• リフト株式会社
    • 代表取締役
    • 杉村哲人

    『特定技能在留外国人数』の法務省公表数字から見る「特定技能」の現状

    目次

    最近、多くの読者様から、

    「特定技能って言葉はよく聞くけど、実際に働いている人を見たことがない」

    「特定技能の活用は一体どこまで進んでいるの?」

    という声を多くいただきます。

    特定技能の現状については、読者様のそれぞれのお立場によって色々な感想をお持ちのことと思いますが、現在の状況を俯瞰的に見てみることで見えてくる内容もあるかと思います。

    そこで今回は、務省から発表される特定技能在留外国人数の公表数字を、いくつかの視点で見て行くことで現状の把握と、リフト株式会社が日々外国人雇用に取り組む中で得られた情報や実感を元に、特定技能の今後の活用法についての考察を試みたいと思います。

    ※ 法務省の特定技能在留外国人数の公表数字について詳しくご確認されたい方は、こちらのページをご確認下さい。

    ※ また、以下の記事の中で、特に注釈が無い場合は「特定技能在留外国人数の公表」2019年12月末の数字を根拠としています。また、特段の記載が無ければ、「特定技能」は「特定技能1号」を指しておりますので、あらかじめご了承ください。

    特定技能の在留、許可状況はどうなっているのか?

    まずは、2019年末に「特定技能」で在留している外国人数は14分野全て合計して1,621人となっています。これは、特定技能の制度が創設された際に、初年度(2019年度)の受入想定最大値47,550人から考えると進捗率は約3.4%となります。初年度で制度の運用がスムーズにいかなかった事情があるのにせよ、年度の4分の3が経過した12月末で3.4%の進捗率ということは、行政が想定していたよりも特定技能制度の活用が進んでいないということが言えると思います。

    また、特定技能の在留の前提となる各種の申請の許可状況についても、出入国在留管理庁から同じ2019年12月末の速報値が出されており、

    「在留資格認定証明書交付」が1,139

    「在留資格変更許可」が1,062

    「特例措置特定活動許可」が857

    で、合計3,058人分の交付または許可が出ています。

    ご存じない方の為に上記の違いについて少しご説明をすると、「在留資格認定証明書交付」は、現在在留資格を持っていない外国人(≒現在外国にいらっしゃる外国人 一部例外もあります)の方の申請に対する許可という認識で大きく間違いはありません。(正しくは、許可とイコールではないのですが、本記事の本旨とは離れますので詳細の説明は省略させて頂きます。)

    現在外国にいらっしゃる外国人の方は特定技能の場合、2つのパターンが考えられ、1つは元技能実習生の方、もう1つは外国で行われた技能評価試験を合格した方となるかと思います。

    「在留資格変更許可」は、現在別の在留資格で国内に在留している外国人の方の、特定技能在留資格への変更許可とお考え頂ければと思います。色々な在留資格からの変更が考えられますが、一番のボリュームゾーンは「留学」からの変更であると考えられます。

    最後の「特例措置『特定活動』」は、2019年4月から9月末までに技能実習の在留期間が満了する方の為に設けられた特例措置で、特定技能に変更予定の技能実習生の方が対象です。国内にいた技能実習生のうち、同じ企業で引き続き同じ分野、職種の特定技能への移行を希望した方だけが対象となっています。

    この3つを合計した3,058人には既に在留している1,621人の方や、何らかの理由でまだ受け取っていない未交付の方も含まれていますが、数字が2019年12月末のものであることを考えていると、記事を書いている2月末では、この3,058人に近い数値の方が実際に特定技能として在留されているものと思われます。

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    ※ 法務省公表数字よりリフト株式会社で作成

    また、特定技能制度の運営に係る登録支援機関についても数字が出ており、こちらは法務省ホームページ上に2020年2月14日時点で、3,808件の登録があります。2019年12月末の登録が3,451件でしたので、2020年の1ヵ月半の間に約350件の登録が行われたことになります。現在では、特定技能の外国人在留数より、登録支援機関の方が多いという状況です。登録支援機関になったものの開店休業状態で、いざ支援となってもなかなか要領が分からず、弊社宛にご相談に来られる登録支援機関の方もいらっしゃいます。特定技能外国人に対する支援業務は、当初の予想よりもかなり書類や工数が膨大になっており、これから支援業務を委託される企業様には、登録支援機関の支援実績等も確認されると良いかと思われます。

    特定技能の在留外国人の出身国はどうなっているのか?

