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更新日:2021/09/16

目次

H. Jay Araki Photo
荒木 英仁(Araki Hidehito)

センチュリオン大学 日本語・日本文化教育センター シニアアドバイザー

サンディエゴ州立大学卒業後、ADKホールディングスにて海外マーケットを担当。

インドビジネス歴は17年を超え、今まで数多くの日系企業/インド企業に対し マーケティング/コンプライアンスに関してのコンサルティング/アドバイザリーを実施してきたインドビジ ネスに精通するベテラン。官民にわたる豊富な人脈も活かし、クライアントに とって有意義で的確なアドバイスを提供し続けている。

食の教育1-1
荒木 美和(Araki Miwa)

センチュリオン大学 日本語・日本文化教育センター 主幹講師

在印歴は12年。2018年よりセンチュリオン大学 日本語・日本文化教育センターでの日本語教育に参画。日系企業を顧客に持つインド企業へ日本文化、マナーを教えてきた経験を活かし、日本語の教育にとどまらない授業を展開している。

 

インド送出(インド北東部アッサム州出身の学習者たち。)

2017年10月に「日本国法務省・外務省・厚生労働省とインド技能開発・起業促進省との間の技能実習に関する協力覚書」が取り交わさてから早3年。13億超の人口を誇るインドだが、日本への技能実習生送り出し実績は未だに少ない。

そこで本記事では、「送出し国の中でインドが今後どういった存在になるのか?」「インドでの実習生募集、教育はどういった状況なのか?」について、認定送出機関であるセンチュリオン大学 日本語・日本文化教育センターのシニアアドバイザー荒木英仁氏(以下「荒木アドバイザー」)と主幹講師の荒木美和氏(以下「荒木講師」)にお話を伺った。

インド人技能実習生がなかなか増えない現状

まず、2019年12月末時点での日本在留インド人技能実習生は、225名(技能実習1号-3号)、2019年の技能実習1号新規入国者は257名とストック、フローどちらで見ても大きなインパクトのある人数ではない。 

(法務省「在留外国人統計2019年末」を基にリフト株式会社にて作成)    

(法務省「出入国管理統計2019年」を基にリフト株式会社にて作成) 

また、そもそも2019年末時点で日本に在留しているインド人の総数は40,202名と、ベトナムの1/10程度しかいない。ちなみに、インド国内でのワーカーの初任給は大卒であっても約3万円と低い水準にあるので、日本企業の給与に魅力を感じる人材がもっと出稼ぎに来ても良さそうなものだが、実際は全くそうなっていないのが現状だ。

なぜ、人口が多く、日本との経済的な交流も盛んで、経済格差も大きい、といった諸条件が揃っているにも関わらずインドからの労働者や実習生が少ないのか?

荒木アドバイザー曰く「日本に魅力を感じている人が少ない、そもそも魅力を感じるほど情報量がない」というのが一番の問題のようだ。スズキやパナソニックなど技術力のある日系企業の影響で、「技術が優れている国」という印象はあるものの、英語圏であるアメリカや中東諸国と比べると日本に対する情報は圧倒的に少ない。結果、日本での給与というメリットよりも異文化に適応するストレスというデメリットが勝り、日本を敬遠する人材が多いのだという。

そしてこれは人材側だけでなく雇用する企業側にも当てはまることだ。海外進出を積極的に検討している企業は別として、一般的に技能実習生を受け入れている中小企業において、中国やベトナムと比べて距離的にも遠いインドの情報をキャッチアップしているケースは少ない。既に実績も多く、イメージが湧きやすい国から人材を採用し続けることができるのであれば、インド人技能実習生を増やそうという動きは加速しないだろう。

しかし、①「今後数十年、人口ボーナス期が続く=送り出せる労働者のパイが圧倒的に大きい」、②「現在日本で就労している人材が少ないので、今から関係を構築しておけば良い人材が中長期にわたって確保できる」、③「英語を話せる人材が多い」、④「インド国内でも地域間によっても様々な特徴があるので、多様な人材を確保できる」といった点から、インドの技能実習生は他国の実習生にない魅力があると荒木アドバイザーは語る。ベトナム人技能実習生の頭打ちが懸念されている状況も踏まえると、インドからの技能実習生受け入れは今まさに検討すべき選択肢だ。

では、日本に関する情報が少ない中、インドでは、どのように日本に技能実習に行こうとする人材を確保し、教育をしているのだろうか。

どのように技能実習生の募集・教育をしているのか?

