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    好きな技術書で知るエンジニアの判定法③『ゼロから作るDeep Learning』

    目次

    『好きな技術書で知るエンジニア判定法』の第3回目は『ゼロから作るDeep Learning』です。この本のサブタイトルは「――Pythonで学ぶディープラーニングの理論と実装」で、その名の通り簡単なPythonでコードを書いていき、ディープ・ラーニングの基礎を学ぶことができます。

    「ディープ・ラーニング、正直よくわかんないんだよね。」

    「AIエンジンアのレベル感は、文系の自分には理解できないよ。」

    という課題を持っている方に、AIエンジニアと言われる人がどんな技術を学んできたのか、目の前の人材がどのレベルのことをやってきたのかの判断材料を提供できればと思います。

    1. そもそも、人工知能(AI)とは?

    人工知能(Artificial Intelligence)という言葉は1955年にジョン・マッカーシーがダートマス会議の提案書の中で使ったのが始まりとされています。ジョン・マッカーシーはLISPの考案者としても知られ、人工知能の研究を強力に推し進めた方です。

    初期の人工知能(AI)研究の成果は、現在では単なるプログラミング上の技巧とされ、*アルゴリズムと呼ばれています。当時のコンピュータや計算機の歴史的背景を踏まえれば、一度プログラマがコンピュータに教えた計算方法を毎回入力せずに何度も行ってくれるというだけでそこに人工的な知性を感じたのでしょう。1960年代前半といえば、電子式卓上計算機が自動車1台分ぐらいの価格だった時代ですので無理からぬことです。

    このように、人工知能という言葉は流動的なもので、コンピュータで何か新しいことが実現できるようになると、人々はまるでそこに知能があるかのように感じ、人工知能と呼んできました。

    そう考えると、人工知能とは、従来の技術では達成できなかったことを新しくできるようにしていく研究分野とその成果物に対する名前だと解釈することもできます。例えば、80~90年代に「AI付きエアコン」「AI付き冷蔵庫」「AIラジオ」など有象無象の電子機器が開発されましたが、今ではその程度の機能をAIと呼称することは稀でしょう。現在AIの筆頭とされる自然言語処理、画像認識も10年後にはAIではなく、単なるアルゴリズムやフレームワークとして扱われ、専門的なAIエンジニアでなくても、気軽に利用できるようになっていると言われています。

    ※アルゴリズムとは、コンピュータが計算する手順のこと。

    2. ディープ・ラーニングとは?

    人工知能は非常に曖昧で流動的な言葉なので、学問分野としては「機械学習」と呼称されることが多いです。人工知能が、営業マンのセールストークや、生命思想などの哲学や社会学の一分野にまで登場するバズワードなのに対し、機械学習は、

    「プログラマによって明示的な処理を書くことなく、特定の課題を解決するためにコンピュータを用いるアルゴリズム、統計モデルの研究」

    に限定されます。一般的にイメージされるプログラマや数学者が取り組んでいるAI研究は、機械学習と呼ばれています。

    機械学習の学習の仕方には様々な形態がありますが、有名なものに教師あり学習というものがあります。これは望ましい学習の仕方、つまり、教師のように模範解答を示すものと、学習するデータをセットにしたものを機械学習のソフトウェアに学習させる方法です。

    「飛行機の画像、その画像の意味(飛行機)」

    のようなデータセットを用意して、その*エラー率を低下させることが機械学習の目標の一つです。

    ディープ・ラーニングとは機械学習のアルゴリズムの一種です。2012年のILSVRCという機械学習の大会において、ジェフリー・ヒントンという研究者がエポックな成果を出したことで世界的に研究に火が付きました。

    ディープ・ラーニングによって、それまで技術的に超えられない壁だとされていた低いエラー率を叩き出しました。それまでエラー率が26%程度で、実用化には一歩届かないと言われていた中で、ジェフリー・ヒントンのチームは17%の成果を出したのです。その後、ディープ・ラーニングの研究は世界中で活発になり、2014年には人間のエラー率と同程度の5%まで向上しました。

    ディープ・ラーニングのアルゴリズム自体は2006年に既に提唱されていましたし、その基礎となるアルゴリズムであるニューラル・ネットワークの基本的なアイデアは1943年に提出され、ニューラル・ネットワークの研究は1980年の時点で一定の成果を出していました。

    しかし、今のように人間と同程度のエラー率というのはここ6年の間に生まれたものです。ディープ・ラーニングは画像認識、翻訳、株価予想、医療分野など、様々な分野で応用されていきました。

    その成果と発展は目覚ましいもので、世界中で大量の論文が発表され、その論文に基づいたソフトウェアが産学を問わず実装され、世に送り出されています。

    ※エラー率についてはこちらの記事をご参照くださいませ。

    3. 『ゼロから作るDeep Learning』とは

    本来、機械学習には非常に高度な数学の理解が要求されます。理系の学生が学部1、2年で学ぶ

    解析学

    線形代数

    統計学

    ベクトル解析

    の知識は最低限要求されます。最新の論文を読もうと思ったら、数学科や物理学科の大学院生が修士過程で学ぶような

    数理的統計学

    関数解析

    多様体

    最適化手法

    多変量解析

    確率論

    ルベーグ積分

    測度論

    などの知識も必要となってきます。これでは、ディープ・ラーニングを学ぶ前に数学や物理学で学位を取るほど勉強しなければなりません。

    そうした学科のカリキュラムでは、機械学習には不要な回り道も要求されます。

    他の本で勉強しようとすると、

    「学部4年程度の数学でも太刀打ちできないほどの数学的理解が必要とされる。」

    「ただでさえ内容を理解するのが大変なのに、翻訳調で読みづらい。」

    「逆にExcelでポチポチ入力するだけでできると言って何も身に付かない。」

    「TensorFlowなどのフレームワークの使い方の解説だけでディープ・ラーニングのアルゴリズムはわからないまま。」

    となることが多く、専門家を目指していない人からすると概要を把握するだけでも大変です。数学的に厳密に理解するのが目的であれば問題ありませんが、ビジネスに応用したい、今後の産業構造の変化を予想したいというビジネスマンからすれば重すぎる勉強量です。