    では、昨年末の特定技能外国人の方の出身国はどうなっているでしょうか?

    特定技能在留外国人国籍・地域

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    ※ 法務省公表数字よりリフト株式会社で作成

    出身国では、ベトナムが圧倒的になっており、特定技能人材の55.6%がベトナム人人材と、半数以上を占めています。次が、インドネシア、フィリピン、ミャンマー、中国、カンボジア、タイと続いています。実は、この出身上位7か国は、技能実習生の出身国籍の上位7か国と同一です。

    外国人技能実習機構が発表した平成30年度技能自習計画認定件数(2019年3月)を元に技能実習生の出身国と、特定技能外国人の出身国のランキングを比較した表が下記になります。

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    ※ 法務省公表数字、外国人技能実習機構統計公表数字よりリフト株式会社で作成

    特定技能が、技能実習資格から一部移行可能な資格であることから、2つの資格の出身国が同じような分布になることは当然ですが、興味深いのは、やはり技能実習生でもベトナムが同じように半数を超えるシェアを獲得していることと、技能実習生で23.1%を占めている中国が特定技能では6.2%とシェア率で4分の1程度になっていることです。

    技能実習制度では、前身の研修時代から長く中国が圧倒的に出身国のシェア1位を占めていましたが、数年前にベトナムに1位を譲ってから、受入人数もシェアも下落の一途を辿っています。

    後述しますが、特定技能においては、現状、「介護」「宿泊」「外食」以外の分野では、ほぼ100%が技能実習生から試験免除で特定技能の在留資格を取得、または変更した方で占められています。技能評価試験を受けて合格した方の試験ルートが今後整備されるにせよ、元技能実習生が多数存在する国は、これから特定技能の候補となる人材が多い国ということになります。

    当然、技能実習生の出身国でシェア1位と2位を占めているベトナム、中国は有力な受入候補国ということになりますが、ここで問題となってくるのは、この2国と日本との間で2020年2月18日現在、特定技能に関する二国間の協力覚書(MOC)が未締結になっていることです。このため、例えば、ベトナムに帰国してしまった技能実習生を国内に再度呼び戻したいとして、日本国内の手続きが進んだとしても、ベトナムを出国できない(出国できるかは分からない)状況です。また、特定技能における14分野の各技能評価試験は分野毎に国内や各国で行われていますが、ベトナム、中国においてはMOCが進んでいないこともあるのか、どの分野においても正式な試験の開催予定がありません。

    特にベトナムにおいては、現地の取引先からも過去に何度も試験開始が決定したというお話を聞きましたが、全て噂だったのか、はたまた未定の段階で流れてしまったのか、いまだ確定情報が試験実施機関から出されていないのが現状です。

    外国人採用業界においては、過去にも確定情報が出ないうちから日本企業や仲介会社が勇み足で動いてしまい、ベトナムを初めとした現地国で人材募集に動き、結果人材を待たせてしまったり、評判を落としてしまったりすることが繰り返されてきた歴史があります。ベトナム、中国の二か国は技能実習ルートにおいて、上述の通り非常に重要な国ですので、焦る気持ちになることもあるかと思いますが、勇み足になって結果として現地国パートナーに迷惑をかけたり、自社の評判を落とすことは避けたいところです。

    ただ、逆に考えれば、制度が未整備の段階でも、多くの方が特定技能として在留しているベトナムや中国は、これから制度が整うにつれますますシェアを伸ばしていくということになります。

    国内に在留している外国人人材の変更はともかく、国外から特定技外国人を採用しようとする場合には、現地国の状況や動向をタイムリーに確認していくことがとても重要となります。弊社でも最新情報が入り次第、こちらで発信して行く予定ですので、是非ご確認を頂けましたら幸いです。

    特定技能の在留外国人の都道府県分布はどうなっている?

