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    ホテル・旅館は特定技能1号をどう活用すればいい?

    目次

    「特定技能1号の開始で、外国人従業員にも単純労働をお願いできるようになると聞いたんだけどあってる?」

    「技能実習2号も始まったって聞いたけど、特定技能1号との違いってなんなの?」

    そんな疑問にお答えするため、本記事ではホテル・旅館で特定技能外国人を雇用するために知っておきたい基礎知識と実務上の注意点についてご紹介します。

    本記事が少しでもあなたのお役に立てれば幸いです。

    1. 特定技能1号・技能実習2号が成立した背景

    業界関係者のみなさまにはくどいかもしれませんが、それは、ひとえにホテル・旅館が人手不足であることが原因と考えられます。

    宿泊業分野では、有効求人倍率が他産業と比較してかなりの高水準で推移しており、2030年には8万5千人の需給ギャップが予想されています。

    ただ、これは2030年に6000万人のインバウンド受入れとの政府目標に対応し、必要になる部屋数をベースに必要人数を算出したものです。

    本年はコロナウイルスの影響でインバウンド旅行客が激減すると予想されていますが、事態が落ち着けば、また客数は回復すると考えられるため、短期的には雇用の調整が必要でも、中長期的に見ると人材不足な状況は変わらないでしょう。

    1.1 2018年度末の「宿泊業分野」の有効求人倍率は?

    観光庁の資料によると、宿泊業界の有効求人倍率は平均して6.15倍です。

    その内訳は、旅館・ホテルの支配人は2.26倍、飲食物給仕係が7.16倍、旅館。ホテル・乗物接客員4.01倍となっています。

    飲食物給仕係の不足感がすごいですね。

    1.2 人手不足の要因は?

    大きく二つ、インバウンド客数の増加と、サービス業の人気度の低下です。まず一つ目、インバウンド客数の増加について、2011年から2018年の間に訪日客数は約5倍になりました。日本は観光立国すべきだという声もあり、政策としてインバウンド客数の増加に力を入れ、また、中国をはじめとするアジア各国の経済成長もあり、順調に推移してきていました。

    喜ばしいことのようですが、残念ながら、若年層を中心に、不規則勤務、長時間勤務、他産業に比較した際の賃金の低さ、土日祝日の休みが確保できないなどの理由から、サービス業全般を敬遠する動きがあり求人数の増加に対し希望者数が減少してしまっているという状況が発生しています。

    2. 特定技能1号外国人は宿泊業のどんな業務に従事できる?

    以上のように、ひどい需給ギャップに悩まされている宿泊業ですが、特定技能1号外国人はその救世主になるのでしょうか?

    これまで外国人が正社員として就労できるのは基本的に通訳・翻訳やマーケティング、営業などの知識労働に限られていました。以下特定技能1号で具体的に認められる業務とそうでない業務について見ていきましょう。

    2.1 認められる業務 

    特定技能の分野別運用要領には、特定技能外国人は具体的に下記のように定義されています。

    第3 その他、特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項

    1.1号特定技能外国人が従事する業務 宿泊分野において受け入れる1号特定技能外国人が従事する業務は,上記第1の 試験合格により確認された技能を要する宿泊施設におけるフロント,企画・広報, 接客及びレストランサービス等の宿泊サービスの提供に係る業務をいう。  

    出典:特定の分野に係る特定技能外国人受け入れに関する運用要領(宿泊分野の基準について)

    つまり、人手不足がもっとも深刻だった飲食物給仕係に従事することも可能だということです。

    2.2 ベッドメイキングは可能?

    よく、

    「ベッドメイキング業務をお願いすることはできる?」

    という質問をいただきますが、メインではなく、「付随的に」なら従事することが可能です。下記は宿泊業分野における特定技能の分野別運用要領からの抜粋です。

    あわせて,当該業務に従事する日本人が通常従事することとなる関連業務(例: 館内販売,館内備品の点検・交換等)に付随的に従事することは差し支えない。

    出典:特定の分野に係る特定技能外国人受け入れに関する運用要領(宿泊分野の基準について)

    あくまでも、「付随的」であって、メイン業務とすることは許されていませんので注意してください。

    2.3 できない業務・働けない場所は?

