更新日:2023/03/10
目次
近年、技能実習生や特定技能外国人を始めとした外国人材の受け入れが加速しています。
それに伴い、外国人労働者を取り巻く様々な問題も目立つようになってきました。
そこで本稿では、外国人労働者をめぐる3つの主要な問題を取り上げ、その現状と原因、そして対策について解説いたします。
主要な問題① 劣悪な労働環境
現状
外国人労働者がおかれている労働環境の悪さは、度々ニュースなどでも取り上げられています。
長時間労働や低賃金・賃金未払い、いじめやパワハラなどは、深刻な問題です。
特に近年その数が増加している技能実習生は、上限を超えて残業させられたり、最低賃金に満たない報酬しか支払われなかったり、日本人社員から心無い言葉を浴びせられたりといった事例が数多く報告されています。制度自体も人権侵害を引き起こしているとして、国際社会からの非難を受けています。
以下は、技能実習生を雇用する受け入れ企業のうち、労働基準関連法令違反が行われた企業の違反事項の割合です。
(厚生労働省「技能実習生の実習実施者に対する監督指導、送検等の状況(平成31年・令和元年)」をリフト株式会社で加工)
同調査では、労働基準関連法令に違反していた企業は約70%に上るとされており、技能実習生の雇用環境をめぐる問題がいかに深刻であるかが分かります。
外国人労働者がこのような状況に置かれてしまう背景には、雇用主の情報周知の不徹底と、外国人労働者の身分の不安定さがあります。
外国人労働者の多くは労働基準法をよく知らないため、制限を超えた労働時間や最低賃金以下の報酬に対して、法令違反であると抗議することができません。
本来、企業は自社の外国人労働者に労基法などを周知させなければなりませんが、一部の企業は意図的に知らせずに劣悪な労働環境で働かせています。
また、外国人労働者の身分が不安定であることも、このような状況を生んでしまう背景として挙げられます。
例えば日本に暮らす外国人にとって、パスポートは自身の身分を証明するもので、出国や転職の際に必要になります。しかしこれを雇用主に取り上げられてしまい、パスポートを盾に不当な労働条件で働かされてしまう事例があります。
ほかにも、在留資格の更新を条件に、法外な労働時間や賃金で働くことを約束した契約書にサインさせるといった事例があります。これは、在留資格の更新には雇用する企業が作成する書類が必要であるという入管法の規則を利用した行為です。
原因と対策
なぜ起こってしまうのか?
上記のような問題の根本にあるのは、外国人労働者に対する人権意識の低さです。
上記のような労働環境で外国人労働者を働かせる企業にとって、外国人労働者は、日本人の人手不足を補ってくれる労働力にすぎません。しかし外国人労働者は、私たちと同じように地域社会に暮らす住民で、一人ひとりが日本で幸せに暮らす権利があります。
スイスの作家の言葉で「我々は労働力を呼んだが、やってきたのは人間だった」というものがありますが、ここまで述べたような問題が発生してしまう根幹には、外国人労働者を「人間」ではなく「労働力」としてしか捉えていない人々の認識があります。
たしかに外国人雇用を始めるきっかけは、自社の人手不足かもしれません。しかし受け入れたからには、企業は外国人労働者の権利を日本人と同じように尊重し守る義務があると言えます。
近年、世界的に人権保護の機運が高まっており、企業の人権への取り組みがより重要視されるようになってきています。外国人労働者の権利を蔑ろにし、不当な環境で働かせるような企業は、将来的に、社員からも消費者からも見放されてしまうでしょう。
外国人労働者を一人の人間として尊重し、働きやすい環境を整えていくことが、最終的な企業の生き残りのために重要と言えます。
対策は?
では、企業が外国人労働者の人権を保護し、働きやすい環境を作るにはどのような取り組みが必要なのでしょうか?