    次に特定技能在留外国人の都道府県分布を見て行きます。

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    ※ 法務省公表数字よりリフト株式会社で作成

    上記は都道府県毎の特定技能在留外国人数になりますが、県毎だと細かすぎて傾向も掴みにくい為、こちらを地域毎に分類して、出身国と同様に技能実習生の分布と比較してみましょう。

    尚、地域区分については、総務省統計局の地域区分と同様の区分を採用しています。

    https://www.stat.go.jp/data/shugyou/1997/3-1.html

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    ※ 法務省公表数字、外国人技能実習機構統計公表数字よりリフト株式会社で作成

    こちらを見て行くと、おおよそ技能実習生の地域別と相関関係が見て取れます。

    その中で、特に目立つのは南関東地域が、特定技能においては大きくシェアを伸ばしているところです。南関東地域において特定技能での在留数シェアが伸びているのはいくつかの要因が考えられますが、中でも、特定技能分野において技能実習からの移行が現状まだない「外食」分野において都市部の在留が突出しています。特定技能の外食分野だけに絞って在留地域を見て行くと、下記の通り2019年12月末で60%の人材が首都圏を含む南関東地域に在留していることが分かります。また、大阪や京都を含む近畿地域もシェアを取っています。

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    ※ 法務省公表数字よりリフト株式会社で作成

    特定技能分野のうち、上記の「外食」と「宿泊」については、2019年12月末の時点で技能実習生ルートでの資格取得が無く、全員が試験ルートの特定技能人材となっています。外食分野についてはフィリピン、カンボジアで既に技能評価試験が実施されていますが、国内での試験がメインとなっています。また、国内で試験を受験した方の在留資格についての統計は確認できませんが、ヒアリングベースでは留学生が大半で、留学生時代からアルバイトとして外食産業で働かれていた方が、アルバイト先や同じ外食業での就職を考慮して受験されているようです。

    そこで、今後外食分野や宿泊分野の特定技能人材の活用を考えて行くと、留学生の地域別分布も把握しておきたいところです。

    2019年6月末までの統計を見ると、日本国内に留学生の方は約33万7千人在留しています。

    同じ総務省の地域区分別在留分布は下記の通りです。

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    ※ 法務省公表数字よりリフト株式会社で作成

    こちらを見ると、首都圏である南関東地域で50%以上を占め、3大都市圏である東海、近畿、アジアに近い九州までを加えると、85%を超えています。

    弊社でも年間多くの外国人留学生が就職相談に訪れますが、外国人留学生にとって仕事を選択する際の条件として、勤務地へのこだわりは、日本人人材よりも強い傾向にあります。やはり自分が住み慣れており、友人が多い町に住みたいという希望です。また、都市部への憧れは日本人と同様に強い傾向があります。

    これを踏まえると、試験ルートがメインとなる外食、宿泊分野においては、留学生の多い地域、都道府県の企業では、国内で試験を受けた留学生の採用候補が多くいることが期待出来る一方、そもそも留学生の少ない地域では、特定技能外国人人材の採用はハードルが高く、国外での試験ルートも視野に入れて考えることが必要と言えます。

    また、都市部に比べても採用環境の厳しい地方部で特定技能外国人をいかに確保して行くかという問題が懸念されます。特定技能に先行している技能実習では、募集時点で条件面は各都道府県の最低賃金に近い条件になるケースがこれまでのところ大半ですが、近年ではベトナム等の技能実習生を多く輩出している国で、都道府県毎の募集条件の格差が目立ち、最低賃金が安い都道府県の募集は不人気だという話が送り出し機関の方からよく聞くようになっています。

    まして、技能実習生として3年間日本に滞在してから特定技能に変更して行こうという人材はある程度日本の事情も分かり、また、給料などの情報もSNSを通じて人材同士でやり取りをしています。技能実習を3年終えて特定技能として働き続ける場合に、元の企業や地域での仕事を選ばずに、同じ仕事でもより給料が高い都会の職場を探すのは、ある意味当然の流れで、この傾向はなかなか止めることが出来ないと言えます。特定技能制度の創設時には、都市部に人材が集まらないように配慮する旨の報道もありましたが、実際の運用でどのような形になるのかはまだ不透明です。

    地方の企業が特定技能人材を中長期的に確保するためには?

