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更新日:2023/10/17

目次

統計から紐解く「特定技能」の現状 (1)

2019年4月の制度創設から4年間が経過した「特定技能」制度ですが、制度活用が大きく進み、法務省在留統計を見ても、2019年から2022年の期間で全在留資格中、最も在留数が増えた在留資格となっています。

特定技能の増加が背景かは分かりませんが、法務省が四半期毎に公表していた『特定技能在留外国人数』も2023年3月期の公表が無く、どうやら半年毎の公表となったようです。

少子高齢化が進み、生産労働人口が減少する一方の我が国において、特定技能制度は「労働力不足」を理由に外国人材の採用が可能になった初めての在留資格でもあり、我が国の今後の採用/労働問題に大きな影響を与える制度と言えます。また、各メディアが既報の通り、来年度(2024年度)には、これまで外国人材が多く働いてきた外国人技能実習制度が廃止/発展的解消となる可能性が高く、新しく創設される制度とも併せて「特定技能」制度を有効活用していくことは、多くの企業様にとって重要な経営課題であると私は考えています。

本記事は、法務省から定期的に公表されている特定技能在留外国人数の公表を元に、ミクロではなくマクロの視点から特定技能制度を見直し、特定技能を支援している立場にある私が見解を加え、皆様が今後より特定技能制度を上手く活用頂くことの一助となることを目的としています。

特定技能に関わらず、国内で就労する外国人材に関する報道が各マスコミでなされた際には、SNSやWEB上で賛否両論が分かれるのが常ですが、その多くの意見が自分自身が経験した「エピソード」に依拠しており、統計的な観点、マクロの観点からの意見は少ないように感じています。本記事が、特定技能制度を考えて行く際の、前提となる情報に接して頂くきっかけとなればと考えています。

本記事では、法務省の統計を出来る限り見やすく表やグラフで纏め、

・特定技能在留者の出身国

・特定技能在留者の地域分布

・特定技能在留者の資格取得ルート

を主な観点として、特定技能制度を全体的、構造的に理解することを目指しました。

また、一定程度、特定技能制度、技能実習制度について、基礎知識を持っている方にお読み頂く前提として、基礎的な在留資格の説明等については省いております。その点ご了解下さい。

なお、記事の中で、特に注釈が無い場合は「特定技能在留外国人数の公表」で発表されている2023年6末の数字を根拠としています。また、特段の記載が無ければ、「特定技能」は「特定技能1号」を指しておりますので、あらかじめご了承ください。

特定技能概要について知りたい!という方は、下記記事もあわせてご確認ください。


▶︎在留資格「特定技能」とは?特定技能外国人の採用から支援まで徹底解説

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特定技能外国人の在留数推移

まずは、「特定技能」で在留している外国人材の人数の6か月毎の分野別推移を見てみましょう。

分野別推移

  (法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

各分野で増加していることがお分かり頂けると思います。 

最新の公表数値である2023年6月末と1年前となる2022年6月を比較すると、全体で8万5,618人の増加で、昨年対比97.9%増となっています。

分野毎に在留数が多い順で見ると、飲食料品製造、分野統合された製造3分野、介護、農業、建設と続き、ここまでが10,000人を超える在留となっています。

一方で、少ない分野は航空、宿泊となり、そもそも限られた就業先しかない航空を除けば、宿泊分野の少なさが目立ちます。

個人的に注目しているのが一番下の段に赤字で記載している数字です。これは、各半期毎の増加数を6か月で割って求めたもので、半年間の1か月平均の増加数を表しています。

2020年からの数字を見ると、1カ月毎の増加数が右肩上がりで伸びていましたが、2023年6月期は1ヵ月平均7,029人の増加となり、前半期の1ヵ月平均7,241人を下回りました。

これは、半期毎の比較では、特定技能の歴史上初めてのこととなります。

統計的には、特定技能在留数の伸びが鈍化したと言えなくもないのですが、この原因を推測すると、個人的には、コロナウィルス蔓延による入国制限の影響が出ているのではないかと思われます。

2020年からコロナウィルスの感染拡大が始まり、2020年の3月末頃から原則として新規の在留資格での海外からの入国が不可能となりました。その後、2020年の8月頃から年末までは入国が再開し、2021年初頭から2022年の3月まで再度入国が不可能になった経緯があります。

特定技能へ在留資格を変更する人材の多くを占めるのが技能実習生であり、技能実習を3年間満了したタイミングが初回の変更タイミングとなるのですが、2023年1月から6月は、2020年春の入国不可能時期からちょうど3年後となり、3年間を満了する技能実習生が減少したことが、今回、特定技能の在留数の伸びが鈍化した原因では無いかと考えられます。

2023年の7月からの半期では、2020年の7月-12月に技能実習生も入国が可能だった為、概ね同じ程度の特定技能在留数の増加傾向が見込めると思われますが、2024年の1年間は2023年よりも3年間を満了する技能実習生が激減することが確実であり、特定技能人材の増加は、海外から特定技能人材として入国するか、又は、技能実習生以外の在留資格からの変更がどの程度になるかが大きく関わってきます。

