更新日:2021/07/15
目次
「初めて外国人を採用しますが、雇用保険に関する手続きは日本人と同じでしょうか?」
「外国人を採用する場合の雇用保険は何をどうすれば良いでしょうか?」
弊社でもこのような質問を顧客から多数頂戴します。
今回はそのようなご質問にお答えすべく、入社時の雇用保険加入の手続き、外国人雇用状況届出についてまとめました。
外国人労働者の受け入れについて全体像を把握したい!という方は以下の記事をあわせてお読みください。
▶︎外国人労働者の受け入れ方法〜採用から定着まで7ステップと注意点〜
外国人を雇う場合の雇用保険手続きは?
結論から申しますと、日本人を雇う場合とほとんど変わりません!
違いは、
外国人の雇入れと離職の際に、いつも雇用保険の届出を行っているハローワークへ、
・「外国人雇用状況の届出」
・「在留カード番号の届出」
を行うことです。(このとき、本人の所持する「在留カード」が関係します。)
外国人雇用状況の届出は、雇用対策法により、平成19年から外国人労働者を雇用する全ての事業主の方に対して義務づけられており、外国人雇用状況届の提出を怠った事業主や、虚偽の報告をした事業者に対しては30万円以下の罰金が処せられるので注意が必要です(雇用対策法40条1項2号)。
第二十八条
事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)、在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
(引用:雇用対策法第28条 外国人雇用状況の届出等)
外国籍の方で、「外交」「公用」以外の在留資格で日本に滞在されている方が届出の対象となります。
よく就労に制限がない在留資格である「永住者」や「日本人の配偶者」であっても、届出は必要なのかという質問がありますが、もちろん必要です。日本国籍を取得した方や、「外交」「公用」の資格者でなければ必ず届出が必要になるのだということを抑えてください。
どんな在留資格、どんな働き方の場合に外国人雇用状況の届出が必要になるかを詳しく知りたい方は外国人雇用状況届出Q&A(厚生労働省)をご参照ください。
届出の方法は、雇入れる外国人が雇用保険に入るかどうかで違ってきます。
①外国人が雇用保険に入る場合、いつも通りの資格取得届と資格喪失届に必要事項を記入し、「別様式」に在留カード番号を記入することで、この届出を兼ねることができます。
②外国人が雇用保険に入らない場合、「外国人雇用状況届出書」に在留カード番号を記入して提出します。
雇用保険に入るかどうかはどう判断する?
雇用保険の「労働者」は原則として国籍を問いませんので、雇用保険に入るかどうかは日本人と同じ視点で判断されます。
「労働者」の意義
法における労働者とは、事業主に雇用され、事業主から支給される賃金によって生活している者、及び事業主に雇用されることによって生活しようとする者であって現在その意に反して就業することができないものをいう。
引用:厚生労働省 適用事業
具体的には、
①31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
②1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
この条件を2つとも満たす場合、雇用保険に加入し、雇用保険被保険者となることは義務です。
注意点について、箇条書きで示しておきます。
・アルバイトやパートの外国人も雇用保険に入ることになります。
・31日に満たない雇用契約でも、更新の可能性がある場合は入ることになります。
・雇用契約を締結していない場合であっても、報酬を得ている場合は「労働者」になることがありますので、注意が必要です。
従業員が雇用保険に入るのかどうかの判断は、厚生労働省 Q&A~事業主の皆様へ~でより詳しく説明されておりますので、ご参照下さい。
雇用保険被保険者資格取得届
雇用保険に入る外国人の雇入れ日の翌月10日までに、いつも雇用保険の届出をしているハローワークに提出します。これは日本人の場合と同様です。
ただし外国人の場合はこの取得届で、
・外国人雇用状況の届出
・在留カード番号の届出
の2つを兼ねることになります。
①取得届17~22欄に記入
途中までは日本人の場合と同じように記入していきますが、
下図の赤枠の17~22欄に「国籍」「在留資格」「在留期間」などを外国人本人が所持する「在留カード」を参照して記入します。
出典:厚生労働省ハローワークインターネットサービス 帳票一覧
出典:出入国在留管理庁HP