    こういった状況で地方の企業様が特定技能人材を中長期的に確保する為には、自社が外国人人材にとって魅力的に見える為の環境整備が重要になります。

    短期的に効果が上がると思われるのは、社員寮、住宅手当等、住宅に関する支援制度です。

    例えば首都圏に住む日本人では手取り給与の3分の1が家賃の支払いというケースはそんなに珍しくはないと思いますが、外国人の方にとっては手取り給与の3分の1を家賃の支払いに充てるというのは、日本人が思っている以上に抵抗があるようです。その為、特定技能以外の在留資格で就職相談に訪れる外国人人材でも、住宅に関する補助や手当があるかどうかを気にする傾向が強くあります。地方では首都圏に比べて住宅にかかるコストが低くなると思われますが、住宅に関する条件を優遇することで、外国人人材にとってより魅力のある就業条件を提示することが可能になると思います。

    また、中長期の採用を考えて行くと効果的なのは、社内にブリッジ人材やマネメント人材を採用、育成して行くことです。例えば、ベトナム人の特定技能人材を活用して行くことを計画するならば、ベトナム人の幹部候補人材を同時、または先行して採用することで、何かあった際に母国語で相談出来る体制がある企業ということで、外国人人材にとって応募する動機を高めていくことが可能です。

    外国人人材との就職に関する相談でも、同じ国の先輩社員で活躍している方がいるかどうかは、企業の求人を検討する際に大きなファクターになります。求人情報でもアピール出来る可能性も高く、中長期的な戦略とはなりますが、是非ご検討頂ければと思います。

    また、企業様の業種や想定される仕事の内容にもよりますが、そもそも初めから特定技能人材として採用するのではなく、技能実習生から採用して3年間の技能実習終了後に特定技能への移行を目指すということも、勿論一つの選択肢になると思います。

    特定技能の在留外国人のルート分布はどうなっている?

    最後に特定技能在留外国人がどのルートを経て特定技能資格を取得したのかを見て行きます。

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    ※ 法務省公表数字よりリフト株式会社で作成

    全体で1,621人の特定技能人材に対して、約91.7%、1,486人が元技能実習生という状況です。また、分野別にみると綺麗に分布が分かれ、技能実習からの移行が難しい「宿泊」「外食」、また、技能実習の移行対象職に追加されてまだ日が浅い「介護」「航空」は技能実習ルートがゼロという一方、残りの10分野では「自動車整備」で検定ルートが1名ある以外は全てが技能実習ルートという極端な結果となっています。制度スタートから9か月後ということや試験制度がまだまだ整っていないことから、この傾向は薄まっていくものと思いますが、能実習ルートと試験ルートのバランスがどのようになって行くのかは特定技能活用において注意して行きたいところです。

    何故かと言うと、技能実習ルートの割合が多いままということは、特定技能が制度としては別であるものの、事実上、技能実習制度の延長という位置づけになり、企業様として、新しい外国人人材を採用する際にも、まずは技能実習生から採用して、3年の実習を満了した後に、特定技能に移行という流れを考えて行く必要性が高まります。一方、試験ルートを経た特定技能外国人の割合が高まっていくということは、それだけ特定技能の認知が進み、外国人人材が試験を多く受験して、採用市場や転職市場にも特定技能外国人人材が多くなることが予想される為、企業様としても技能実習を経ずに即戦力的に特定技能外国人の採用を検討することがしやすくなります。勿論、どちらか一方に偏るという訳ではなく、地域や分野によっても状況は変わるでしょうし、両面のメリット、デメリットを検討して行く必要がありますが、傾向がどちらに振れるのかはまだしばらく状況を注視して行く必要があります。

    特定技能の在留外国人活用の為に考えるべきポイントは?

    最後に今後の特定技能外国人人材の活用を考えて行く上で私が重要だと考える3つのポイントについて書きたいと思います。

    特定技能外国人活用を考える3つのポイント

    ① 外国人人材がどの程度特定技能を希望するのか?