そこで、特定技能人材の大きな供給元である技能実習生の在留数推移を纏めた表が下記となります。

技能実習生在留数しい-1

 (法務省在留統計を基にリフト株式会社で作成)

表を見て頂くと、技能実習生全体の在留数は、コロナウィルス蔓延前の2019年末に41万人を超えていた所、コロナ最盛期とも言える2021年12月末には27万6千人程度まで減少しましたが、2022年12月末には32万5千人弱まで在留数を回復しています。

但し、特定技能との関連を考える際には、その中身を見て行くことが重要です。

技能実習生から特定技能へ変更する人材は、技能実習2号の2年目(技能実習生通算3年目)か、技能実習3号の2年目(技能実習生通算5年目)の人材となりますが、技能実習2号の在留数は2020年12月末の約26万2千人強から、2022年12月末には8万4千人へと3分の1以下に激減しています。

技能実習2号と技能実習3号を足しても、ピークとなる2020年12月末の約30万2千人から2022年12月末で約16万人弱と半減しており、この減少が今半期の特定技能在留数の伸びの鈍化に繋がったと思われます。

また、技能実習生の入国は、2022年4月の入国再開以降かなりのペースで入国が進みましたので、2022年12月末には技能実習1号が約16万5千人まで積み上がっており、2012年12月末の水準に回復しています。

2023年4月の入国再開から3年後となる2025年4月以降にはまた技能実習生から特定技能への変更が増加することが見込まれます。

それを踏まえて、特定技能在留数の増加は、2023年下半期は月間6,000~7,000人程度、2024年中は通期で月間5,000~6,000人程度の増加に留まり、2025年4月以降、月間7,000人から8,000人程度まで伸びるのではないかと予測しています。

特定技能外国人の出身国分布

続いて、特定技能で現在在留している人材の出身国を見てみましょう。

2021年6月末から、2023年6月末まで2年間分の推移を表にしています。どの国でも大きく在留数を増やしていますが、全在留数に対する各国毎のシェアを見てみると制度全体の概要が考えやすくなると思います。

国別在留数推移

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

目立つところでは、

・ ベトナムのシェアはこの2年で6%分減少

・ インドネシアがベトナムの減少分のシェアをほぼ獲得する形でシェア数2位に

・ 中国は在留数は増えているもののシェアが大きく減少

というところでしょうか。

インドネシアは現地での技能評価試験も複数の分野で行われており、今後の特定技能採用を考える際にはかなり重要な受け入れ元国となって行くと思われます。

周辺在留資格との出身国比較

また、特定技能人材へ国内で在留資格変更する有力な候補となる、技能実習生と留学生、また、在留数が多い就労目的の資格である技術・人文知識・国際業務についても出身国を併せて見てみましょう。こちらは、在留統計からの数値で数値が2022年12月末となっていますので、その点にご注意ください。

在留資格別在留数

 (法務省在留統計を基にリフト株式会社で作成)

特定技能と技能実習生の出身国を比べてみると、やはり両資格には概ね相関関係があると言えるかと思います。

興味深いのは、技能実習のシェアが約50%であるベトナムが、特定技能では58.9%とシェアを伸ばしているところです。

ベトナムは技能実習以外に留学でもその他の国に比べて在留数が多く、技能実習以外から特定技能への変更が期待出来ることもありそうです。

また、特定技能のシェアとしては2位3位となるインドネシア、フィリピンでは留学生のシェアが少なく、逆に中国は、留学生のシェアは圧倒的な状況です。

またその他で目立つところではネパールが留学生でかなりのシェアを持っており、特定技能の1.8%、技能実習生の0.4%に比べても非常に大きなシェアとなっています。今後、ネパール人留学生からの特定技能資格変更は特定技能制度を考える際に一つ考えるべき内容かもしれません。

技能実習・留学生のコロナ前後在留数比較

また、参考として技能実習生と留学生の在留数のコロナウィルス拡大前後の推移についても見てみましょう。

コロナウィルス感染拡大の影響を受ける以前の2019年末の数字と直近統計である2022年6月末を比較したのが下記の表です。

コロナ前コロナ後比較

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

技能実習生、留学生共にトータルの在留数は、この3年間ででどちらも大きく減少しており、技能実習生が約5万7千人、留学生は約11万8千人と大きな減少となっています。

個別で目を引くのが、技能実習生で、ベトナム、中国が大きく在留数を減らし、フィリピン、タイも千人単位で在留数が減っている一方で、インドネシア、ミャンマー、カンボジア、ネパールは在留数を回復し、むしろコロナ前よりも増やしています。インドネシアに至っては10,000人以上の伸びとなっています。

ベトナムは在留数こそ減らしているものの、シェアで見ると概ね維持していると言えるのですが、中国は、在留数も大きく減らしたうえにシェアも6割減となっており、技能実習生受入れ元ととしての中国はコロナ前後で大きく存在感を減らしています。

また、留学生では多くの国が在留数を減らしている中、絶対数を増加させたのがミャンマーとネパールとなっています。ネパールは技能実習生においても絶対数が少ないものの、コロナ前後で3倍に増加しており、今後の技能実習生、特定技能採用を考える際には重要な国の一つとなっています。