    できない業務は風俗営業法第2条第3項に規定する「接待」です。また、簡易宿所及び下宿、ラブホテルでは特定技能外国人を雇用できないです。

    簡易宿所とは、ペンション、民宿、キャンプ場、ゲストハウス等のことです。ラブホテルは、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭 和 23 年法律第 122 号)第 2 条第 6 項第 4 号に規定する施設に該当するため雇用できません。

    3. 外国人が宿泊業分野の特定技能1号を取得するための要件とは?

    大きく日本語水準と技能水準を満たすことの2つが要件です。以下具体的に説明します。

    3.1 日本語レベルN4以上の試験に合格

    日本語水準を満たしている日本語の試験に合格することです。具体的には、日本語能力試験JLPTのN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。

    詳細は下記の記事をご参照くださいませ。

    在留資格「特定技能」の「技能評価試験・日本語試験」とは?

    3.2 宿泊業技能測定試験に合格

    2つ目が宿泊業の技能測定試験に合格することです。宿泊業で必要とされる技能や知識である「フロント業務」「広報・企画業務」「接客業務」「レストランサービス業務」「安全衛生その他基礎知識」の5つのカテゴリーより出題される試験に合格する必要があります。

    2020年3月20日時点の公表分を合算すると、現在技能評価試験合格者は1140人で、合格率は約62%となっています。

    ただ、「留学生が第一志望の企業に入社できなかった場合の保険として受験している。」「手続きに時間がかかっている。」などの理由で、2019年12月末の受入数は15人となっています。

    よくある質問① テキストはどこで入手可能?

    どのように対策してもらえばいいのかというのがよくある質問ですが、実は、テキストは令和2年3月20日現在公開されていません。

    が、過去問題が技能評価試験の実施主体である一般社団法人宿泊業技能試験センターのHPでダウンロードできます。

    一般社団法人宿泊業技能試験センター

    内容としてはほとんど変わらないような試験が実施されると予想されますので、留学生を採用したい宿泊業企業は、こちらの過去問を利用して自社でバイトしている留学生などに勉強してもらうと良いでしょう。

    よくある質問② 技能試験の実施日・実施場所は?

    令和2年3月20日現在は、次の試験の実施日について公表されていません。

    前例を踏襲すると、場所は日本全国各地で行われます。最新情報は一般社団法人宿泊業技能試験センターHPでご確認くださいませ。

    よくある質問③ 海外試験の状況は?

    これまでは、2019年10月27日(日)に一度だけミャンマーにおいて実施されました。

    受験者数は238名、合格者数は85名となっており、合格率は35.7%と非常に低い数字となりました。

    原因としては、技能の内容というより、日本語の習得難易度が高いことにある言われています。現在、各国人材会社が中心となって、試験対策サービス事業を立ち上げようとしています。

    ただ、問題の本質は、

    「半年以上自費で勉強して、試験対策をしてまで日本で働きたい人が少ない。」

    という点にあるのではないか思っています。

    介護業などでは、企業が試験対策の学習費用から渡航費まで全て負担して漸く希望者を集めることができているという状況もあります。

    宿泊業分野の試験については今後の動向を注視していく必要がありそうです。

    3.3 宿泊業分野の2号技能実習を修了すること。

    令和2年2月25日より宿泊業においても2号技能実習が許可されました。

    宿泊業分野の2号技能実習を修了された方の場合には、無試験で特定技能1号へ移行することが可能です。

    今年解禁になりましたので、早くとも、2年後の開始となると予想されています。

    4. 宿泊業企業が特定技能1号外国人を雇うためには?

