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外国人留学生の採用が進まない3つの理由とは?

目次

↑今回取材に応じてくださった楳木氏。福岡県を拠点に、年間300名を超える外国人留学生のキャリアサポートを行うYOU MAKE ITの代表を務めている。

「外国人の雇用に興味はあるけれど、受け入れ態勢がまだ整ってないから採用は厳しいな。」

「高い紹介フィーを支払ってまで、意思疎通が難しい人材を採用したいとは思わないな。」

そんな声にも挫けず、就職困難な留学生のため企業、学生双方への支援活動を続けているのがか、YOU MAKE IT 代表の楳木健司氏です。

「僕の頭の中は、福岡にいる1万人弱の就職困難な留学生が、どうすれば就職できるのか、それだけでいっぱいです。

と、語る同氏は前職のリクルートで培ったスキルを用いて、年間300名を超える留学生のキャリアコンサルティングを行い、一方で福岡にある数多くの地場企業への受入れ支援活動を続けています。

約7万人のFacebookのフォロワーから、毎日のように就活サポート依頼が届く、まさに、外国人留学生の就活駆け込み寺である同氏に、「なぜ外国人留学生の雇用が進まないのか?」「どうすれば就職困難層が就職できるようになるのか?」取材しました。

本記事を読み、外国人留学生の実際の姿について理解を深めていただければと存じます。

ぜひご一読くださいませ。

福岡県には約1万人の就職困難な外国人留学生がいると思っている。

↑YOU MAKE ITのオフィスがあるFukuoka Growth Nextで開催しているキャリア教育活動の様子。

ーーそれではまず、現在の活動内容について教えてください。

楳木氏:私は個人で、外国人のキャリアアドバイザーと企業のリクルートメントアドバイザーをしています。昨年は、外国人エンジニア40名以上の就労サポートを行いました。福岡にいる就職困難層の日本語学校、専門学校の学生のキャリアコンサルティングを行っています。

ーー就職困難層とはどういうことでしょうか?

楳木氏:簡単にいうと、日本語力、日本のビジネスマナーや受入れ企業のニーズの課題から、日本で就職したくても、なかなか就職先がない外国人留学生のことです。↓は福岡市が作成した資料ですが、平成30年に福岡には留学生が約2万人いるのに、福岡で留学ビザから就労ビザに変更できた人は約800人しかいないことを示しています。

市や県は、福岡で育てたのに、県外や海外に優秀な外国人が流出してしまっているという認識ですが、それに加えて実際のところは、2万人の中でも、約1万人は様々な理由から他の県でも就職したくてもできない、純粋な就職困難層だと考えています。私は、彼らの駆け込み寺のような状況です。

ーー駆け込み寺ですか!?

楳木氏:そうです。YOU MAKE ITのFacebookページには現在約7万人のフォロワーがいますが、そのほとんどが外国人で日本での就職活動中の留学生も多くいらっしゃいます。毎日そういった留学生から、

「仕事探しを手伝ってくれませんか?」

「就職サポートしてくれませんか?」

と、メッセージがひっきりなしに届きます。私は彼らをなんとかしたいんです。

ーー先ほど、外国人留学生のキャリアカウンセリングを行なっているとのことでしたが、なぜ無償での活動なのですか?

楳木氏:それは、言葉が悪いですが、彼らの多くは人材紹介ではビジネスにならないからです。日本語学校や専門学校卒でも、母国で4年制の大学を卒業した理系人材や、圧倒的に日本語力の高い、いわゆるN1の文系人材、もしくは日本語力はそこそこでも何か突出した技術や特技を持っている人材については人材紹介として紹介フィーをいただけるかもしれませんが、そうではない、N3以下の文系人材の紹介は非常に厳しいのが現状です。

長期的にキャリアを考えられるようなカウンセリングが必要。

↑楳木氏は日本語学校、専門学校を巡ってキャリア教育を実施している。

ーー一括りにできませんがなぜN3以下の文系人材の就職は厳しい状況にあるのでしょうか?