国内変更を考えると、大きな供給源となっている2つの在留資格の数が減少していることは、特定技能制度の今後を考えて行く上では見逃せない要素です。

令和4年度「帰国後技能実習生フォローアップ調査」より

また、興味深い公表データとして、技能実習制度を管轄する外国人技能実習機構が公表した令和4年度「帰国後技能実習生フォローアップ調査」の中で、帰国した技能実習生に対して、今後の就職状況に対する調査を行っていますが、そちらの中に「技能実習3号で日本に戻る」「特定技能で日本に戻る」という項目があり、そちらを抜粋したのが下の表となります。

帰国後の就職状況

(令和4年度「帰国後技能実習生フォローアップ調査」(概要)よりリフト株式会社が抜粋作成)

これを見ると、まず目を引くのが、帰国した中国の技能実習生のうち在留資格を問わず、約7.5%だけしか、再来日をする予定になっていない点です。

これはかなりの衝撃的な結果だと思います。日本での就労を経験した中国人技能実習生にとって、再び戻りたいと思わていないのととほぼ同義とも言えます。

一方で、技能実習シェア1位であるベトナムが二つ合わせて23.6%に対して、インドネシア、フィリピン、タイは30%を超えており、帰国した技能実習生の3人に1人が再び日本に戻ってくる予定であることが分かります。

特定技能外国人の出身国別、分野別在留数

次に、出身国と分野別の分布を見てみます。

分野別国別シェア

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

上の表のシェア率を図に表したのが下記になります。

分野別出身国別グラフ

                                               (法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

分野毎に多い出身国のバラつきがあることがお分かり頂けるものと思います。国毎の傾向や志向性が見て取れ、個人的には大変興味深いデータです。

全体在留数トップのベトナムは、全体のシェアでは約56.3%となっていますが、建設や製造3分野、飲食料品製造業といった在留数の多い分野のシェアが大きく、外食業もほぼ全体通りのシェアを獲得しています。この4つの分野では、特定技能で働く方のうち、3人に2人がベトナム人というイメージになります。一方、介護、造船・舶用工業や、航空、漁業と言った分野では、全体に比べてシェアが低くなっています。

インドネシアでは、全体シェアに比べて、介護や漁業分野で大きく増加しています。介護分野についてはEPA介護士の対象国であることと、また、介護と漁業共通でインドネシア現地で特定技能評価試験が多く開催されていることから、在留数を押し上げているものと思われます。

フィリピンはより特徴的で、造船舶用、自動車整備、航空といった分野で大きくシェアを拡大しています。また、インドネシアと同じくEPA介護士の対象国であり、特定技能試験も一定数実施されていますが介護分野はそこまでシェアを増加させていません。

中国はあまり特徴的な傾向が見られません。

ミャンマーについては、全体で約4.6%のシェアですが、宿泊で17.1%、介護で約13.1%、ビルクリーニングで10.9%、外食でも9.5%と、シェアが高い分野がはっきりしており、逆に、建設や製造3分野、農業などの在留数が多い分野ではシェアを減らしています。。

カンボジアは全体シェア約2%のところ、農業分野でシェア9%を取っており、農業での採用を考える際には重要な国です。

タイはそこまで大きな傾向がありません。

ネパールも特徴的で、全体シェアは2%ですが、宿泊、外食、介護の分野でそれぞれ8%台となっている一方、建設や製造3分野、飲食料品製造業といった分野ではほとんど在留数が見られません。

その他では、航空分野と宿泊分野、外食分野で、全体在留数でトップ7に入らないその他の国のシェアが高くなっています。

この3つの分野は、事実上、技能実習生からの移行が無いことと、留学生の方が比較的希望しやすい分野であることから、このような傾向になっているものと思われます。

こういったデータについては、今後、特定技能人材を採用する際に国籍にこだわらない企業様は「どの国が自社の分野の仕事で採用しやすいのか?」という観点で参考に出来るデータかと思われます。

弊社でも最近(2023年8月)に、ビルクリーニング分野のクライアント企業様から、日本国内でタイ人女性の特定技能人材採用をしたいというご相談がありましたが、統計データを見ると、タイ人のビルクリーニング特定技能人材は、2023年6月末に28名の在留に留まっており、現に特定技能として就労している方の転職というものはなかなか期待しにくいことが分かります。

その為、クライアント企業様には、統計データを元に説明をして、その他の国籍の人材のご採用を頂けることとなりましたが、統計がかなりの説得力となりました。

特定技能外国人の出身国別資格取得ルート

続いて、出身国別の資格取得ルートも見てみます。国別ルート別

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

人材が特定技能の在留資格を取得する為には、要件を満たす必要があり、要件を満たす為には、大きく3つの方法があります。

1つ目は特定技能評価試験と日本語能力試験を受験して合格する方法(試験ルート)

2つ目は技能実習生を3年間以上満了する方法(技能実習ルート)

