更新日:2023/04/20
目次
「建設の特定技能がやっとエンジンかかりそうって聞いたけど、本当?」
「職種は結局どこまで対応になるの?」
そんな疑問にお答えするため、本記事では建設業界で特定技能外国人を雇用するために知っておきたい基礎知識と実務上の注意点についてご紹介します。
ちなみに、そもそも特定技能ってなに?と思われた方は下記の記事をご参照ください!
▶︎在留資格「特定技能」とは?特定技能外国人の採用から支援まで徹底解説
特定技能1号が成立した背景とは?
業界関係者の皆様にはくどいかもしれませんが、それは、ひとえに建設業界が人手不足であることが原因と考えられます。 建設業界の就業者数は1997年の685万人をピークに、2020年11月時点では505万人に減少しています。かつての東京オリンピック以降もリニア新幹線、東京の都市再開発、大阪万博など需要が絶えない業界であるにも関わらず、就業希望者は他の業界に比べ非常に少ないです。
建設業界の有効求人倍率は?
2020年12月に厚生労働省より公表された「一般職業紹介状況」によると、全国の有効求人倍率は1.06倍。これを踏まえると、建設業界の人材獲得の難しさが分かります。
(厚生労働省「一般職業紹介状況(令和2年11月分)について」をリフト株式会社で加工)
人手不足の要因は?
① 過酷な労働環境を忌避し希望者が集まらない。
昨今の働き方改革により、労働環境の整備は進んでいますが、
「週休2日制が整っていない」
「長時間の肉体労働がきつい」
「命に関わる危険な現場環境で働くのはいや」
などのイメージから、そもそも希望者が集まらない事態になっています。
かつては「GATEN職」などの、業界媒体に求人広告を出せば、少なくとも1月に1件は人材が集まっていたのが、広告費を無駄にするだけの状況が続いているなどの声もよく耳にします。
② 昔ながらのマネジメントスタイルが合わず、人材が定着しない。
就業者の約3割が55歳以上とも言われる同業界では、仕事は見て覚えろ、若手は就業時間よりも早く出て掃除をしろなどの昔ながらの教育法が実践されることも多く、なかなか若年層は定着しないという事態が発生しています。
特定技能1号外国人は建設業のどんな職種で働けるの?
以上のように、ひどい需給ギャップに悩まされている建設業ですが、特定技能1号外国人はその救世主になるのでしょうか? 以下、特定技能1号で受け入れが可能な職種について見ていきましょう。
受け入れ可能な職種
特定技能外国人は具体的に下記の職種で働くことができます。


また、2020年2月28日に従来の11対象職種に加え、新たに7職種が追加されました。

外国人が建設業分野の特定技能1号を取得するための要件とは?
大きく日本語水準と技能水準を満たすことの2つが要件です。以下具体的に説明します。
日本語レベルN4以上の試験に合格
日本語の試験に合格すると日本語水準を満たしたことになります。具体的には、日本語能力試験JLPTのN4以上、もしくは国際交流基金日本語基礎テストに合格する必要があります。 詳細は下記の記事をご参照くださいませ。
建設分野特定技能1号評価試験に合格
2つ目が建設業の技能測定試験に合格することです。
建設分野における特定技能1号評価試験には、国交省の取り決めに従い、学科試験と実技試験があります。