楳木氏:それは大きく留学生側の課題、企業側の課題、在留資格に関する課題の3つの課題があります。3つ目の在留資格に関しては、特定技能特定活動46号によって緩和の兆しがあるので、深い言及はせず、ここでは前者2つの課題についてご説明いたします。

(編集部注:在留資格に関しては変更のグランドデザインに変化の兆しがございます。詳細については外国人雇用協議会の竹内理事に取材した記事↓をご覧ください。

外国人雇用に明確なビジョンを発信し続ける外国人雇用協議会とは?「特定技能」「特定活動46号」の目指すべきビジョンにも迫りました!

ーーありがとうございます!それでは留学生側の課題を教えてください。

楳木氏:あくまでも、N3以下の文系人材の「就職困難層」に共通している部分という観点でお伝えしますと、もっとも根本的な課題は、ほとんどの方は長期的なキャリアのビジョンが明確ではないということです。「将来はどんなキャリアを歩んでいきたいですか?」と聞くと「金持ちになりたい」、「日本にいたい」くらいのぼんやりとした目標の方が多いです。

ーーそれはなぜでしょう?

楳木氏:あくまで私見ですが、日本と比較すると、外部環境の変化が激しいため、直近の利益に目が行きがちになってしまうのではないかと思います。母国にいる家族への仕送りを毎月給料の半分以上している外国人や、20代で弟、妹5人の学費を毎月仕送りしている友人もいます。ただ、もちろん同一の国出身の方でも面談をすると、「母国と日本の架け橋になりたい。」など、かなりの視座で日々励まれている方もいますので、国の文化というよりも、育った個別の環境や本人の気質によるところも大きいとは思います。

ーーなるほど。キャリアの目標がないと具体的にどんな弊害が出てくるのでしょうか?

楳木氏:就職活動を開始するタイミングが遅れてしまうことです。今年3月に卒業するのに、今年の卒業間際の2月現在から、就職活動を始めている方も多いです。彼らは、

「留学のビザが切れてしまうのでどこか就職できる企業さんないですか?」

と相談にきます。もし、もう一年、二年早くコミュニケーションを取ることができれば、そこからキャリアについて考え、日本語学習や面接練習などの然るべき準備ができるんですが、卒業まで残り1ヶ月と迫った2月では、なかなか対策も打ちようがありません。また、これには日本での就職活動の方法や時期を理解していないという要因もあります。

ーー日本企業に内定をもらうための「準備期間」が必要なのですね。

楳木氏:そうです。キャリアプランを真剣に考え、日本に就職することが不可欠であり、継続して在留して働きたいと思うようになれば、日本語学習にかける熱量も違ってきますよね。

ーーなるほど!

楳木氏:ただ、職業支援ではなく、キャリア構築支援が重要だと私は思っていますので、もし、留学生と話していて、この方は母国に帰ったり、他の国に行った方が幸せになれそうだと判断したら、今すぐに帰った方がいいとアドバイスするようにしています。

ーー日本での就活を希望されている方のなかにも帰国した方が良い方がいるのですか?

楳木氏:そうなんです。例えば、

「ベトナムでホテルを作りたい。こんな方法で実現したいと思っている。」

というように、目標と実現のの手段がかなり明確な方がいました。この方にはいますぐに母国に帰って、挑戦するのがいいと背中を押すだけでした。

一方で、

母国スリランカで父親が営んでいる自動車整備工場を将来つぐために、日本の自動車整備工場に就職して修行がしたいが、そのために必要な自動車整備の専門学校は日本語力がN2以上必要なのでN3の自分には入れない。なんとかならないか。

という現実的に厳しい相談がきた際にも、将来整備工になることがゴールで、日本語の勉強はしたくないのであれば、母国に帰り実家の整備工場で修行するのが一番だよということを伝えました。大事なのは、個人個人の目標を明確化して、そのための手段として日本での就職が正しいのかどうかがはっきりすることだと思います。ただ、このようなケースは希で、ほとんどの外国人留学生は日本でのキャリアプランをひくことができます。

ーーなるほど、キャリア教育によって早いタイミングで目的と目標を明確化することが、就職困難な留学生を減らすことに繋がるのですね。

楳木氏:適切なタイミングで適切なキャリア教育をすれば留学生の就活が全てうまく行くかというと、それはもちろん理想論です。ただ、100人にカウンセリングして、そのうちに数%でもいいから意識が変わって就職に成功する人が出てくれたらいいなと思って活動をしています。

そもそも企業に留学生受入れ準備は必要?

