• well being
  • 認定心理士
  • 田倉玲実

心理学のテクニックを利用して国籍の異なる部下と信頼関係を築く4つの方法

日本人同士であっても、一人一人価値観の異なる部下のこころを開き、信頼関係を築くことは至難の業です。まして文化の違外国籍の方が相手の場合には、より一層難しいでしょう。しかし、安心してください。心理学のテクニックを活用することで、信頼関係をより築きやすくなります。今回は「心理学のテクニックを利用して信頼関係を築く4つの方法」についてご紹介します。 

共通点でぐっと距離を縮める「類似性の法則」

信頼関係1

1つ目は「類似性の法則」です。類似性の法則とは、「人は考えや思想、バックグランドなどが共通する人に対して好意を抱くこと」です。

 部下の教育や指導をする際に、たまたま出身地や趣味のスポーツが一緒で話が盛り上がり、心の距離が縮まったご経験はありませんか。人間には自分と同じ経験を持つ人に対して、「自分と同じだ」と認識し、心の壁を取り外しやすくなる傾向があります。

ただ、出身地や育った環境は大きく異なるため、共通点を見出すことが難しいと感じ方もいるかもしれません。心配はご無用です。国籍が異なる場合であっても、姉弟構成や家族との関係性、休日の過ごし方や好きな食べ物などが一緒の場合は十分にあるからです。

 まずは相手に興味を持って、さまざまな質問を投げかけてみましょう。ひょっとすると、同じ3人兄弟の一番上で、しっかりするように育てられた経験が共通し、一番上ならではプレッシャーや弱音を吐けなかった経験が重複して、一気に親近感が芽生えるかもしれません。

 あるいは好きな食べ物や嫌いな食べ物が全く一緒で、「チーズが好きなら、近くにお気に入りのお店があるから一緒にランチに行こう」という展開になり、休み時間に親睦できるくらい心の距離を縮められる可能性もあります。共通点探しをして、親密な関係にしていきましょう。

褒めると好意を抱く「返報性の法則」

信頼関係2

2つ目は、「返報性の法則」を使う方法です。返報性の法則とは、人から受けた行為に対して申し訳ないと感じ、親切にしようとする心理のことを指します。

たとえば、会社内の雑談の際に後輩から冗談めかして「○○さんはこんなことも知らないんですか?」と言われたら、そのあとの業務上の指導をする際に、いつも以上に口調が厳しくなってしまう可能性もあるでしょう。

 反対に、後輩から「いつも○○さんの話は分かりやすいですね」「テキパキしている○○さんのことを尊敬しています」などのように褒められたら、次回の指導の際に丁寧に教えてあげようと思ったり、多少のミスに関しても寛大な評価をしてあげられるものです。

 返報性の法則は褒められたり、助けてもらったりなどの良いことをされれば、良いことを返してあげようとの心理が働きます。一方で、悪口や批判、固定概念による決めつけなどの悪いことをされたら、仕返しや無視などの悪いことを返しても構わないだろうとの心理が働きます。

 これは国籍を問わずに働く心理です。もし外国人労働者とうまくコミュニケーションが取れずに悩んでいるのなら、返報性の法則を理解して活用しましょう。

 たとえばジョークが好きで社内を笑わせてくれる外国人労働者に対して「○○さんの話はいつも楽しいね」「ユニークな話に元気が出るよ」などのように褒めてあげましょう。

 人は褒めてくれた相手に対して、ネガティブな感情を抱くことはありません。むしろ返報性の法則によって、好意を抱きます。そのようなプラスの評価をしてくれた相手に対して心を開き、コミュニケーションが円滑になるでしょう。

期待をすれば応えてくれるピグマリオン効果

信頼関係3

3つ目は「ピグマリオン効果」です。ピグマリオン効果とは、期待されることで成績が伸びる効果のことです。教育心理学で使われることが多いですが、仕事場においても十分活用できます。

 たとえば新人だけれども態度が大きい部下を「将来大物になる」と期待を込めて接することで、「この上司は私に期待してくれている」と感じとり、信頼してくれた相手に対して期待に応えようとパフォーマンスを上げることが十分に考えられるからです。