    ② 受入企業側の業務負担をどの程度軽減できるのか?

    ③ 出入国在留管理庁の意向はどのようになるのか?

    それぞれ詳しく説明します。

    ① 外国人人材がどの程度特定技能を希望するのか?

     2月25日付けの東京新聞さんの記事で、「特定技能」在留資格の取得を望むかどうかのアンケートに対して、アルバイトの留学生を含む外国人労働者を対象とした地元紙12紙の共同調査で、「特定技能在留資格が欲しいですか」というアンケートに対して、305人の回答中、「はい」が43%、「いいえ」が46%という結果が掲載されていました。また、「特定技能への切替を望んでいるか」のアンケートでは、技能実習生では72%が望んでいるという結果に対して、留学生では32%という結果でした。

    こちらはあくまでも国内に在留している外国人人材向けのアンケートですが、概ね私が実務中に感じる肌感覚と一致します。

     つまり、技能実習生にとっては「今現在の在留期間が特定技能に切り替わることで延長される」という意味で歓迎、留学生にとっては更新に制限がなく、家族の滞在も認められており、また、就業できる仕事の分野も幅広く、転職も容易にすることが可能な「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の取得が優先で、特定技能は次善の選択肢となっているということだと読み取ることが出来ます。

     弊社に就職相談に訪れる留学生の中でも、2名が外食の特定技能評価試験を既に合格していましたが、第一志望はいずれも事務や企画、通訳関係の仕事でした。その中の1名は首都圏近郊の私立大学経済学部の4年生で、既に技能実習生監理の仕事の内定を取っていましたが、勤務地が福岡ということで、その内定を辞退するのかは悩んでいるというお話でした。一方で、現在アルバイトしている焼肉店からも正社員にならないかと誘われていることから、特定技能外食の技能評価試験を受験して合格したものの、第一希望としては、首都圏で「技術・人文知識・国際業務」の在留資格が取得出来る仕事を目指して、就職活動を継続していました。 このようなケースは珍しくなく、今後増えてくることになると思います。

     技能実習生に関してもこの数年で、特に中国や、ベトナムといった技能実習生を多く輩出して来た国で希望者が漸減傾向にあるというのは周知の事実ですが、特定技能制度でも、試験ルートか技能実習ルートに関わらず、門戸を開けば外国人人材の希望者が殺到するというのは、実は幻想ということになりかねません。

     自社での特定技能人材活用をお考えになられる場合は、どのように人材募集を行うのかは勿論のこと、その後の定着の為にも、いかに外国人人材にとって働きやすい環境を整えていくのか?を考えて行く必要があると思います。技能実習ルートであれば、これまでの3年間の在留期間だけでなく、特定技能に変更して最大8年、特定技能2号が仮に全分野で開始されれば、無制限の延長が可能になることを考えて、短期的な労働力ではなく、中長期的な会社の戦力であり、いかに会社に定着をさせて行くのかの視点を持つことが重要かと思います。また、試験ルートにおいても、例えば外食分野では、留学生時代からアルバイトしている外国人人材の、特定技能での社員登用ルートを整備する等、短期的ではなく中長期の採用戦略を考えて行かれるべきではないかと思います。

    ② 受入企業側の業務負担をどの程度軽減できるのか?

     こちらの観点は、実際に特定技能人材を採用されている企業様や登録支援機関様にはお分かり頂けると思いますが、特定技能人材の在留資格認定や変更、その後の支援業務はかなりの工数が掛かっています。ほとんど技能実習生の受入れに掛かる手間と変わらないという感覚です。

     また、その手間の掛かる工数を登録支援機関に委託するにしても、結局工数が掛かる以上、真面目に取り組めば一定の金額になってしまい、また、別途協議会や分野毎の期間に支払う費用が発生することなどを考えると、費用面でも技能実習制度の活用と大差がありません。

     こうなってくると、海外から採用を考える場合には、試験を受けてN4を取得しなければ候補者となれない特定技能で最初から受け入れるよりも、技能実習が活用できる職種では、初めは技能実習で受け入れて、3年後に特定技能に変更するという流れの方が企業としても活用しやすいように見えてしまいます。勿論、この流れが悪い訳ではないのでしょうが、本来の制度の目的からは少し外れているのも事実かと思います。