3つ目はそれ以外の方法 となります。

特定技能全体では、概ね、試験ルートが約3割、技能実習ルートが約7割、その他ルートはかなりレアな状況です。

こちらもそれぞれの出身国別で傾向が分かれており、興味深いデータとなります。

在留数トップのベトナムでは、全体のシェアに比べて、技能実習ルートの割合が若干高くなっていますが概ね全体シェアに紐づいています。

在留数2位のインドネシアでは、試験ルートの比率が高まっています。インドネシアでの試験実施が早くから始まっていたことが大きい要因と思われますが、同じく試験実施が早かったフィリピンでは、逆に試験ルートの在留シェアが少ないことと比べて目立っています。

インドネシアとフィリピンの違いで行くと、海外からの招聘の際の難易度が違うことがこの原因ではないかと思われます。特定技能に限りませんが、フィリピン人材を雇用する場合には、政府機関の許可を得る必要があり、その点で試験合格して、面接に内定した人材の日本での就業が遅れ、そのタイムラグから、このようなシェア分布になっている可能性があります。

中国では、技能実習ルートの在留が多くなっており、試験ルートが少なくなっています。中国とはまだ特定技能の二国間協定が無く、中国で特定技能試験が行われていないことと、また、年々特定技能での在留数シェア自体が落ちてきており、特定技能での日本での就労に対する人気が高くなく、国内にいる技能実習生や留学生が試験を受けてまで特定技能として在留しようというモチベーションが少ないのかもしれません。

続いてミャンマーは試験ルートでの在留シェアが多くなっています。ミャンマーでは、クーデターの影響で、海外試験が中断していた影響で、海外からの試験合格者が大きく在留していることは考えにくく、国内の技能実習生が、特定技能試験を受けて、技能実習時代と別の分野の特定技能資格に変更する違う仕事に挑戦して行く傾向があると考えられます。

カンボジアでは目立った傾向がありませんが、若干技能実習ルートの比率が高くなっています。

特徴的なのはタイで、試験ルートでの資格変更が少なく、ミャンマーとは逆に技能実習生の際と同じ仕事を特定技能として続けていると言えます。この辺りは定着率を考える際には興味深いデータです。

また、ネパールは特徴的で、90%以上が試験ルートとなっています。上述の通り、ネパールは留学生が多く、当然留学生から特定技能になる為には試験ルートが多くなるということもありますが、非常に尖った特徴になっています。

今後、この傾向がどのようになって行くのか、個人的には大変興味深く見ています。

特定技能外国人の都道府県、地域区分分布推移

続いて、特定技能外国人の都道府県毎の在留数を見てみましょう。  都道府県分布

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

こちらは県ごとに見ると細かすぎるので、総務省統計局の規定する地域区分に沿って、地域毎の在留数/シェア数の1年毎の推移を見てみます。

地域区分推移

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

こちらで各地域区分毎のシェア推移が分かりますが、これでも一見して傾向を掴み取ることが難しいかと思います。

この地域区分の推移は、今後の特定技能活用に非常に重要なポイントとなります。

最低賃金の格差などもあり、現在、募集されている特定技能向けの求人でも、地域間で同じ仕事でも給与面で大きな格差が出ているのが現状で、今後、特定技能人材が、東京など都市部の特定技能の人材募集にに集中し、地方での求人に人が集まらないのではないかという懸念がありましたが、上記の地域区分毎の変動を見てみると、現状そこまで大きな動きにはなっていないと言えるのかもしれません。

また、特定技能と最も相関関係の高い在留資格である技能実習生の地域区分別の在留数とも比較を見てみましょう。

下記が2022年12月末の特定技能と技能実習生の在留分布を地域区分でまとめて比較した表です。

技能実習 特定技能地域区分 在留

            (法務省在留統計を基にリフト株式会社で作成)

地域区分毎の技能実習生の在留シェア率と、特定技能の在留シェア率を比較した割合を一番右側に変動率として表現しています。

これが100%を上回っていると、技能実習生よりも特定技能の方がシェアとして多く在留しており、技能実習対比で特定技能が多く在留している地域となり、逆に下回ると少ない地域となります。

技能実習生よりも在留シェアを伸ばしている地域は、北海道、北関東・甲信、南関東、近畿となりました。一方で、東北、北陸と言った地域は大きくシェアを減らしており、技能実習比較で考えると特定技能の在留₌定着が進んでおらず、踏み込んでいえば、技能実習生が特定技能として残りにくいという結果になっています。

また、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議(以下、有識者会議)の資料の中に下記のような内容が公表されており、技能実習から特定技能に移行する際の都道府県毎の転出・転入状況が公表されています。

スクリーンショット

 (技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議 資料より)

上記の折れ線グラフの赤が転出、青が転入となりますので、青い線グラフが上になっていれば転入超過、赤い線グラフが上であれば転出超過となります。

これを見ると首都圏(一都三県)や大阪、兵庫は大きく転入超過ですが、それに負けず茨城県も大きく転入超過になっているのが目立ちます。

また、愛知県は、転入、転出共に全都道府県トップとなっており、これだけを見ると出入りの多い県ということが分かります。

一方で、東北や北陸、中四国九州等では、赤い線グラフが上になっており、転出超過となっていることが目立ちます。

このデータは、技能実習生から特定技能への変更タイミングでの転出転入を取ったものですが、例えば、地方部で技能実習から特定技能に変更後、数カ月勤務した後に都市部の特定技能に変更等の方の人数は含まれていませんが、その傾向が気になるところです。