在留カードは日本に中長期滞在する外国人に交付されるカードで、3ヶ月以下の短期滞在の場合は交付されません。氏名、生年月日、性別、在留資格、在留期間などが記載されています。
出入国管理及び難民認定法により、「特別永住者」以外は、この在留カードを常に持ち歩くことが義務づけられています。
②「別様式」に在留カード番号を記入
在留カード番号は、カード表面の右上に記載されている、「利用できるか」「有効期限が切れていないか」を確認するための番号です。
この「別様式」での届出は、資格取得届と資格喪失届に在留カード番号の記載欄が追加されるまでの暫定的な方法です。令和2年中に様式改正が行われる予定ですので、今後はもっとシンプルになっていくでしょう。
出典:厚生労働省「令和2年3月から外国人雇用状況の届出において、在留カード番号の記載が必要となります。」
外国人雇用状況届出書(様式第3号)
雇用保険に入らない外国人の雇入れ日、退職日のそれぞれ翌月末日までに、この届出書をハローワークに提出することになっています。
外国人のハローワーク窓口に直接出向く以外にも、外国人雇用状況届出システムを利用することで届出が可能です。
外国人雇用状況届出システムマニュアルにより詳しい方法が説明されていますので、ご参照下さいませ。
この届出にも在留カードが必要となります。在留カードに記載された氏名、在留資格、在留期間、生年月日、性別、国籍等を記入し、下図の赤枠に在留カード番号を記載します。
出典:厚生労働省 新様式 外国人雇用状況届出書(様式第3号)
外国人が退職する場合の手続きは?
外国人雇用状況の届出は退職の際にも必要になります。
ここでも、外国人が雇用保険に加入しているかどうかで、届出の方法が違ってきます。
・被保険者であれば、いつも通りの資格喪失届に必要事項を記入し提出することで、外国人雇用状況の届出を兼ねることになります。
・被保険者でなければ、退職した日の翌月末日までに、外国人雇用状況届出書を提出する必要がございます。
雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険に加入している外国人の離職の日の翌日から10日以内に、いつも雇用保険の届出を行っているハローワークに提出します。
取得届と同様に、この喪失届で、
・外国人雇用状況の届出
・在留カード番号の届出
の2つを兼ねることになります。
①喪失届14~18欄に記入
途中までは日本人の場合と同じように記入し、在留カードの情報を元に下図の赤枠の14~18欄を記入します。
出典:厚生労働省ハローワークインターネットサービス「帳票一覧」
そして取得届と同様、「別様式」に在留カード番号を記載して、喪失届と一緒にハローワークへ提出します。
雇用保険被保険者離職証明書と退職証明書
雇用保険被保険者離職証明書
被保険者が退職した場合に、給付額等の決定に必要な事項を記入し、事業所管轄のハローワークに提出する必要があります。
これに関しては、日本人の場合と全く変わりがありません。
そして外国人の雇用保険被保険者も、要件を満たせば、離職後に雇用保険の失業等給付を受けることができます。
退職証明書
雇用保険法に関する証明書ではありませんが、外国人が退職後に転職するために必要となります。外国人が退職の際に事業主に請求し、交付します。
退職して少し経ってから必要になって、交付を求められることもありますので、退職時に交付することをお勧めいたします。
これは在留期間の更新、在留資格の変更・就労資格証明書の交付などの手続きを行うときに、添付書類として出入国在留管理庁に提出するためのものです。試用期間、業務の種類、地位、賃金、退職の事由などを記載します。
例外は?
外国人雇用状況の届出には、例外が存在します。それは、在留資格「外交」「公用」「特別永住者」です。
永住者
永住者とは、原則10年以上継続して日本に在留していて、素行が善良、独立の生計を営むことができる資産または技能があること等の要件を満たし、永住許可申請をして法務大臣の許可を受け、永住権を得た外国人です。
職種に制限がなく、日本人と同じように働くことができますが、外国人雇用状況の届出は必要です。
特別永住者
特別永住者とは、1991年施行された「入管特例法」により在留資格を得た外国人で、
日本との平和条約の発行により日本国籍を離脱し、終戦後も引き続き居住している朝鮮半島出身者と、その子孫である在日韓国・朝鮮人、在日台湾人等です。
特別永住者の場合、外国人雇用状況届出を届け出る必要がありません。「外交」「公用」の在留資格の場合も同様です。
また永住者と違い、特別永住者は在留カードを持ち歩く義務がありません。
職種に制限がなく、日本人と同じように働くことができます。
外国人雇用状況の届出を怠るとどうなる?
