹内氏:ゲームでもそうですけど、ずーっと同じキャラクターで遊んでいて、終わりの内容が見えてたら面白さがない。意外性と多様性が、楽しさを提供してくれるものです。そしてまさに、外国籍の方は日本社会に意外性と多様性を提供してくれるものだと実感を通じて思います。

 

ーー外国籍の方は、ただ日本社会を存続させて行くためだけではなく、意外性と多様性ある楽しい社会にするためにも必要だということですね!

竹内氏:そうです。みんなで力を合わせて、これから日本の中に数十%位、日本国籍ではないけど、日本で働き、日本の社会や国家を担ってくれるような方が気持ちよく働ける社会を作りたいと思います。僕ら外国人雇用協議会では、日本を支える外国籍の方のことを、「次世代日本人」と呼んでいます。次世代日本人は堺屋太一氏が命名されました。この次世代日本人をどうやって受け入れて、増やしていくのかというのを今から考えていくのが、国家戦略であると信じ、僕らは行動を続けて行きます!

 

ーー今回は貴重なお話ありがとうございました!

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