↑2019年12月に福岡で開催した企業向けイベント様子。外国人雇用に興味がある企業は非常に多い。

ーー留学生側の問題に関しては理解いたしました。次に企業側の課題について教えてください。

楳木氏:企業側の課題は、必要性は理解しているにも関わらず、どう彼らと接していいのか分からずに採用まで至らない企業が多いことです。実際、福岡の地場企業を実際に営業していると、どの企業さんも興味関心はあるんですね。ただ、訪問して、2時間くらい、就労ビザや技能実習生に関するところを説明して話は盛り上がるんですが、採用しますかと伺うと、まだいいかなと、一人目の外国人採用に踏み切れない状況です。

ーーそれは何故なのでしょうか?

楳木氏:私も理由を理解したくて、何故なのか毎回ヒアリングをしているのですが、どこの企業さんも、

「まだ受け入れ体制が足りない。」

とおっしゃるんです。実際、技術・人文知識・国際業務のビザで雇用する場合なんかは、留学生の採用にあたり、何も特別な準備は必要ありません。「受け入れ態勢」という言葉だけが一人歩きしてしまっていて、何を受け入れ体制と呼んでいいのか本当のところよくわからず、なんとなく不安を感じてしまっている状況なのではないかと推察しています。

ーーそういった企業の心理的なハードルを乗り越えていくためにはなにが必要だとお考えですか?

楳木氏:私も模索中ではあるんですが、現在は地道に一歩ずつ受け入れに対して理解を深める活動をしていくことが重要だと考えています。直近では、昨年の12月20日にWOVNの副社長、ニトリの人事の方、一風堂の人事の方、職場のダイバーシティ化を専門とする経営コンサルタントの方を呼び、イベントを開催しました。定員の倍以上、80名も集まるなど関心度の高さを実感いたしました。

ーーどんなテーマだったのですか?

楳木氏:外国人従業員採用後の外国人社員と日本人社員に対しての教育についてです。昔から受け入れを進めていたニトリさんと一風堂さんの現場の事例に対し、質問が活発に飛び交うなど、大いに盛り上がりました。日本人社員の受け入れマインドの醸成を課題と考える企業は多いと感じました。

ーーみなさん、外国人の雇用は進めて行きたいんですね。

楳木氏:そうですね。関心はあるが、最初の一歩は踏み出せない、そんな状況です。ですから、なんとか一歩踏み出してもらうように、交流の場を作ることにも取り組んでいます。実際のところ、留学生も、学校いって、アルバイト行っての繰り返しで、休日も同じ国籍で固まってしまって、日本人の友達は僕が初めてなんてケースも多いんです。一方日本人からしても、外国籍の方ともっと交流をして、理解を深めたいと思っています。交流を図る場として座談会や企業合同説明会を年に3−4回開いています。実際会ってみると、

「イメージより全然いいね。」

「N3では話せないイメージあったけれど全然話せるね。」

といったプラスのフィードバックをもらえるのですが、それでもまだまだ、最後の一歩採用まで踏み切れない企業さんが多いというのが現状です。

日本で働きたい外国人みんなが夢を描ける社会にしたい。

 

ーー企業側の課題についても理解いたしました。ほとんどボランティアのような形でも精力的に活動を続けていらっしゃるお姿、尊敬いたします。何か現在の活動の原動力になっている体験はあるのでしょうか?

