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技能実習生トラブル事例 〜不幸な事態を防ぐために知っておきたいリスクと対策〜

目次

今回ご紹介するトラブル事例を読んでその原因を考察し、いち早く外国出身の方が幸せに働ける職場を作ることができれば、少子高齢化により日本人の有効求人倍率が増加の一途をたどる中、強固な採用基盤を築くことが可能です。少しでも臨場感を持っていただけるように、できるだけ実際の場面がイメージできるように記していきます。参考になれば幸いです。

実際に起こったトラブル集

Case 1 失踪

トラブルとして多いのが受け入れた技能実習生が失踪してしまうということです。状況を伺っていると、実に様々な原因が考えられます。各業界の事例を見ていきましょう。

【農業】インドネシア出身技能実習生1名の失踪

農業は建築業と並び実習生の失踪率が高い業界です。ただ、この実習生の方は問題なく実習が進んでおり、定期的に行われる面談でも何も問題はないとおっしゃっていました。

しかし実習を開始して半年ほど経った時点で突然に姿を消してしまいました。監理団体の担当職員、直属の上司は優しく対応してくれていたために、日本の生活が合わず、本国に帰りたいという本音を申し訳なくて言えない。それでもやっぱり苦しくて本国に帰りたいと話していたと一緒に来ていた実習生が話してくれました。

あくまで又聞きなので実際のところはわかりませんが、このように日本の生活が合わないとおっしゃる方はいらっしゃいます。来日前の面接時点で、日本と母国では生活環境や、文化が異なるが、それでも頑張って実習を続けられるかと念押しをしているのですが、それでもやはり来てみたら予想以上にイメージとのギャップが大きかったということはよくあります。多くの人は時間の経過により乗り越えられるのですが、中には乗り越えられない場合もあります。

言語も文化も全く違う場所に来て働くことの心の負担はどれほどなのでしょう。その負担の大きさを想像しようとする意識があれば、多少なりとも実習生の負担を減らすことができます。

【漁業】牡蠣養殖、冬の集団失踪

生活環境に慣れている日本人でも、寒さや重労働で離職者が絶えない牡蠣養殖で実習生が大量離職したことがあります。給料は頑張って続けることができれば母国に仕送りが十分な額になっていたのですが、それでもやはり耐えきれず失踪してしまいました。

仕事が楽になることは業界の特性上ありえず、事前理解を深めるしかこの失踪を防ぐ手段はありませんでした。事件以後、この牡蠣養殖事業者様は、面接時にどれくらい作業が辛いか写真や動画を使って伝える努力をしました。事前の理解度が上がったのか、事件以後は失踪者は出ていません。

【建築】1年実習終了時、お疲れ様会に欠席し、そのまま失踪

初めて実習生を3人雇い、なんのトラブルもなく1年実習が無事終了したが、最も日本語ができたリーダー役の実習生がお疲れ様会に出席せずに失踪してしまったケースがあります。

彼は3人の中では日本語が上手であったため、もっと稼げる仕事があるのではないかと思い、失踪してしまいました。実際には、失踪してしまうと在留資格を得られなくなってしまい日本語力を生かした就職はできなくなってしまいます。日本の在留資格制度の理解不足がこのような悲劇を起こしてしまうことが多々あります。

支援団体としては失踪した場合に本人が負うことになるリスクを理解させきれなかったこと。企業側としては、ずっと働きたいと思ってもらえるような関係を構築できなかったことが問題です。このケースは非常にレアですが、失踪の原因として企業との良好な関係が築けないことがよく挙げられます。

 

Case 2 一時帰国から帰ってこない。

長期休暇で一時帰国した外国人従業員がと連絡がつかなくなってしまった。元々1週間という帰国期間のはずが、2ヶ月になってしまった。こういったことが時折生じます。慣れない環境で生活から慣れ親しんだ環境に戻ると、張り詰めていた糸が切れたかのように、気持ちが緩んでしまいます。そんな時、日本での思い出が苦しいことばかりだと、戻ってきたくなくなってしまうのです。

