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外国人従業員の宗教上の配慮はどうすればいい?

目次

今度イスラム教徒の方を雇うことになったんだけど、礼拝所とか準備した方がいいかな?」

「うちはヒンドゥー教徒の方を雇うことになったんだけど、肉は食べさせちゃまずいんだっけ?」

そんなお問い合わせをいただくようになりました。

外国人を雇用したい企業にとって、宗教上何をどのくらい配慮したらいいのかは共通の不安ですよね。

結論からいうと、「個別対応が原則」です。

宗教についての知識が深ければ深いほど、厳格に戒律を守らないといけないのでは?と心配になりますが、日本人にもお彼岸に必ずお参りする人とそうでない人がいるように、戒律をどの程度守るかは、人によって厳格さに差があります。

とはいえ、基礎知識を踏まえた上で、個別対応することが大切ですので、今回は特にイスラム教とヒンドゥー教に絞り、基礎知識と現場の事例をご紹介します。

本記事が職場のダイバーシティ化に少しでもお役に立てれば幸いです。

イスラム教の主な戒律

抑えておくべき主な戒律を簡単に箇条書きで示します。

・禁止されている食材:豚、血(血液が付着した食べ物を含む)アルコール(料理酒、みりん等を含む。)

・1日5回の礼拝を行う。

・イスラム歴9月、1ヶ月間の断食期間は、夜明けから夜まで一切の飲食が禁止

・女性は家族以外の男性からは髪を隠す(ヒジャブ)

・偶像礼拝の禁止

その他、イスラム教国では金曜日が集団礼拝の日として休日になることが多いです。

ちなみに、信者数の人口比率が高く、日本に在留している方も多い国は、インドネシア(87%)マレーシア(61%)パキスタン(96%)トルコ(99%)バングラデシュ(88%)となっています。

※参考:総務省資料

ヒンドゥー教の主な戒律

同様にヒンドゥー教で禁止されている事項を紹介いたします。

・禁止されている食材:肉全般(牛、豚)、魚介類全般、卵、その他生もの

・左手を使用してはいけない。

信者数の人口比率が高く、日本に在留している方も多い国は、ネパール(81%)、インド(80%)となっています。

※参考:総務省資料

で、実際はどうなの??

以上、イスラム教、ヒンドゥー教の戒律に関して簡単にご紹介いたしましたが、企業様にとっては実際のところ、以上でご紹介した戒律がどの程度厳格に守られるのか、企業としてどんな対応をしたらいいのかが重要なポイントだと思います。

冒頭でも述べましたが、結論は「個別対応」です。

ここからは実際の現場ではどのようなことが起こっているのか、私が見聞きした事例をご紹介します。

Case1:社員食堂の料理を食べると戒律を破る可能性があるため、自分でお弁当を作っている。

イスラム教徒の方、ヒンドゥー教徒の方どちらの場合でもあった事例です。社員食堂の食事や外食で、知らぬうちに戒律を破ることが無いよう、宗教上食べても良い食材を使って自分でお弁当を作り、職場に持っていく方がいらっしゃいました。この場合、企業側の対応としては、強引に食事や飲み会に誘い、宗教上禁止されている食べ物やアルコールを摂取させないように、配慮することです。過去に強引に宗教の戒律を破らせたとして、問題になったケースもありましたので注意してください。

Case2:知らぬ間に、禁止されている食材を食べてしまうのは仕方が無いと考える。

日本語の表記が読めない、日本語で説明された言葉が分からない場合に、知らぬ間に、禁止されている食材を食べてしまうのは現実的に仕方が無いと考えている方もいました。その方は自分から主体的に禁止食材を食べに行くのはアウトだが、知らずに連れられて食べてしまう場合には仕方がないという認識だとおっしゃっていました。日本で最高に美味しかったのはとんこつラーメンだが、社員さんに強引に連れて行かれない場合には食べることができないと嘆いていらっしゃいました。関係性をしっかりと構築した後で、暗黙の了解のもと、ラーメン屋に連れていくのはOKになる場合もあるということです。

Case3:5回の礼拝を朝、昼、夜の3回にまとめる。

インドネシア人イスラム教徒の方の例です。その方は仕事の都合上、やむを得ない場合には、5回の礼拝を朝昼晩の3回にまとめているとおっしゃっていました。一方、厳格に礼拝を行いたいという方の希望を企業側が配慮して、礼拝のタイミングには小休憩をいれ、その分、お昼休憩を短くしているというケースもありました。礼拝の実施に対する想いの強さには軽重がありますので、対話を通じてそれを認識し、然るべき施策を講じる必要があります。

Case4:ヒジャブをつける?つけない?

イスラム教の女性は、ヒジャブをつけて家族以外の男性から髪を隠します。これは、「美しいものを隠すため」です。この、ヒジャブについても、就業中に被ってOKな事業所もあれば、事業の性質上なるべく被らないで欲しいとしている事業所もあります。特に、制服がある企業等は、事前にその制服を着て働いても良いかどうか了解をとっている場合が多いので、もし、貴社が制服を着て働くような業種でイスラム教徒を雇用されたい場合には、事前に確認を取ることをおすすめします。

Case5:有給を取りたい日付が異なる。

イスラム教徒であればラマダーン明け、ヒンドゥー教徒であればディワリ(新年)に有給を取りたい方が多いです。それぞれ毎年日付が異なります。大事なことは、前もって、長期で休みたい日付があるかどうかを本人に聞いておくことです。よくあるトラブルは、休みを取りたい1週間前や、3日前などの直近になってから、休暇希望を申告され、企業側がそれは厳しいと断ることで、関係性が悪化してしまうことです。前もって、休みたい日を把握することができていれば、対応できる可能性も少しは上がると思いますので、突然の休みが出ると、人員が厳しい場合には、

「長期休みを取りたい日はある?」

と前もって聞いておくことをオススメします。

本記事の趣旨とは若干ズレますが、「休暇をとる」ことに対する認識は個人によって大きく異なります。当然の権利だと、有給を全て使い切る人もいれば、少しでも多く働きたいが、会社から5日間の有給消化を促されて初めて有給を取る人もいます。これは国籍や宗教による違いではもう無くなってきていて、日本人でも今は有給は使い切る!という人が増えていますので、「有給の社員が出ても回る事業作り」は、外国人雇用企業に限らず、令和時代の全企業が乗り越えなければならない問題になっているのではないでしょうか?

まとめ

今回は、イスラム教徒、ヒンドゥー教徒を雇用する場合に知っておきたい基礎知識と、実際の現場の事例をご紹介しました。 

繰り返しになりますが、宗教上の配慮は個別対応が原則です。事前に聞くべきことは聞いておき、(通訳を介して、日本語では伝わっていない場合がございます!)個別対応できるように準備を整えておくことが肝要です。

有効求人倍率が高止まりし、今後もだんだんと人が集まらなくなっていく令和時代において、バックグラウンドの違いを乗り越えられない企業は淘汰されてしまう可能性が高いです。たとえ面倒に感じても、譲れない一線について互いに主張し、譲歩できるところは譲歩していく姿勢が非常に重要です。

本記事が少しでもダイバーシティある職場の実現のお役に立てれば幸いです。

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関根謙志郎

マーケティング部

福島県内の高校卒業後、東北大学に入学。在学中は硬式野球部に所属。英語学、心理学、英語教育学を専攻。卒業後は社会を構成する『ヒト・モノ・カネ・情報』が遍在することで生じる歪み(社会問題)をビジネスを通して適正化するというミッションに共感しリフト株式会社に入社。現在はマーケティングを担当。