よくある質問① 技能試験の実施日・実施場所は?
技能試験は、職種ごとに異なる日程と場所で実施されます。
2020年12月4日には東京で「トンネル推進工」の試験が、15日には東京で「電気通信」の技能試験が実施されました。
2021年の予定はまだ公開されていません。
今後の試験予定は建設技能人材機構のHPで確認できます。
よくある質問② 海外試験の状況は?
海外試験はまだ実施されていません。
2020年3月にフィリピンでの試験が予定されていましたが、新型コロナウイルスの影響で延期となりました。
今後の海外試験の予定もまだ未定となっています。
よくある質問③ テキストはどこで入手可能?
建設技能人材機構のHPからダウンロードできます。
試験のサンプル問題も公開されています。
建設業分野の2号技能実習を修了された方は無試験で特定技能1号に移行可能
建設分野の2号技能実習を修了された方は、無試験で特定技能1号へ移行することが可能です。
特定技能1号では最長5年間働くことができるので、技能実習1号、2号、3号と合わせれば10年間の就労が可能です。さらに特定技能2号に移行できれば、就労期限がなくなり半永久的に働ことができます。
建設業企業が特定技能1号外国人を雇うための条件は?
「特定技能」の外国人を雇用したい建設業企業は下記の2条件を満たし、かつ、当該の外国人を直接雇用する必要があります。派遣社員としての雇用は認められておりませんのでご注意ください。
①国土交通省の計画認定を受ける
②全分野共通の基準を満たす
建設業界は他業界と違って、特定技能1号外国人を雇うために『国土交通省の計画認定』が必要であるところがポイントです。
この国土交通省の計画認定を得るためには、大きく下記の5つの条件を満たす必要があります。
①−1 建設業許可の取得
①−2 建設キャリアアップシステムへの事業者および特定技能外国人の登録
特定技能外国人の入国後2週間以内に、受け入れの報告と、建設キャリアアップシステムへの登録申請を行ったことを証する書類(メールの写し)を国土交通省へ提出する必要があります。
キャリアアップシステムへの登録は、建設キャリアアップシステムのHPから行うことができます。
①−3 一般社団法人建設技能人材機構(JAC)又は、JACの正会員である建設業者団体への加入
JAC 建設技能人材機構のHPより手続きが可能です。
①−4 特定技能と特定活動で就労する外国人の合計が、受け入れ企業の常勤職員の人数以下
建設業界は他業界と違って、受け入れ可能人数に制限があります。例えば、社長一人だけであとは短期的な業務委託によって運営している企業の場合、雇える1号特定技能外国人は一人までになります。
①-5 月給制での給与支払い
報酬は月給で安定的に支払う必要があります。日給は認められていません。
建設業での特定技能1号外国人雇用のルールは、他業界よりも複雑でわかりにくくなっていますので、詳しくは当社にお問い合わせいただければと思います。
特定技能1号外国人を雇用する場合の費用相場は?
特定技能1号外国人を雇用するルートによって費用相場は異なりますが、給与に関しては、同職種に従事する日本人と同等以上とされています。 さらに、在留資格申請費用と支援委託料(登録支援機関に支援を委託する場合)が一人あたり年間平均30万〜50万程かかります。また、下記の通りJACへ受入負担金の支払いも発生します。
※他に、JACまたはJACの正会員である建設業者団体への会費も発生。
(出典:一般社団法人 建設技能人材機構「会費等の金額について」)
特定技能1号か技能実習3号か?
「技能実習2号修了後に再度自社で働いてもらいたいんだけど、技能実習3号に延長するか特定技能1号に切り替えるか?」悩まれている企業様は多いかと思います。
まず費用面ですが、特定技能の場合、建設業界ではJACまたは他の建設業者団体への会費と受入負担金が発生するため、他業界に比べると割高になってしまいます。ただ、全体的に見ると技能実習生の受け入れよりも外部への費用は抑えられますし、人数が思うように増えなければ、JACも受入負担金の減額などを行ってくるはずです(すでに一度減額をして上記の金額になっています…)。
また、技能実習制度においては、残業規制が厳格化される(月ごとの残業時間が45時間を超える場合は変更届、80時間を超えて延長しようとする場合は技能実習計画の認定しなおし)など、技能実習生を「労働力」として扱うことが一層難しくなってきています。日本人労働者と同じように柔軟に働いてほしいというのであれば、特定技能人材の方が活用しやすいでしょう(給与や待遇が日本人と同等になるのは当然です)。
「技能実習3号に延長しないと就労期間が短くなるのでは?」と思われるかもしれませんが、特定技能1号から2号に移行できれば就労期限がなくなるので、永続して働いていただくことが可能です。なお、特定技能2号での在留期間は、永住権申請の要件である「就労期間」としてカウントすることも可能です(技能実習と特定技能1号の在留期間は対象外)。永住権取得や日本での長期の就労・生活を考えている外国人材にとっては技能実習3号より特定技能への移行の方がメリットがあるのではないでしょうか。
これらを踏まえると、本来的な「実習」という目的でないのであれば、技能実習3号よりも特定技能への切り替えをおすすめいたします。
建設業の外国人材の受け入れについて全体像を掴みたい!という方は以下の記事を併せてご確認ください。
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