次に、地域区分別に特定技能人材の出身国の在留数を見てみましょう。

地域区分別国別

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

国籍別地域分布グラフ

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

こちらも興味深いデータに思えます。

日本全体で見るとシェア56.3%でトップのベトナムは、南関東、東海、近畿等、三大都市圏を含む地域でシェアを伸ばし、逆に北海道や四国等の地方部では大きくシェアを減らしており、傾向として都市部への志向性が強いと言えるかもしれません。

シェア2位のインドネシアは、ベトナムの逆に、北海道や四国でシェアを伸ばしています。

3位のフィリピンは、中国四国でシェアを伸ばしていることが特徴的です。この理由として考えられるのは、フィリピンは上述の通り造船舶用分野で半数以上のシェアを取っていますが、下に記載の通り、造船舶用分野の特定技能人材は中国、四国に集中しており、その影響もあると思われます。

下記が、分野毎に纏めたものとなっています。この表を見ると、全体の傾向と各分野で全く相関が無い分野も多く、特定技能人材の活用を考える際には注目するべきデータと言えるかと思います。地域区分別分野別1-1

地域区分別分野別2-1

              (法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

それぞれの分野毎を見てみると、介護分野では極端な特徴がありませんが、南関東、近畿と言った都市圏で在留シェアが高まっており、比較的都市部に集まりやすい傾向が見えます。これは、介護分野では、技能実習の歴史が浅く、技能実習生から同じ会社で特定技能に変更したというケースが少ない為、留学生などの他在留資格からの変更か、又は、他分野(職種・作業)の技能実習生からの変更が多くなり、比較的賃金水準の高い都市圏での就業が多くなったのではないかと推測出来ます。

ビルクリーニング分野では、極端に首都圏のある南関東での在留シェアが高くなっており、特徴的な分布です。

製造3分野では、製造業が集中する東海のシェアが高まり、次いで近畿の在留数が多くなっています。これは、製造業は特定技能の技能評価試験の難易度が高く、多くが技能実習生として製造業で働いていた方からの在留資格変更となっており、介護とは逆に技能実習生から同じ会社で引き続き就業している方が多いのではないかと考えられます。

続いて建設分野では南関東での在留シェアが高まっています。建設分野は、製造3分野以上に、技能評価試験の実施が他分野よりも遅れていた為、ほとんどの方が技能実習生からの資格変更となっていますが、一方で、技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議での出入国在留管理庁の資料を見ると、技能実習生と特定技能人材での給与GAPが最も大きくなっています。その為、地方で技能実習生をしていた方と、都市部での特定技能人材の給与水準が大きくなっており、結果的に都市部である南関東に在留が偏っているものと思われます。

造船・舶用分野は中国と四国の2つで約80%のシェアを占めており、瀬戸内海沿岸に人材が集中していることが分かります。

自動車整備分野は全体数が多くないですが、特定技能全体の在留シェアと大きく乖離がありません。

航空分野は80%が南関東となっており、これは分野特有の事情でしょう。宿泊分野も全体の在留分布と大きな乖離がありません。

農業と漁業は特徴的で、農業は北関東・甲信、九州のシェアが高くなっており、漁業では北海道、中国地方のシェアが高くなっています。この辺りは当然分野の事情で地方の方が仕事が多くなっていることと相関していると思われます。

飲食料品製造業分野は、分野の在留数が多いこともあり、シェアを見ても特定技能全体と近似していると言えます。

最後の外食分野では、46.6%が南関東となっており、3大都市圏を含む近畿東海と合わせて75%程度、4名のうち3名が在留している状況です。この分野等は都市部偏重の傾向がある分野であると言えるでしょう。

特定技能外国人の資格取得ルートの分析

資格取得ルートのシェア推移

次に、特定技能外国人が特定技能資格を取得した際のルート推移を見てみましょう。

特定技能資格を取得する為の要件を満たすためには、現在5つのルートがありますが、大きく、試験ルート(試験を合格するルート)、技能実習ルート(技能実習生を優良に満了してから変更するルート)、その他ルートの3つに分けて半年毎の推移を表したのが下記の図です。「技能実習ルート」は、3年または5年間、技能実習を良好に修了した人材が、技能実習での職種や作業内容と、特定技能の職種が一致する場合に、試験を受けずに移行できるという制度を活用して、移行した方の在留数となっています。例えば、建設業で実習していた技能実習生が、介護の特定技能評価試験に合格し、介護の特定技能に在留資格を変更(取得)した場合、「試験ルート」での在留となる訳です。

ルート別推移-1

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

2020年12月には技能実習ルートが85%を超えていましたが、2023年6月では約70.0%と半年毎にシェアを減少させ、その分試験を受けて変更した方が増えていることが分かります。

この推移を考える際に注意が必要なことは、技能実習ルートというのは元技能実習生が特定技能に変更した総数を表しているのではなく、試験ルートで資格を取得した方の中にも元技能実習生が含まれていることです。技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の資料によれば、特定技能に在留している方のうち、約85%の方が過去に技能実習生を経験していますので、2023年6月の在留シェアで考えると、技能実習生経験者(約85%)- 技能実習ルート在留者(70.0%)= 約15%が、 過去に技能実習生で、試験を受けて他分野(または、同一分野内で違う職種)の特定技能となった数値と推測することが出来ます。