「雇用対策法及び地域雇用開発促進法の一部を改正する法律」に基づき、事業主が外国人雇用状況届出の提出を怠った場合、または虚偽の届出を行った場合、30万円以下の罰金が科されてしまいます。
(届出を忘れていたなどの場合は、故意と認められなければ、罰則の適用はありません。)
第二十八条
事業主は、新たに外国人を雇い入れた場合又はその雇用する外国人が離職した場合には、厚生労働省令で定めるところにより、その者の氏名、在留資格(出入国管理及び難民認定法第二条の二第一項に規定する在留資格をいう。次項において同じ。)、在留期間(同条第三項に規定する在留期間をいう。)その他厚生労働省令で定める事項について確認し、当該事項を厚生労働大臣に届け出なければならない。
(引用:雇用対策法第28条 外国人雇用状況の届出等)
第四十条
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
二 第二十八条第一項の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をした者
(引用:雇用対策法第40条)
要調査
外国人雇用状況の届出の記載内容については、事業主が責任を負うということになっておりますので、ビザ、パスポート、在留カード等を確認し、間違いなく記載する必要があります。在留資格が就労可能なものかどうか、在留期限が過ぎていないか等もチェックが必要です。
どの在留資格が就労可能かは、Q&A(出入国在留管理庁)のQ28~「日本で働く方」に詳細な説明がされていますので、ご参照ください。
外国人留学生のアルバイトと雇用保険
雇用保険には、条件を満たしても雇用保険に加入できない「適用除外」の場合がいくつか存在しますが、その中で外国人留学生に関係する、「学生」について見ていきます。
「留学」や「家族滞在」の在留資格の場合、原則として「資格外活動」の許可を得ていなければ就労できません。これは在留カードの裏面(赤枠)で確認できます。
出展:出入国在留管理庁HP
資格外活動の許可を得ることで、週28時間まで労働することができます。
ここであらためて雇用保険に入る条件を確認してみます。
①31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者であること。
②1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること。
そうすると、外国人留学生は上記②「1週間の所定労働時間が20時間以上であること」を満たす場合がありますが、「学生の本分は勉強!」ということで、雇用保険からは除外されています。
第六条
四,学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)第一条、第百二十四条又は第百三十四条第一項の学校の学生又は生徒であつて、前三号に掲げる者に準ずるものとして厚生労働省令で定める者
(引用:雇用保険法第六条 適用除外)
「昼」の学生
雇用保険に入れない学生とは昼間学生、つまり全日制の学校に通う学生です。
しかし、全日制の学校に通う留学生でも、雇用保険に加入できる例外があります。
それは卒業見込証明書があり、卒業後にそのまま就職し、続けて雇用することになっている場合です。
「夜」などの学生
一方で、、定時制、夜間学部、通信制の留学生等は、条件を満たせば雇用保険に入ることになります。
外国人留学生をアルバイト、パート等で雇う場合、学校が全日制かどうかが重要になります。全日制なのかどうか判断がつかない場合、学校に確認していただくことをおすすめ致します。
このように何かと制限の多い留学生ですが、夏休み等の長期休暇中であれば、日本人の労働者と同じように、週40時間、1日8時間まで働くことができます。
(出入国在留管理庁)Q&AのQ60、Q61に詳しく説明されておりますので、ご参照ください。
まとめ
今回は外国人を雇う場合の雇用保険手続きについて解説いたしました。
それ以外の所得税や住民税などは、日本人を雇用する場合と全く同じでございます。特段意識する必要はありません。
本記事が、お役に立てましたら幸いです。