途中帰国から帰ってこなくなることを防ぐためには、信頼関係の構築が不可欠です。実際これまでに一切トラブルのない企業様も存在します。この企業様は、本当に感謝しているから、このまま失踪されても構わないという気持ちで特別ボーナスを渡すそうです。自社に来てくれて本当にありがとうという気持ちで接していることが失踪者を出さない大きな要因なのかもしれません。

Case3 当初3年実習の予定が1年実習で切り上げ。

大卒インドネシア人実習生が同期で同じ仕事をしている高卒実習生よりも上手に仕事ができないことが苦しく、一年で実習を切り上げてしまったことがありました。インドネシアは非常に上下関係を重んじる文化があると言われています。この方は年下の同期よりもできないことでプライドが傷ついてしまいました。インドネシア出身者を雇う際にはできる限り年齢序列となると良いでしょう。

Case4 病気が発覚して就労できなくなってしまった。

実習生の方を受け入れる際には面接後と、入国前に2度現地で健康診断をすることになっています。このタイミングで病気が発覚し、実習予定者が日本に来れなくなってしまったということもありました。

日本にいると若い方が大病にかかることはなかなかイメージできないですが、特に医療・衛生制度が整っていない発展途上国出身の方は感染症や、肺炎などにかかるリスクが高いです。実習による技術伝達で少しでも国全体が発展し、医療制度が整い、若くして病に伏せる方が減っていくことを願っています。

Case5喧嘩

外国人従業員同士の喧嘩も生じます。特に問題になるのが、二人部屋の寮に住んでいた実習生が喧嘩することです。修復不可能なまでの喧嘩である場合、最悪どちらか、あるいは二人とも帰国ということにも発展しかねません。当然のことですが、実習生受け入れの際には、寮は一人一部屋で、生活ルールを定めるなど、全員が心地よく暮らせる環境を用意しましょう。刃物を使うなど、限度を超えた場合は警察に通報しましょう。

Case 6 金銭トラブル

家賃の支払いを統括している外国人従業員のリーダーが、着服を疑われ居ずらくなって1年で切り上げたことがありました。実際には着服していなかったことが後になって分かりました。外国人従業員の金銭に関する管理は会社の人事・労務担当者が行うことが鉄則です。

実際金銭に関するトラブルを挙げ始めるとキリがありません。「信頼」という言葉で金銭管理の不徹底をごまかしてはいけません。会社と従業員を守るため、金銭管理には慎重を期しましょう。

最後に

現地送り出し機関の方とお話させていただいた際に非常に興味深いことをおっしゃっておりました。

「トラブルが多く発生する企業は、募集の時点から外国人に来させてやっているという雰囲気を感じることが多い。一方で、自社に来てくれてありがとうと感謝の気持ちを持って実習生に接している企業はうまくいっている。そもそも技能実習制度の本質は、技能移転による国際貢献である。今後は外国の幸せにならない求人はお断りする予定だ。」

技能実習制度を安い労働力を得る手段と捉え、傲慢な態度で実習生受け入れを進めると誰も幸せになりません。これは事例を見れば明らかです。4月から技能実習2号から特定技能1号への移行が可能になりました。外国人従業員の方に、自社の事業の核となってもらうためにも、遠い海外の地から縁があって自社に来てくれた候補者に感謝の気持ちを持って接するようにしましょう。

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特定技能の要点

 
中村大介

編集長

1985年兵庫県生まれ。2008年に大学卒業後、新卒でフランチャイズ支援及び経営コンサルティング業を手がける東証一部上場企業に入社。新規事業開発に携わった後、ベンチャー企業に転じ執行役員としてセールスに従事。2015年、リフト株式会社を設立し取締役に就任。現在推進されている「CAREER PICKER」,「balance talent」,「DIVE」など、日本企業に外国人雇用を推進する様々なサービスを開発。また、経営企画や人材採用などCOOとして幅広く活動中。趣味は、海外旅行とサーフィン、ゴルフ。

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