つまり、2022年12月末、試験ルートの29.8%のうち、約15%と半数の方が、元技能実習生の方が試験を受けて技能実習と別分野での就労をしているということが推測出来ます。

このことからも、特定技能制度を考えて行くことや、上手に活用していくためには、技能実習制度や、技能実習生の方のことをよく理解する必要があると言えるでしょう。

特定技能外国人 分野別資格取得ルート

次に、特定技能の分野別にどのようなルートで要件を満たして資格を取得したのかを見てみましょう。分野別ルート別正しい

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

資格取得ルートの傾向は、分野毎に大きく異なっているのが分かります。

その為、特定技能を上手に活用しようとする際には、自社の仕事がどの分野に属するのかによって、どのように人材を確保して行くのかを検討して行く必要があるでしょう。

私は以前より、特定技能を大きく3つのグループに分類して考えるべきというお話をセミナー等でお話させて頂いてきました。具体的には、下記の3つのグループです。

図36

各グループについて簡単にご説明すると、

「通常グループ」は、技能実習ルート、試験ルート双方の選択肢が現実的に考えられるグループです。このグループは、様々な選択肢が考えられ、技能実習生を自社で雇用して、その技能実習生の期間延長として特定技能制度を活用するという方法もあり、また、技能実習ルートや試験ルート、その他のルートからの変更も大いに可能性があるグループです。

後述しますが、介護や農業、飲食料品製造業では、技能評価試験の開催も多く、合格者も多い為、色々な人材募集の選択肢があります。資格の変更ルートによって人材の傾向も変わる為、このグループでは、自社で採用したい人材のペルソナ想定と採用するべき資格変更ルートを事前に考えて行くべきでしょう。

「技能実習ルート特化グループ」は、現在のところ、特定技能評価試験の開催が少ないかまたは、難易度が高く、現実的に元技能実習生であった人材を技能実習ルートで採用することが多くなる分野であると思います。

建設業では従来より特定技能評価試験の実施が国内、国外共に進んでいなかったことが、この傾向の原因でしょう。

分野内で19の区分に分類されていたものが昨年、3つの区分に集約され、より技能実習生の方が特定技能に変更しやすくなったと共に、試験の実施ペースも上がってきましたが、弊社に問い合わせのある人材の多くは、元々建設業で他の職種を経験してた技能実習生の方が、自分の経験してない他の区分の建設業に転職する為に試験を受けているケースが多いようです。(例 建設機械施工を経験した技能実習生が、ライフライン設備の試験を受ける)

また、製造3分野は従来より技能評価試験を実施してきましたが、特定技能分野の中でもダントツで難易度が高く、試験合格者の数が試験実施数の割りに増えていない傾向があります。

その為、この2分野については、新規に特定技能に変更する方は、元技能実習生の方が大半と言うことになります。

「試験ルート特化グループ」は、航空、宿泊、外食の3分野ですが、航空、宿泊は特定技能の在留数が少ない2分野となっています。

特に航空は全分野の中で、技能実習ルートでの在留数が無い唯一の分野となっており、かなり特徴的です。

宿泊分野は、試験実施が多いものの在留数が伸び悩んでいます。この理由は、1つには賃金面が考えられます。こちらも技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の資料によれば、分野毎の平均賃金の中で宿泊分野が一番低い平均金額となっており、そのことが理由なのか在留数が進んでいません。

残る外食分野は、他の2つの分野とは違い、在留数は一定の数となっています。

元々外食分野においては、「医療・福祉施設給食製造」で技能実習を優良に修了した人材のみに技能実習ルートでの特定技能変更が認められており、医療・福祉施設給食製造が比較的新しい技能実習職種であったことから、技能実習ルートが少ないことは当然ではあります。

外食分野は、留学生の方のアルバイト先となっていたり、技能実習生が試験を受けて特定技能として転職したい希望があるなど技能評価試験の受験者と・格者数も多く、今後在留数の拡大に期待が出来ます。

特定技能外国人 地域区分別資格取得ルート

次に、地域区分別の資格取得ルートを見てみましょう。

こちらも総務省統計局の規定する地域区分で分類しています。地域別ルート別

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

都市圏である南関東や近畿で試験ルートで特定技能になった割合が多いのは想像が出来るのですが、北海道や九州でも試験ルートでの割合が多くなっており、これは面白い傾向であると言えます。

これまで長らく、コロナウィルス蔓延により海外での試験合格者が入国できず、試験合格者のうち多くは国内試験の合格者が多数でしたが、海外の試験に合格した方の入国が進んで行くことで、傾向が大きく変わってきたと感じています。

特定技能の試験合格者数の分析

特定技能技能評価試験受験者 合格者数

特定技能の技能評価試験には、どの程度の人材が評価試験を受験し、合格しているのかを見てみましょう。

下記の表は2022年12月末までの数値で、やはり技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議の資料から数値を参照しています。図12

(技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議資料を元にリフト株式会社で作成)