     今後、特定技能の人材を有効に活用して行く為には、支援業務に関わる工数をいかに低減出来るのかは非常に重要なポイントです。これは、勿論出入国在留管理庁の求める基準に係ることですので、勝手な解釈をすることは出来ませんが、既に色々な団体様や企業様が所管官庁である法務省に対して、工数の低減に向けた政策提言等をされているようです。また、支援業務を容易に行うことが出来るようなクラウドサービスも種々開発されています。

     仮に登録支援機関に支援業務を委託するにしても、企業様の負担が減るに越したことはありませんので、出入国在留管理庁の情報や、新しい支援サービス等の情報をこまめに収集されて行かれることをぜひお勧め致します。

    ③ 出入国在留管理庁の意向はどのようになるのか?

    こちらも制度の行方を左右する非常に大きな要素です。

     既にご存知の方も多いかと思いますが、各全国紙が2月頭に既報の通り、出入国在留管理庁では日本への留学を希望する外国人の在留審査を2020年4月以降に厳格化することが決定しています。記事の中では、「特定技能制度の活用を促す狙いもある」というニュアンスの文言が各紙に書かれていました。

     その心は、資格外活動(アルバイト)を通じて、半分就労目的となっている留学生の在留資格を絞り、もし日本での就労を希望する場合には、特定技能の在留資格を取得して貰うことを促すというような意味合いでしょう。

     先行してベトナム、ミャンマー等7か国について留学生の審査が厳格化されており、既に日本語学校等では予定していた学生が資格取得できずに混乱しているというお話は多くの学校さん等から情報として入っていましたが、2020年4月からは更にその対象国が拡大されるということです。

     こちらが今後どのように影響して行くのかは、実際の留学生数等の推移を確認する必要がありますが、より重要なのは、「特定技能制度の活用を促す狙いもある」という出入国在留管理庁の方針の方だと思います。

     上述の通り、現在のところ特定技能資格は、技能実習ルートと密接なつながりがあり、2019年末の特定技能在留者の90%以上が技能実習ルートという現実がありますが、仮に、出入国在留管理庁が更に短期的に特定技能の在留者数を増やすことを考えるならば、技能実習生の申請に対しても何らからの厳格化措置が取られることもないと断言することは出来ないでしょう。

     本来の目的から考えると、そうあるべきではあるのでしょうが、海外で行われている技能評価試験の回数や、N4相当の資格を海外のみの勉強で取得することの難しさを考えると、短期的には技能実習の申請が横滑りで特定技能に流れてくるというのもハードルがあるのですが、中長期的に体制が整備されてくれば十分に有りうることだと思います。

    仮に、そうなった際に企業様として避けたいパターンは、技能実習で採用する計画だった、また、技能実習で申請してしまった、だけど、出入国在留管理庁の方針転換によってその計画や申請が難しくなってしまったというパターンかと思います。

    その為、こちらも前のポイントと同様にこまめに情報を収集し、早目早目に対策を取っていく必要があります。

    技能実習制度を活用するにせよ、特定技能制度を活用するにせよ、海外から人材を採用する際には、通常半年間程度の期間を考える必要があることを考えると、情報収集の遅れで軌道修正が遅れると、半年間に近い期間が無駄になってしまうケースも考えられます。

    制度の性質上、所管官庁の意向は制度活用において最も重要なファクターとなりますので、是非こちらも定期的な情報収集をお勧め致します。

     
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    リフト株式会社 代表取締役

    全国人材支援事業協同組合 理事 

    1979年北海道函館市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2002年東証一部上場の経営コンサルティング会社、株式会社ベンチャー・リンクに入社。 2009年にベンチャー・リンク社退職後、2社の設立に役員として参画した後、2014年技能実習監理団体、全国人材支援事業協同組合理事就任。2015年リフト株式会社設立 代表取締役に就任。 現在、全国人材支援事業協同組合にて外国人技能実習生の監理業務、リフト株式会社にて外国人人材の職業紹介業務、労働者派遣業務、特定技能登録支援機関の運営に携わる。