楳木氏:実は、数年前までは現在のような活動をしようだなんて全く考えていませんでした。そもそものきっかけは、営業代行として独立したてのころにたまたま日本語学校に訪問したことです。その日本語学校の方から、就職に困った留学生たちは、泣く泣くブローカーに20-40万円を支払って就職をし、劣悪な就労環境で不幸になっている人もいるという状況について話をされ、そこをなんとかしてくれと頼まれた所から、人材紹介事業の立ち上げ経験をさせていただきました。

ーーそういった経緯だったんですね。

楳木:そうなんです。実際に活動を開始してみて驚いたのが、外国人留学生に対して求職者からお金は取らず無料でキャリア面談していますというと、なかなか信じてもらうことができなかったことです。特に東南アジア出身の留学生は、お金を高く支払えば支払うほど信頼できるサービスという認識がありました。そんな中で信じてくれた15人くらいに、面接と履歴書の書き方を1年間トレーニングすることができました。なんとか彼らの頑張りの成果が出て、アウトソーシングの企業に正社員として入社できることになり、5年のビザを取ることができました。

すると、彼らが福岡の居酒屋に招待してくれて、お礼の会を開いてくれたんです。その日は今振り返っても本当に最高の1日で自然と涙が溢れていました。その時に、

ああ、これだ。これが天職だ。」

と思いました。綺麗事かもしれませんが、困っている人が相談をしてきてくれるだけで、自分としては存在意義を強く感じますし、期待に応えていきたいなと思います。

ーー最終的にはビジネスでの解決を目指していかれるのですか?

楳木:現状のところは人材紹介ではなく、企業さんに採用してもらえないかこちらからお願いしている状況です。ビジネスで解決するのがベストだと思いますが、そこに固執するあまり、目の前の困っている日本語学生、専門学生が救えないのでは意味がないので、そこは葛藤があります。

ーー難しいところですね。。。最後に楳木様の今後のビジョンを教えてください。

楳木氏:日本で働きたい外国人みんなが夢を持てるチャンスがある状態にしたいです。昨年300人くらいの留学生の方と話したり、ベトナムの大学や日本語センターに視察にいったりしましたが、日本に比べると、やはりまだ明確なビジョンが持ちずらい状況にあると思います。留学生たちは数ある国の中からせっかく日本を選んでくれたので、本人次第な部分もあるものの、せめて日本人と同様に夢を描ける機会を提供できればと思います。

ーー日本全体についてはどうなるのが理想だと思いますか?

楳木氏:外国人の就労支援に携わっている多くの関係者で共有されている理想図だと思いますが、やはり、ラグビー日本代表のような多国籍の人材が協力して成果をあげていくべきだと思います。少し飛躍してしまいますけど、人生において多くの時間を要する仕事を通じいろんな国籍の方と働くということを起端として、個人個人の相互理解が深まることで、最終的には世界から争いをなくすこともできると思っています。ですから、現在多くの企業様とビジネスをきっかけとして繋がっていますが、「お客様」「競合」というよりも、共通の理想図を目指す同志として共に日本の外国人雇用を盛り上げて行ければと思っています。

ーー今回は熱いお話をいただき、ありがとうございました!

編集後記

今回は福岡で精力的に留学生のキャリアコンサルティングをされている楳木氏を取材させていただきました。留学生と企業双方への継続的な啓蒙活動によって、ダイバーシティ&インクルージョンを目指していくという力強いお姿から、私たちもエネルギーをいただきました!同志の楳木様に負けじと、今後も日本のダイバーシティ&インクルージョンに貢献しうる情報発信を続けて行きます!

Global HR Magazine運営会社からのお知らせ

今回の楳木氏のお話のように、文系の外国人と企業のマッチングは人材紹介でビジネスを成立させることが非常に難しいです。問題の根幹には、人材紹介のフィーに対して外国人受け入れ企業側が背負うリスク(離職・失踪など)が大きいことがありました。

弊社では、人材流通のコストを最小化することでこの問題を少しでも解決できるのではと考え、この度、圧倒的に安い中間流通コストで外国人を採用できるサイトをオープンすることにいたしました。

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YOU MAKE IT 代表

福岡県生まれ。西南学院大学人間科学部社会福祉学科卒業。

新卒で株式会社リクルートに入社。1度の独立と失敗を経験。

再就職した地場企業では、支社立ち上げや新規事業立ち上げを担当。

2018年7月、再びフリーランスとして独立。

Fukuoka Growth Nextを拠点に、福岡在住の就職が困難な外国人留学生のキャリア支援と就労後フォローアップ事業をメインに活動中。