こちらを見ると、12分野合計で、累計211,495人が試験を受験し、実に145,948人が合格しています。

当然、1名が複数の分野を受験し、合格しているケースもありますので、あくまでも延べ人数ということにはなりますが、かなりインパクトのある数値です。

分野別を見てみると、介護の合格者が約43,000人となり、飲食料品製造業、農業、外食が続くということになっています。

その他に、目を引くところでは、製造3分野の試験合格率が圧倒的に低いことが目立ちます。この3分野は、コロナ禍における帰国困難の特定活動12ヵ月在留資格においても、元々製造3分野と同職種の技能実習生だけに資格変更を認めていたことや、特定技能受入れの要件となる協議会加入の難易度が格段に高い等、他分野と大きな違いがあります。この分野で受入れを検討される際には事前に注意が必要です。

また、農業分野は国内試験と海外試験で、受験者・合格者が共に同程度となっており、積極的に国内外で試験実施をしています。既に技能実習生でも多くの方が農業分野で働かれてきた歴史がある分野ですが、今後、試験実施やルート別の在留数がどのように推移して行くのか注目して行きたいと思います。

農業分野に限らず、海外での特定技能試験実施と合格者が増えて行く中で、新しく海外から外国人材を受け入れる際に、受け入れ企業としては、技能実習生として受け入れるのか、また、特定技能として受け入れるのか選択肢が増えることになります。

勿論、違う目的の制度ではありますが、両制度の特徴をしっかりと把握した上で、自社に合った選択をして行くことが必要でしょう。

特定技能技能評価試験合格者数からの資格取得率

更に、この合格者から一体どの程度の方が実際に特定技能資格を取得しているのかを見てみましょう。

図37

(法務省並びに、各試験実施団体の公表を基にリフト株式会社で作成)

特定技能試験に合格した方は、上述の通り全分野で145,948人となっている一方、2022年12月末までに試験ルートで特定技能在留資格を取得した方は34,078人です。単純に試験合格者から資格を取得した方の割合を出すと23.3%となります。この数値は統計公表毎に改善されているものの、折角準備をして試験に合格しても10名に2名強の割合でしか資格を取得していないというのは何とももどかしく感じてしまいます。

コロナ禍の影響で海外からの入国が制限されたことで、海外で試験に合格した方が入国できないという影響を考慮に入れても、試験合格からの資格取得率が低いことは、今後の特定技能制度をより活用して行くことを考える際には非常に重要です。

この理由については幾つか考えられますが、私が思いつくものを上げると、

  1. 試験に合格したものの人材が企業を見つけられない/企業が人材に求人情報を届けられていない
  2. 1人の人材が多くの分野で試験に合格しており、試験を受けている実数はもっと少ない
  3. 企業の内定が出ており現在申請中である
  4. 試験に合格しても、特定技能資格の取得を希望しない

等で、単一の理由が原因ではなく、全てが影響して、結果的に試験合格者と資格を取得して在留している方の数字が乖離しているのだと思います。

弊社の経験としては特に留学生の方で、在留回数の制限や家族滞在の可否などで、試験には合格したものの特定技能資格への変更はしないという方が多くいるように思います。

特定技能に資格変更する割合が一番多い技能実習制度においては、制度上「求人情報の流通」が、監理団体⇒送り出し機関という極めて限られたルートで行われています。

その為、技能実習生の採用経験がある企業側や、また、支援する登録支援機関も監理団体を兼ねている機関は、特定技能を技能実習生の延長線で考えているようなところがあり、その技能実習生の経験から派生した感覚と、制度の活用が進む中での特定技能の新しい感覚にGAPが存在するように思えます。

今後、特定技能に関する求人情報は流通市場の整備が進んで行きます。既に幾つかのサービスやプラットフォームが立ち上がっており、SNS上でも各国語で特定技能の情報や、転職の成功事例、求人情報等が行きかっています。人材側の特定技能制度への感覚は、技能実習制度への感覚とはどんどん変わって行きます。

その中で、企業側や支援する側が特定技能制度を上手く活用して行く為には、過去の成功体験である「技能実習感覚」を特定技能活用に向けてアップデートすることが重要に思えます。

特定技能外国人 性別年齢別分布

最後に、分野毎の特定技能在留者の性別と年齢分布の比率を見てみたいと思います。

まず性別ですが、特定技能全体では、男性が54.3%、女性が45.7%となっています。

当然ですが、分野毎のバラつきがあり、製造、建設、造船舶用、自動車整備、航空、漁業と言った分野では圧倒的に男性比率が高くなっている一方、介護、ビルクリーニング、飲食料品製造等では女性比率が高まっています。

男女別比率

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

次に、年齢分布が下のようになっています。

29歳以下の若い層が多い分野は、外食、漁業、宿泊、飲食料品製造の順になっています。

一方で、造船舶用と建設業では30代が最多となっており、造船舶用では40代も15%弱と少なくありません。この辺りは、海外から試験に合格して直接特定技能として来日する方が増えると傾向が変わる可能性もありますが、新規に採用を検討される企業様で、候補となる人材像を想定する際には参考になる数値化と思います。

分野別年齢層-1

(法務省公表数字を基にリフト株式会社で作成)

最後に 特定技能制度活用のために考えるべきポイントは?