    そんな中、本書は長々とした人工知能の歴史の説明、高度なアルゴリズム、大学レベルの数学(高校数学で習わない偏微分が出てきますが、概念自体は難しくなく、本書の解説を読めば理解できる程度です。)を排した手腕は素晴らしく、国内のディープ・ラーニングの浸透に一役買うことになりました。

    ディープ・ラーニングは最近になって急成長した分野なので、段階を踏んで理解するための本、初心者にわかりやすく骨子を伝える本というのは限られています。その中で、本書は

    「Pythonも数学も詳しくないけど、ディープ・ラーニングが何かを知りたい。」

    というニーズにフィットし、ベストセラーとなりました。高校数学程度の知識と初めたばかりのPythonの知識でディープ・ラーニングの勘所を解説した書籍の中で、もっともわかりやすいと評判なのが『ゼロから作るDeep Learning』なのです。

    4. 『ゼロから作るDeep Learning』の話題を出す人はこんな人

    4.1 機械学習エンジニアになるための最初の一歩を踏み出した人

    正直なところ、この本を読んだだけで業務が任させられるかといえばNOです。説明の流れや、情報の取捨選択は眼を見張るものがあるので、即戦力レベルのAIエンジニアも目を通していますが、スキルを確認するなら、更に最近読んだ技術書や論文を聞いた方がいいでしょう。本書を読んだからといってスキルの保証はできません。

    『ゼロから作るDeep Learning』は本当にエッセンスだけなので、この本を一冊終えたからといってすぐに業務に活かせるか、といえば難しいといわざるを得ません。業務に活かすためには、ディープ・ラーニングだけでも

    TensorFlow

    Keras

    Chainer

    Pytorch

    などのフレームワークの理解はもちろんのこと、

    NumPy

    Pandas

    SciPy

    Matplotlib

    などの、ディープ・ラーニング以前からPythonで使われてきたライブラリを理解し、更にアルゴリズムの最適化や機械学習の永続化のためにはC、C++、サーバーなどの他のIT系の知識も必要になってきます。

    フレームワークやライブラリの出来合いのアルゴリズムを使うだけではなく、最新の論文を読んで理解し、実装にまで落とし込むための英語、中国語、数学、データ構造とアルゴリズムの知識まで必要になってきます。元々、数学に強くて英字論文を読むのに慣れている物理学科や数学科の博士過程の院生なら未経験から即戦力になるケースもあるかもしれませんが、そうでなければ非常にハードルが高い分野と言わざるを得ません。

    そう考えると、この本が必要なのは専門的な機械学習エンジニアを目指している人よりも、機械学習エンジニアと適切にコミュニケーションするためのマネージャーやビジネスマンなのかもしれません。

    4.2 普段から業務や趣味でプログラミングをしている方で、片手間にディープ・ラーニングに手を出してみた好奇心旺盛な方。

    技術書の老舗であるO’Reillyから発売されただけあって、多くのエンジニアの目に止まり、実際に手にとってみる人がたくさんいました。内容量も業務が終わった後の数時間を一ヶ月程度続けて読み終えることができる分量なので、エンジニア同士の共通の話題としてこの本がよく出てきます。

    技術というのは専門家やアーリーアダプターだけのものではありません。広く知れ渡っており、専門知識を持ってない人が軽い気持ちで始めてみるものにならなければ裾野は広がりません。そして、その裾野が広がった頃には多くのビジネスで既に取り入れられていると考えられます。

    そうした時期に必要なのは、専門家だけではなく、概要を理解し、別ドメインの知識を持った人間が手軽に始められる環境つくりです。これから、人工知能ビジネスを始めてみようと考えている方は、既にあるビジネス(Web系、VR、スマホアプリ等)の知識を有しながらも、好奇心旺盛に専門外の分野にも手を広げる、本書を読むようなエンジニアを雇用してみてはいかがでしょうか。

    まとめ

    人工知能という言葉はバズワードで、流動的なものです。春の時代と冬の時代を繰り返して、今は大きく進歩している春の時代です。特に自然言語処理、画像認識、株価予想など幅広く適用できるアルゴリズムであるディープ・ラーニングの進歩が目覚ましく、ビジネスへの応用が見込まれます。

    ディープ・ラーニングの概要を知る上で、一番わかりやすく解説しているのがベストセラーの『ゼロから作るDeep Learning』です。この本を読むことで今後のビジネスの方針が立てやすくなり、バブルに踊らされない判断力を養えます。

    この本を読んでいるからと言ってスキルは保証できませんが、専門外の知識に対してキャッチアップできる素地があるかどうか、つまりは変化に強い方かどうかの一つの判断要素となるでしょう。

     
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    マーケティング部

    福島県内の高校卒業後、東北大学に入学。在学中は硬式野球部に所属。英語学、心理学、英語教育学を専攻。卒業後は社会を構成する『ヒト・モノ・カネ・情報』が遍在することで生じる歪み(社会問題)をビジネスを通して適正化するというミッションに共感しリフト株式会社に入社。現在はマーケティングを担当。