(センチュリオン大学 日本語・日本文化教育センターで勉強している学習者の自己紹介動画)

現在、男性8名、女性5名の計13名が日本行きを夢見て日本語学習に励んでいるセンチュリオン大学 日本語・日本文化教育センターでは、求人ありきで人材を募集するのではなく、技能実習制度のプログラムについて説明を行い、興味を持ってくれた人材への日本語教育をするところから始めている。そのため、求人案件が出てくる前から日本語学習をスタートしており、学習開始から日本に送り出すまでの平均の日本語学習期間は1年1ヶ月と長くなっている。これは長期間日本語を学習できるというメリットがある反面、いつ日本に行けるか分からないという環境の中でモチベーションを維持しながら学習するのが難しいというデメリットもある。だからこそ「モチベーションを維持させるためのメンタルサポートが何よりも大切になってきます。そして、メンタルサポートを欠かさないことが、日本で実習が始まった際にギャップや不安を感じず安定した精神状態で仕事ができることにも繋がってくるんです。」と荒木講師は語る。

当然、メンタルのサポートだけではなく、日本語教育そのものにも力を入れており、会話力を重視した日本語授業の成果は著しいものがある(学習者の自己紹介動画を見てもレベルの高さが窺える)。日本で働くにあたって一番大切なことはコミュニケーション力だと思っています。 文法の間違いを気にして話せなくなるよりも、話すことの楽しさを感じさせることを大事にしています。」そのため、一つの教材をカリキュラム通りに進めるのではなく、「みんなの日本語」「げんき」を中心に、補助教材として「まるごと」を使うなど様々な教材を組み合わせて独自のレッスンを行っている。

そして、荒木講師が、日本語以上に力を入れているのが日本の文化やマナーについての教育だ。日本のマナーを教える際、私のクラスでは、インドだったらどうするかを必ず聞きます。 そして日本との違いを教え、それについて意見を交換します。文化やマナーを一方的に押し付けるのではなく、あなたの国ではどう?と話し合うことでお互いのことを知ることができます。もちろんダメなことはダメと、きちんと説明して教えます。 教える側に、どうせ伝わらないだろうからという思いがあると、相手にも伝わってしまい、良くない結果になることが多いです。初めから分からないと決めつけず伝えることを大切にしています。」こういった教育により、日本に来てからのトラブルが減るだけでなく、普段あまり日本の情報が入ってこないインドの学習者が日本のことを少しでもイメージできるようになるそうだ。

食の教育2(1人でも日本で生活できるように食事の作り方まで教えている)

企業がインド人技能実習生を受け入れる上で

最後に、馴染みのないインド人技能実習生を受け入れる上で、企業が注意すべき点はあるのだろうか?

ここに関して、①食事の文化と②マネジメント手法には留意をしておいた方が良いだろう。まず、①食事面における文化の違いだが、インドには菜食主義(ベジタリアン)の方が多い。そのため、他の東南アジアの方に比べて日本の食に慣れるまで時間を要する可能性はある。当然、個人差はあるので、日本の食文化に全く抵抗のない方だけを採用することもできるだろうが、食習慣が違うからという理由だけで本当に優秀な人材を除外してしまうのは本末転倒だ。むしろ、他社との人材獲得競争で優位に立つためにも、菜食主義の方が生活に困らないよう、生活圏にある飲食料品店の情報をピックアップするなどして自社の受け入れ姿勢をアピールしていくのが望ましい。日本の情報が少ない学習者を惹きつけるために、小さなことであっても、できることは何でもやっておくべきだ。

②のマネジメント手法について、荒木アドバイザーによると「自己主張の強い国民性なので、あまり、がんじがらめに規律で締め付けない方が良いです。また、ダメなことに対して、なぜダメなのかをロジカルに説明することが求められます。ただ単に規則だからダメというのでは納得してもらえないでしょう。アジア圏というより欧米圏の方を雇用しているという意識の方が上手くいくかもしれません」とのことだ。もちろん、こちらも結局は個々人の性格に帰結するが、既にベトナムやミャンマーなど他国の実習生を受け入れている企業が、新たにインドから実習生を受け入れることを検討するのであれば、こういった違いを頭の片隅に置いておくに越したことはない。

このような文化的な違いに焦点を当て過ぎてしまうと、インドから実習生を受け入れるのに不安を感じられる方も多いかもしれない。しかし、文化的、地理的に距離があったとしても、自分や家族の生活をより良いものにするために日本に技能実習に行くことを夢見て頑張っている姿勢は、どの送出し国の実習生も同じだ。

また、限定された選択肢の中で採用し続けられるのであれば、リスクを犯してまで国を広げる必要もないだろうが、少子高齢化の最先端を行く日本は言うに及ばず、東アジア・東南アジアでも人材確保は今後益々困難になってくる。そのような中で、中長期的に安定して優秀な人材を獲得していきたいのであれば、選択肢を増やすことは不可避だ。そして、その選択肢として、労働人口が多く、経済的にも今後日本との関係がより緊密になってくるインドを検討しておいた方が良いのは間違いないだろう。

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