まずは、外国人労働者の声を取り入れることです。
人権保護の取り組みを行うには、自社でどのような人権問題が発生しているのか、もしくは発生し得るのか十分把握する必要があります。しかし日本人社員が想像するだけでは、当事者が感じている問題意識を完全に理解することはできません。当事者から問題が発生する場面やその背景について聞いた上で、どのような取り組みが効果的か、一緒に考えていくと良いでしょう。
次は、情報の開示です。
日本企業はアメリカなどと比べて、企業の人権保護の取り組みやそれに関する情報開示が進んでいない現状があります。
人権保護がより重要視されるようになった現代社会においては、企業は人権保護の取り組みを開示することで、株主や取引先企業、消費者などから広く社会的評価を得ることができます。そこで働く外国人労働者も、当然それまでより働きやすい環境で働くことが可能になるでしょう。
主要な問題② コミュニケーション不全
現状
外国人労働者を雇用する企業が必ず直面するのが、コミュニケーションの問題です。
コミュニケーションの問題には、主に言葉の壁と文化の違いが関係しています。
外国人労働者が日本語を十分理解できなかったり、受け入れ企業側が英語を話せなかったりすることで、十分なコミュニケーションが取れずに様々なトラブルが起こり、お互いのストレスにつながります。
また、文化が異なるために、外国人労働者と日本人社員の間でどうコミュニケーションを取っていけばいいか分からず、伝えたつもりが伝わっていない、思った通りに動いてくれないなどのトラブルにつながります。
原因と対策
なぜ起こってしまうのか?
コミュニケーションの問題が生じる原因としては、外国人労働者の日本語力が十分でない、日本の文化を十分理解していない、といったことが一番に挙げられるでしょう。
しかしそれ以外に、企業側のサポートが不十分であったり、社員の接し方に問題があったりすることも、コミュニケーションの問題を引き起こす原因です。
言葉も文化も違う環境で働く外国人労働者に対し、受け入れ企業側が歩み寄り、上手くコミュニケーションを取るために工夫することが求められます。
「外国人労働者は日本の企業で働いているんだから、日本語を勉強して日本人と同じように振る舞うべきだ」と考え、外国人任せにするのでは、いつまで経っても十分なコミュニケーションが取れず、信頼関係を築くこともできません。それだけでなく、職場環境への不満から、外国人労働者の早期退職につながってしまう可能性もあります。
対策は?
では、企業側はどのような対策を行えば良いのでしょうか。
まず挙げられるのは、日本人社員向けの研修です。外国人労働者とのコミュニケーションの取り方や、日本との文化の違いについて学び、社員の意識改革を図ることができます。
また、定期的な1on1ミーティングの実施も有効です。普段なかなか言えない悩みや不安を話す機会を設けることで、言語や文化の違いから抱え込んでしまうストレスを少しでも解消することができます。
ほかにも、外国人労働者が職場に馴染めず孤立してしまうのを防ぐために、社員同士で交流を深められるような社内イベントを開催すると良いでしょう。
主要な問題③ 地域社会との摩擦
現状
外国人労働者を取り巻く問題の3つ目は、地域社会との摩擦です。
日本は現在、在留外国人数が増加しているものの、まだまだ外国人が少ない地域も多いです。
特に外国人に慣れていない地域では、住民が外国人に対し不信感を抱き、差別的な態度をとってしまうこともあります。
NHKが2020年に行った調査では、日本全体としては外国人の受け入れに賛成しているものの、自分の地域に外国人が増えることに対してはネガティブな感情を持つ人が一定数いることが分かります。
(出典:NHK「日本で働く外国人増加「賛成」が70% NHK世論調査」)
また同調査では、「外国人が増えることで不安に思うこと」という問いに対し、31%の人が治安の悪化を挙げています。
地域社会で外国人労働者への不信感が広がれば、そういった外国人を雇用する企業のイメージダウンにもつながる可能性があります。
これらを踏まえ、外国人労働者を受け入れる企業は、外国人が一住民として地域に溶け込めるように配慮する必要があると言えます。
原因と対策
外国人労働者が地域で受け入れられるには、どうすれば良いのでしょうか。
外国人に対し不信感や排外意識を持つ大きな原因として、外国人と接する機会がない、もしくは少ないことが挙げられます。民間の調査では、外国人と接した経験がある人ほど、外国人の受け入れに肯定的であることが分かっており、したがって地域での共生を実現するには、地域住民と外国人労働者の交流を促進する必要があると言えます。
具体的には、地域のボランティア活動やイベントへの参加です。これらを通して外国人の側から地域住民と交流しようとする姿勢を見せることで、地域社会により馴染むことができ、共生が実現されるようになります。外国人労働者を受け入れる企業は、自社の外国人にこのようなイベントへの参加を進めると良いでしょう。
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