 私たち人間はつい初対面の印象で相手の性格や能力を判断しがちです。「きっといいパフォーマンスをしてくれるはず」「仕事は雑かもしれない」などの評価を無意識のうちに下し、今後の仕事においてプラスにもマイナスにも働きます。これをハロー効果と言います。

 無意識に下した相手への評価は自分のこころの中だけに留まるものではなく、その心境は相手にも伝わってしまいます。堂々と背筋を伸ばした立ち振る舞いに「きっと仕事ができるだろう」と認識すれば、ポジティブハローが働きます。期待に応えようと相手はパフォーマンスを向上させることに通じます。

 反対に、堂々とした振る舞いを「生意気だ」「きっと礼儀がわからない人間だろう」とネガティブに捉えると、ネガティブハローとなります。結果的に相手にその心境が伝わってしまい、仕事をさぼったり、信頼しない上司に対してコミュニケーションを減らして接触を避けたりします。これをピグマリオン効果と反対のゴーレム効果と言います。

 外国人労働者に対しても、「きっといいパフォーマンスをするだろう」「自信に満ちていて仕事ができるはずだ」などのように良い評価を下すようにしましょう。そのように心の底から思って接することで、相手は期待を感じ取って信頼関係を築き、仕事のパフォーマンスも向上します。

 

状況に合わせた距離感の選択「角度の心理」

信頼関係4

4つ目は「角度の心理」です。あなたが部下の指導に当たる際には、どのような角度で対話することが多いでしょうか。

 日本企業の大部分が部下と話す際に真正面から向き合った180度の位置にテーブルを置きます。180度の角度は、お互いの立場を明確した上で話すことができます。採用面接や人事面接などの「異なる立ち位置」であることを意識させたい場面では効果的です。

 しかし、もし部下と心理的な距離感が遠いと感じるのなら、180度の位置で座って対話をするのは避けたいところです。信頼関係を築くのであれば、0度もしくは90度の角度がおすすめです。

 0度は隣り合って話す状態です。同じ方向性を向いて座ることで「仲間意識」を芽生えさせ、距離感を縮めることに役立ちます。座った状態で0度の立ち位置を取ることは難しいかもしれません。

 しかし、立ち話をする際や部下の外国人労働者が悩んでいる場合には、敢えて隣に行って話を聴くのはありでしょう。「同じ仲間である」「味方である」とのメッセージを角度から発することができます。

 もちろん、外国人労働者との対話の折には、適宜目線を合わせるべきです。目をそらしての会話は何か隠しているように映ることもあります。隣同士であっても、適宜目線を合わせるように努力しましょう。

 90度は、真正面から向き合うことがないため、自然な会話がしやすいとされています。まだ距離感のある相手と話す際に90度の角度を取ることで「話しやすい相手」との印象を抱かせることができ、のちの信頼関係の構築に役立ちます。

まとめ

いかがでしょうか。信頼関係を築こうと思っても、バックグランドも文化も異なると、なかなか苦戦する場面も多いものです。その場合には、相手に期待していることを漂わせるピグマリオン効果や共通点を認識し合って仲良くなる返報性の法則を意識的に使ってみましょう。心の壁が薄れて、心地よいコミュニケーションが築きやすくなります。

編集部より

今後ますます加速する労働人口の減少に伴い、外国籍社員とあたりまえのように協働・共生する時代が目の前まで来ています。今回田倉氏に執筆いただいた心理学的な手法を実践し、「協働」を進めて行きましょう。

弊社も外国籍社員0人からスタートし、今では7名の外国籍社員と協働しております。「No Border」でビジネスチャンスを創出する弊社の取り組みをまとめましたのでよろしければご覧ください。

自社事例から紐解く令和時代の組織体制

 
田倉 玲美

セミナー講師登壇120回以上、550名以上の臨床経験をもつ。企業・団体でのセミナー講師や社内報等の執筆等も務めているTBSテレビ、かわさきFMラジオ出演。著書「こころの予防医学」出版。主な資格は日本心理学会「認定心理士」、日本健康心理学会「健康心理士」。

                各サービスに関する料金体系、 就労までの流れなどの資料