    大きく、①先述の許可された業務に従事させること、②国土交通省が設置する宿泊業分野に係る特定技能外国人の受入れに関する協議会の構成員であること、③支援を適切に実施することの3つが必要です。

    ②に関して、特定技能外国人を受け入れた日から4ヶ月以内に協議会の構成員になることが義務づけられています。

    また、③に関して、支援を登録支援機関に全部委託する場合には、その登録支援機関が、宿泊業の協議会のメンバーである必要があります。

    よくある質問:協議会の構成員になる方法は?

    協議会の構成員になるには観光庁サイトのHPにある入会届出書式に入会希望の旨記入し、観光庁観光人材政策室に郵送する必要があります。

    5. 特定技能1号外国人が宿泊業企業で働ける期間は?

    結論からいうと、現状のところ5年間です。

    ただ、令和2年2月25日から2号技能実習がホテル・旅館業においても許可されましたので、技能実習と併せれば最長8年間就労が可能となります。

    コロナウイルスで現在はインバウンド客数が大変なことになっていますが、人の移動が再開すれば、また人材不足に対応する必要が出てくるでしょう。

    技能実習生は就労までに半年以上かかる場合が多いので、早めの動き出しをお勧めいたします。

    6. 特定技能1号外国人は宿泊業企業の派遣での受け入れ可能?

    結論からいうとできません。

    特定技能1号に関しては原則直接雇用と定められています。

    7. 特定技能1号外国人の宿泊業企業の受け入れの流れは?

    受け入れにあたっての流れは、大きく下記の4パターンあります。全てにおいて共通するのは、その外国人を適正な支援をするための準備と、協議会への加入です。前者については下記の記事をご覧ください。

    登録支援機関とは?支援は内製化すべき?それとも委託すべき?

    また、後者に関しては先述の通りです。

    それでは4パターンそれぞれについて簡単に説明します。

    7.1 試験に合格した留学生

    まずは技能試験と日本語試験に合格した留学生を雇用する場合です。

    この場合は、本人の内定合意を得たのち、「在留資格変更許可申請」をして、在留許可が降りたら、無事就労開始になります。

    在留資格変更許可申請については下記の記事をご参照ください。

    これだけ抑えれば大丈夫!「在留資格変更・在留期間更新」の手続き

    また、申請に関しては令和2年3月25日よりオンラインでの申請が可能になります。詳細は下記の記事をご参照ください。

    【オンライン在留資格申請】で外国籍人材の労務手続きをもっと楽にしていきましょう!

    7.2 海外試験に合格した方

    海外試験に合格された方は現地の送り出し機関を通して来日されます。

    その際「在留資格認定証明書交付申請」が必要です。本申請については、下記の記事をご参照くださいませ。

    在留資格認定証明書交付申請について企業が知っておくべきこと。外国人の身元保証人になった場合の責任範囲はズバリ!?

    また、現在のところ宿泊業の試験はミャンマーでのみ開催されていますが、ミャンマー人材の送り出しの現状について、ミャンマー送り出し機関のミャンマー・ユニティさんを取材した記事がございますので、ご参照くださいませ。

    ミャンマー最王手送り出し機関最高顧問の北中氏が語る、ポスト・ベトナムがミャンマーでしかありえない理由とは?

    7.3 短期滞在で試験に合格された方 

    令和2年4月1日からは過去に中長期在留者として在留した経験がない方であっても受験を目的として「短期滞在」の在留資格により入国し、受験することが可能となります。

    こちらは一度帰国して合格発表を待ってもらい、合格後に「在留資格認定証明書交付申請」を経ての来日となります。

    「そんな面倒なことしてまで来日してくれる人いるの?」

    私も最初はそう思ったのですが、実際、このスキームを利用して人材を紹介しようとしている各国の人材会社さんから問い合わせをいただいています。

    チャンスがあれば来日したいという方はいらっしゃるようです。

    7.4 2号技能実習からの切り替え

    2号技能実習からの切り替えの場合、「在留資格変更許可申請」が必要となります。

    留学ビザからの切り替えと違い、既に自社で働いている方の変更となりますので、申請のタイミングさえ間違えなければ、変更申請中も引き続き働くことが可能です。

    技能実習2号が許可されたのが本年ですから早くとも2年後からはこの申請が頻繁に行われるようになると考えられます。

    8. 特定技能1号外国人を雇用する場合の費用相場は?

