更新日:2021/08/03
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(左から王さん、原田社長 )
NHS株式会社はPC工法の設計、施工、足場工事等を強みとする建設会社です。もともと数年前から外国人技能実習生の受け入れを行なっていましたが、半年前にCAD設計者のポストで中国出身の王さんを採用しました。コミュニケーションの問題などで外国籍人材の雇用を躊躇する経営者が多い中、王さんの採用を決断した原田社長に外国籍人材雇用についてお考えを伺いました。後編では同社でCAD設計者として活躍中の王さんにお話を伺います。
正直不安はあったが、教育が必要なのは、外国人も日本人も変わらない。
-----募集について感じていた課題はございますか?
原田氏:以前一般的な募集(大手求人媒体)をいくつかかけてたんですけど、なかなかいい人が来なかったというか、採用まで至らなかったり、面接はしたんですけど断られちゃったりとかがありました。求人を出すと結構お金がかかる。結局採用に至らずに求人にかけた費用を捨てているような状態で悩んでいました。
それで、弊社は外国人技能実習生を雇っているんですが、その担当の方に相談したところ、日本語が流暢に話せる外国籍人材専門の紹介会社を教えていただきました。
-----専門的な教育が必要になるCAD職での外国籍人材採用に不安はありませんでしたか?
原田氏:不安はやっぱりありましたね。ある程度日本語ができないとやっぱり厳しい部分はあるかと。ですから日本語検定1級を取得されてる方を採用の条件にしました。
ただ弊社は特殊な建設業(PC工法)で、経験されてる人が少ないため、専門用語は建築の経験者でも分からないことがいっぱいあります。それを考えると、最初言葉が通じにくいのは海外出身の方でも日本人でも変わらないかと。
-----5名の候補者の中から王さんをお選びになった決め手は何でしょうか?
原田氏:日本語検定一級とか取得されてる事で、日本語が上手だったという事と、若干ではありますが、中国の日系企業でCADの経験があったという事です。面接時に、実際にCADも操作してもらって、ある程度使えていましたので、実際に働く際に上司になる室長と相談して採用を決めました。
-----面接段階でCAD技術も審査されていたんですね。
原田氏:そうですね。ただ技術レベルというよりは、実際CADを見ながら、こちらが言わんとしてることが分かるかどうかを重点的に審査しました。
正直先入観はゼロじゃない。だけど、どんどん解消されてきている。
-----なるほど。実際の現場で採用前の想定とギャップはありましたか?
原田氏:ギャップというか、びっくりしているのは、彼女は非常に努力家で、CADが2種類あるんですが、両方とも結構使えるようになってるんです。なかなか日本人でも2種類のCADを操作できるって難しいんですよ。大前提として施工図を担当する以上は、2種類のCADを操作できるようになる必要があるのですが、既にしっかりと対応してくれてます。まだ来て半年くらいですが、非常に勉強熱心です。
-----コミュニケーション等での課題はありますか?
原田氏:一般的なの会話は大丈夫ですが、専門用語はその都度覚えてもらうしかないので、ただ、それは日本人も同じところなんでね。
-----予想と違って大変だったことはありますか。
原田氏:文化的背景からなのか、性格なのかは分からないんですけど、熱心な分、頑固さもあるのかなと思います。僕が直接施工図の指導をしてるわけではないので、直属の上司から聞いた話ですが、「これをやる必要があるんですか。」と納得がいかないことについてストレートに意見をもらうそうです。
-----ストレートに自分の意見を伝える方は多いと聞いています。
原田氏:ちょっと戸惑った部分もその担当上司はあったみたいですけど、指示の内容を理論的に説明してあげれば納得して熱心に仕事に励んでもらえるみたいです。最初は僕らにも先入観みたいなものがありました。今ではそういった文化的な違いは心配するほどのことではなかったなと思っています。非常に努力家ですし。
-----先入観を除くよう努めてらっしゃるんですね。
原田氏:もちろんそうですね。先入観は正直0じゃないですけど、どんどん解消されています。まだ入社半年で、どうしても仕事がパパパっとすぐにできる訳ではないですが、成長スピードでいうと本当に素晴らしいです。
一緒にチームとしてやっているという雰囲気を伝えることが大切
-----すぐ離職されるのではないかと不安に思っている企業の方も多いと聞きます。離職を防ぐための工夫を教えてください。
原田氏:まずまだ半年なのでどうなのかなっていうところはあります。ただ、たまたま今の上司と事務員3名が女性で、コミュニケーションがうまくいっていることがまず一つです。逆に女性同士ってどうなのかなという不安もありましたが、お互い気を使う部分と、言うことは言う部分としっかりしているので、その辺のメリハリが良いのではと思っています。社員はほとんど男ばっかりで、悪気はないんでしょうけど職人ですからぶっきらぼうな所もあって、でも彼女は、自分が間違っていることであれば、強く言われても素直に受け止めています。それが自分の身になっていくっていう自覚があるようですし、変に気を使ってダメなものをダメって言わない方が本人的にも嫌と言っていました。お互いに男だろうが女だろうが同じようにみんな平等に接してるので、そこで変に特別扱いしていないことも良いのかもしれません。
-----3月に帰国する技能実習生キエンさんの送別会を行うなど仕事と遊びのメリハリを意識していると伺っています。
原田氏:そういう行事にかこつけて皆で集まってコミュニケーションをとる時間を仕事以外の時間でもとるようにしています。どの企業もそういったレクリエーションはやっていると思いますが、遊ぶ時はみんな一生懸命遊ぼうよというのが僕の考えです。
-----メリハリをしっかりつけてらっしゃるのですね。
もちろん普段仕事でギクシャクすることもありますよ。でも、仕事離れたらみんなで楽しく遊ぼうよと。お酒もね、定期的にみんなと飲んだりとか鬱憤ばらしも必要かなと思います。あと弊社は月一回全員集めて会議をやるのですが、着任したその月から王さんにもそれに出てもらっているんです。外国人だからとか、入ったばっかりだとか関係なく、一緒にチームとしてやってるんだよっていう雰囲気を本人に伝えるっていうのが大事かなと思います。
逆に日本人の採用の方が今は難しいかもしれない
-----最後に外国籍の方の採用に興味がある経営者の方向けにメッセージをお願いします。
原田氏:最初は言葉の障害っていうのがあると思うんですけど、逆に言えば日本人でも採用してうまくいく、うまくいかないの部分は難しいと思うんです。なので、あまり外国人だとか日本人だとかこだわる必要はないんじゃないかと僕は思っています。例えば日本人の経験者を雇用すると癖があったり、変に今までのやり方に固執したりする。それが外国籍の方だとまっさらで、素直に受け入れる部分があるんじゃないかと僕は思っています。逆に日本人の採用の方が今は難しいかなと僕は思ってますね。
-----貴重なお話ありがとうございました!