ここまで法務省から公表される統計を元に特定技能制度を考えて来ましたが、最後に私が考える制度活用の為の再度のポイントを幾つか書かせて頂きたいと思います。

①「自社が採用するべき外国人材の期待値を明確にして、採用方法を考えること」

当然ながら、特定技能は、外国人材採用・日本人採用も含めて企業様の採用戦略の中で、1つの選択肢でしかありません。その中でも、就労が可能な職種やプレイヤ―となる人材が重なっている技能実習制度との比較は常に考えるべき内容になります。

ですが、技能実習生と特定技能人材を区別して考えられていない企業様や監理団体、登録支援機関の方もまだいらっしゃるのではないでしょうか?

隣接資格となる技能実習と特定技能ですが、制度の違いだけではなく、統計的な公表から見える平均賃金の差額、人材の志向性等により、両制度を活用する際に、採用を想定される人材像は大きく異なります。

自社が採用したい(するべき)人材の、日本語能力や仕事経験、想定される賃金等を明確にすることで、技能実習制度を活用するべきか、特定技能制度を活用するべきかがより明確に整理出来、採用の効率や定着率のアップに期待が出来るものと思われます。

企業様が外国人材の採用を検討する際に、考えるべき特定技能制度と技能実習制度の違いについては別途記事を書きたいと思います。

②「特定技能人材のキャリアパスを社内で整えること」

既に特定技能2号が設定されている建設分野、造船舶用分野、また在留資格「介護」への変更が可能な介護分野以外の分野でも、特定技能2号の開始が決定され、現在(2023年10月)も継続されている技能実習制度及び特定技能制度の在り方に関する有識者会議等、制度の改訂は今後進んで行くと思われます

有識者会議資料によれば、特定技能人材の多くが、仕事を選ぶ際に、給与と長期間働けることを重視しており、自社で就労中の特定技能人材にとって、長く働く中で、どのようなキャリアパス=どのように仕事の幅が広がり、給与がどのように上がるのか?を明確にすることは、これまで以上に重要です。

特定技能制度開始前の技能実習制度では、3年または5年後の帰国が前提であり、受け入れる実習実施機関にとって、人材のキャリアパスを整えるという必要性は希薄だったかと思います。

しかし、技能実習生として来日する人材の多くが、特定技能制度について知識を持ち、また、情報が流通している中では、特定技能人材の採用や定着だけではなく、技能実習生の採用面接の際から人材が特定技能に変更した後のことを想定して、担当する仕事や給与形態等を準備するべきと感じます。

最後に

冒頭でも述べていますが、「特定技能制度」は、「初めて人手不足を理由として外国人材の活用が可能になった」という意味で、我が国の制度上、画期的な内容です。

この制度がどのように活用されていくのかは、単に各企業、各分野のことだけではなく、今後の日本の国作りに係る大きな流れとなります。

しかし、国政選挙でも、ほとんどこの話題が論点となることなく、各報道機関の調査結果を見ても投票先を選ぶ際の関心事になっていません。

周知のとおり、日本は世界で最も高齢化が進み、且つてどの国も経験したことが無い、人口自然減社会を迎えます。一方で、G7各国との比較で見ても、総労働者に占める外国人材=外国人労働者の割合は極端に少ないままです。

外国人材を迎える/迎えない、増やす/増やさないに関わらず、これから日本社会がどのような人口構成、社会構成であるべきかは、国の主権者である我々日本国民にとって最大のテーマであると言えます。

しかし、残念ながらこのテーマに対して国民的な議論は進んでおらず、課題意識すら持たれていないのが現状です。

また、議論をする為の基礎的な情報が、国民全体に足りていないとも思えます。

その為、多くの意見がエピソードベースの感情論となり、また、合理的な論拠ではなく、時にはイデオロギー的な結論ありきのものも多いように見受けられます。

考えなければいけないのは、この状況は日本だけのものではなく、韓国、台湾、中国と言った東アジア諸国も同じように人口自然減社会に突入し、多くの人材送り出し国にとって、日本は唯一の選択肢ではありません。経済成長の推移を考えると、年を経る毎に日本で働きに来るインセンティブは減少して行く可能性が高いと言えます。

すなわち、外国人材を積極的に受け入れて行くという選択肢を取る場合には、国単位であっても、企業単位であっても、どちらにせよ、年々難易度が高くなって行くということです。

本来の就労目的の在留資格とは別に、産業界、経済界の要請、つまり市場の原理で技能実習制度、特定技能制度と現場で働く外国人労働者の受入れは進んできました。技能実習生、特定技能人材と別に、多くの留学生が、資格外活動=アルバイトという形で今も日本の社会を労働力として支えてくれているのが現状です。

人口が減少する社会に対してどのように向き合うべきか?という我が国の大命題に、国民的な関心や議論が無く、なし崩し的に進んでいる現状は、あまり健全な状況ではないと考えられます。。

是非、特定技能制度をきっかけとして、今後の外国人材の受入れに関する議論が進み、多くの方が真剣に考えて頂くことを願ってやみません。

本記事が、特定技能の活用だけではなく、その為の一助になれば幸いです。

 

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