更新日:2023/04/20
目次
「特定技能で介護人材を受け入れるにはどうすればいいの?」
「特定技能外国人はうちで活用できるだろうか?」
そんな疑問にお答えするため、本記事では介護分野で特定技能外国人を雇用するために知っておきたい基礎知識と実務上の注意点についてご紹介します。
「特定技能について基本的なことから知りたい!」という方は、下記の記事をご参照ください。
▶︎在留資格「特定技能」とは?特定技能外国人の採用から支援まで徹底解説
特定技能1号が成立した背景とは?
特定技能制度で介護分野が対象とされたのは、ひとえに同業界が深刻な人手不足であることが原因です。
2019年の介護労働安定センターの調査では、約65%の事業所が従業員が不足していると回答しました。
(公益財団法人介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査結果について」をリフト株式会社で加工)
従業員が不足する最大の理由は、採用が難しいことです。同調査では、人材不足を感じる事業所の9割が「採用が困難である」と回答しており、その原因として「同業他社との人材獲得競争が厳しい」ことや、「他産業に比べて、労働条件等が良くない」ことを挙げています。
(公益財団法人介護労働安定センター「令和元年度 介護労働実態調査結果について」をリフト株式会社で加工)
2025年にはいわゆる「団塊の世代」が後期高齢者となるため、さらに多くの介護人材が必要となります。
このような人手不足を補うため、介護分野の特定技能1号が成立しました。
特定技能1号外国人はどんな業務に従事できるの?
以下特定技能1号で認められる業務と認められない業務について見ていきましょう。
認められる業務
特定技能1号外国人が従事できるのは、身体介護等の業務です。具体的には、入浴、食事、排せつ、整容・衣服着脱、移動の介助などです。
また同じ業務に従事する日本人が通常行うような、レクリエーションの実施や機能訓練の補助、掲示物の管理などにも従事することが可能です。
特定技能外国人は、技能実習生と違ってある程度の技能と日本語能力を身に着けている人材ですので、受け入れ後すぐに人員配置基準に算定できます。技能実習では禁止だった一人夜勤も、就労開始後すぐに可能となります。
ただし、一定期間はほかの日本人職員とチームでケアを行うなどして、受け入れ施設への順応をサポートし、ケアの安全性を確保できる体制をとることが求められます。
厚生労働省は、具体的に以下のような取り組みを想定しています。
・外国人材と日本人職員がチームで介護にあたる
・介護技術習得の機会を提供する
・日本語習得の機会を提供する
また「一定期間」とは、受け入れた外国人材が受け入れ施設における業務に順応するまでの期間であり、6か月程度が想定されています。
認められない業務
特定技能1号外国人は、訪問介護などの訪問系サービスに従事することはできません。
外国人が介護分野の特定技能1号を取得するには?
現場で即戦力となる技能及び日本語のレベルがあると認められる場合に「特定技能1号」が認可されます。具体的には下記の4つの場合です。
a. 技能試験と日本語能力試験に合格する
b. 介護分野の技能実習2号を修了する
c. EPA介護福祉士候補者としての在留期間(4年間)を満了する
d. 介護福祉士養成施設を修了する
以下くわしく説明します。
a. 技能試験と日本語能力試験に合格する
外国人材は必要な技能水準と日本語水準を満たしていると証明するために、次の3つの試験に合格する必要があります。
①日本語能力試験(N4以上)または、国際交流基金日本語基礎テスト
「日本語能力試験(JLPT)N4以上」は、ある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力と言われています。試験はマークシート方式で、年に2回、日本各地と海外の実施機関で行われます。
「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」はJLPTと同様の目的で行われますが、実施場所ごとにスケジュールが異なります。スケジュールはこちらのサイトからご確認ください。日本国内での試験は2021年3月1日から実施されます。
また日本語能力試験については、下記の記事でくわしく解説しているのでご参照ください。
▶︎在留資格「特定技能」の「技能評価試験・日本語試験」とは?
②介護日本語評価試験
この試験では、介護現場で実際に使用される日本語が身についているかどうかが評価されます。
試験内容は、①日本語能力試験や国際交流基金日本語基礎テストと異なり、介護現場でよく使われる単語や会話、声かけ、文章などが出題されます。サンプル問題が公開されているのでご参照ください。
試験は日本各地と、カンボジア、インドネシア、モンゴル、ミャンマー、ネパール、フィリピン、タイで行われています。
今後の試験日程と試験会場はこちらのページで確認できます。
ちなみに2020年12月に国内で行われた試験は、受験者948名、合格者788名で、合格率は83.1%でした。
③介護技能評価試験
この試験では、求められる技能水準を満たしているかどうかが評価されます。
ちなみに求められる技能水準とは、以下のように定められています。
介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できるレベル
試験は実施国の現地語で行われ、学科試験40問と実技試験5問で構成されています。こちらもサンプル問題が公開されているのでご参照ください。
試験実施場所や日程は、②介護日本語評価試験と同様です。こちらのページでご確認ください。
2020年12月に国内で行われた試験は、受験者1062名、合格者693名で、合格率は65.3%でした。
②介護日本語評価試験と③介護技能評価試験は学習用テキストが公開されています。厚生労働省のページ中段にございますのでご活用ください。
b. 介護分野の技能実習2号を修了する
介護分野の2号技能実習を修了された方は、上記の試験なしで特定技能1号へ移行することができます。
技能実習2号を修了された方のほとんどは、ある程度の日本語を理解し一定の業務を卒なくこなすことができるので、必要な技能・日本語水準を満たすとみなされます。
ちなみに、介護分野以外で技能実習2号を修了した場合、上記①日本語能力試験または国際交流基金日本語基礎テストは免除されますが、②介護日本語評価試験と技能評価試験は免除されません。
c. EPA介護福祉士候補者としての在留期間(4年間)を満了する
EPA介護福祉士候補者として入国し、4年間適切に就労・研修に従事した場合、技能実習2号と同様に無試験で特定技能の在留資格を取得できます。
「適切に就労・研修に従事した」ことの証明としては、直近の介護福祉士国家試験の結果通知書で、
・合格基準点の5割以上の得点であること
・すべての試験科目で得点があること
が確認できる必要があります。
これまでEPAの外国人は、在留期間中に介護福祉士の国家試験に合格できないと帰国しなければなりませんでした。しかし特定技能に移行が可能になったことで、さらに5年間の就労が可能です。
d. 介護福祉士養成施設を修了する
介護福祉士養成施設を修了した留学生も、技能実習2号やEPA同様に無試験で特定技能の在留資格を取得できます。
ただ、介護福祉士養成施設の修了者は在留資格「介護」を目指すため、特定技能の資格取得者数は未だ0名にとどまっています。
介護分野の特定技能1号外国人を受け入れるには?