    特定技能1号外国人を雇用するルートによって、費用相場は異なりますが、給与に関しては同職種に従事する日本人と同等以上とされています。

    更に、登録支援機関に支援を委託する場合には支援委託費用が一人あたり年間50万程かかります。

    採用ルートによっても費用は異なりますので、詳しくは下記の記事をご参照くださいませ。

    特定技能外国人を雇用する場合の費用ってどうなってるの?

    9. 宿泊業企業の特定技能1号の活用法とは?

    結論からいうと、2号技能実習からの切り替えがメインの活用法になるのではないかと思います。

    理由は3つあります。

    ①海外試験の合格率が低いこと。

    先述の通り、海外試験の合格率は約35%と非常に低い状況です。

    ミャンマーでは試験合格後でないと企業が面接をしてはいけないルールになったようで、日本に行けるかどうか不安な中、先行投資で勉強することは心理的に非常に厳しいということが大きな要因かと思います。

    ②特定技能1号と技能実習では技能実習の方がハードルが低い。

    技能実習制度を活用する場合には、候補者は試験に合格する必要はありませんし、就労先が決まった状態から安心して学習をスタートします。候補者とすれば学習時間を無駄にするリスクが非常に低い制度になっています。日本に行くという目的の方であれば、よりハードルが低い技能実習を選択する可能性が高いのではないでしょうか。

    ③留学生の採用は難しい。

    2月25日付けの東京新聞さんの「特定技能への切替を望んでいるか」のアンケートでは、技能実習生では72%が望んでいるという結果に対して、留学生では32%という結果になりました。

    実際、私が転職活動中の方や、留学生の求職者の話を聞いていて思うのは、ほとんどの方が「技術・人文知識・国際業務」で就労するホワイトカラーの仕事を望んでいるということと、若い方は、お金よりも、土日祝日、定期的に休みであることを望んでいるということです。就労時間が不規則になるホテル・旅館の求人は留学生及び留学から日本に就労された方にはあまり人気ではありません。

    転職できない」ということを承知で来日する技能実習生を育て、2号修了までの3年間で関係性を築き、特定技能1号に移行して更に5年間就労してもらうというのが、メインの活用法になるのではないでしょうか。

    10. 特定技能1号の求人はどこに出せば良い?

    基本的に登録支援機関や現地送り出し機関へ依頼する形になるかと思いますが、SNSや媒体を利用して直接候補者と繋がるという手もあります。

    例えば、特定技能外国人とFacebookで直接繋がってダイレクトメッセージを送付したり、外国人と直接繋がれる基本料無料の求人媒体を利用したりする方法があります。

    予算、時間、安全性の3つの評価指数によってどうするか決まると思いますので、自社にあった募集ルートを見つけたい方は下記の記事をご参照くださいませ。

    特定技能人材の4つの募集・採用ルートとは?

    11. まとめ

    本記事では宿泊業における特定技能1号の活用法についてご紹介しました。

    コロナウイルスの影響により、当面、雇用は難しいかもしれませんが、アフターコロナを万全の体制で迎えることに、少しでもお役に立てれば幸いです。

     
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    マーケティング部

    福島県内の高校卒業後、東北大学に入学。在学中は硬式野球部に所属。英語学、心理学、英語教育学を専攻。卒業後は社会を構成する『ヒト・モノ・カネ・情報』が遍在することで生じる歪み(社会問題)をビジネスを通して適正化するというミッションに共感しリフト株式会社に入社。現在はマーケティングを担当。