「特定技能」の外国人を雇用したい事業所は下記の4条件を満たし、かつ、当該の外国人を直接雇用する必要があります。派遣社員としての雇用は認められておりませんのでご注意ください。
①介護などの業務を行うこと(訪問系サービスを除く)
技能実習制度同様、介護の業務を行う事業所で受け入れが可能です。
具体的には、以下の画像で白くなっている事業所と、緑になっている事業所の一部が対象となります。
(出典:厚生労働省「『介護職種について外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律施行規則に規定する特定の職種及び作業に特有の事情に鑑みて事業所管大臣が定める基準等』について」)
②特定技能1号外国人の人数が、日本人等の常勤介護職員の人数以下
ほかの業界と違い、介護分野は受け入れ人数に制限があります。
「日本人等の常勤介護職員」とは、以下のように定められています。
日本人「等」については,告示にあるとおり,次に掲げる外国人材が含まれます。
① 介護福祉士国家試験に合格したEPA介護福祉士
② 在留資格「介護」により在留する者
③ 永住者や日本人の配偶者など,身分・地位に基づく在留資格により在留する者○ このため,日本人「等」の中には,技能実習生,EPA介護福祉士候補者,留学生は含まれません。
③「介護分野における特定技能協議会」に加入し、必要な協力を行う
はじめて特定技能1号外国人を雇用する事業者は、受け入れ後4ヶ月以内に「介護分野における特定技能協議会」への加入が必要です。
加入は厚生労働省のHPから行うことができます。
④特定技能1号外国人への支援を適切に実施する
特定技能1号外国人の受け入れのためには、法律で定められた支援を行う体制を構築する必要があります。
ただし、支援を登録支援機関にすべて委託した場合、適切な支援体制が整備されているとみなされます。
特定技能1号外国人が働ける期間は?
現状のところ5年間です。
ただ、技能実習1号・2号・3号と合わせれば10年間の就労が可能となります。
介護分野では、更新が無制限にでき、家族を呼べる特定技能2号の資格は許可されていません。しかし現場の人手不足を考えると、今後許可される可能性は大いにあります。
また、介護福祉士試験に合格することで、在留期間更新の上限がない在留資格「介護」で働き続けることができます。
特定技能1号外国人を雇用する場合の費用相場は?
特定技能1号外国人の給与は、同職種に従事する日本人と同等以上とされています。
さらに在留資格申請にかかる費用や、登録支援機関への支援委託料を合わせると年間で30-50万円ほど外部コストがかかります。また、送出機関を通して海外から呼び寄せる場合は手数料が発生することがあります。
介護分野での特定技能1号の活用法は?
現在では、試験に合格した特定技能1号外国人の採用がメインの活用法となっています。2020年9月末時点で介護分野の特定技能人材は計343名ですが、その内試験に合格し在留資格を取得した方は251名で7割以上を占めています。
しかし今後は、技能実習2号を修了し特定技能1号を取得する人数も増えてくることが予想されます。
技能実習制度の対象職種に介護が追加されたのが2017年11月ですので、2021年には技能実習2号の修了者が出始め、特定技能1号へ移行することになります。
2019年時点の技能実習2号の人数は計1,604名です。彼らが特定技能1号に移行すれば今後は技能実習2号からの移行が主流と言えそうです。
技能実習生を採用するためには様々な制約がありますし、戦力化するまでには時間がかかります。しかし、技能実習期間中に人材との関係性を深め、しっかりと教育することが可能なので、長期的に外国人材を活用したい場合は、技能実習からスタートし、特定技能1号に移行してもらうのが良いでしょう。
まとめ
ここまで介護分野の特定技能1号についてご紹介いたしました。
外国人の採用にあたっては、「日本語能力は大丈夫か?」「ご利用者様に受け入れられるのか?」などの不安から慎重にならざるを得ないと思いますが、先述の通り今後の人材不足がより厳しくなることは間違いありません。
受け入れ後の日本語教育や丁寧なコミュニケーションを徹底することで、外国人材の雇用に成功してらっしゃる事業者様も多くいらっしゃいます。
将来を見据えて早いうちから受け入れ体制を整え、外国人従業員の採用をはじめていくことをおすすめいたします。
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