更新日:2023/11/30
目次
「技能実習と特定技能どちらを活用したら良いの?」
「制度が複雑すぎて、そもそも何が違うのか分からない」
こんな悩みを抱えている担当者の方も多いのではないでしょうか。
そこで本記事では、とりあえず各制度の基礎だけは押さえておきたいという方に向けて、
在留資格「特定技能」と従来の「技能実習」の違いを6つのポイントに絞って解説していきます。
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⑴「特定技能」と「技能実習」押さえておくべき6つの違い
01 制度の目的が異なる
「 技能実習制度 」は、開発途上国出身の方に日本の高い技術を現場での実習を通じて習得してもらい、帰国後に培った技術を広めていただくという国際貢献を制度の目的としています。
一方で、「 特定技能制度 」は、国内人材を確保することが困難な状況にある産業分野において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れることを目的とする制度です。2018年に可決・成立した改正出入国管理法により在留資格「特定技能」が創設され、2019年4月から受入れが可能となりました。
(従来は技能実習生が実習満了後に日本に在留する手段は存在しなかった©︎Lift.inc)
(「特定技能」により「技能実習」後も日本に在留し続けることが可能に©︎Lift.inc)
02 就業可能な作業内容や分野が異なる
「技能実習」と「特定技能」それぞれ認められている作業内容や分野が異なります。
「技能実習」で受け入れができているからと言って、「特定技能」も同じく受け入れられるとは限りません。また反対に「特定技能」で受け入れることができても、「技能実習」で該当しない場合があります。
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03 転職の可否
「技能実習」では、在留の目的が「就労」ではなく、あくまでも「実習」であるため、そもそも「転職」という概念が存在しません。所属先の企業の都合により他企業に移籍するか、技能実習2号から3号への移行のタイミングのみ「転職」が可能になります。
一方で「特定技能」は就労資格であるため、『同一分野』または『転職先の分野に該当する技能評価試験に合格+日本語能力試験4級以上(※介護はこれ以外に追加条件あり)』を満たしていれば転職が可能です。加えて、永住権に繋がる特定技能2号対象分野が拡大していけば、より外国籍の方々にとってもメリットの多い在留資格と言えます。
04 「家族滞在」の可否
「家族滞在」とは、「就労」または「留学」の在留資格保持者の家族が日本に在留することができる資格です。
「技術・人文知識・国際業務」などの専門資格では可能ですが、「技能実習」及び「特定技能1号」では認められていません。
しかし「特定技能2号」では、母国にいる配偶者ならびに子どもに限り、日本に呼ぶことができます。特定技能2号の資格要件を満たすことが難しいことに加え、特定技能外国人として5年目を迎える対象者が限られていることもありこの資格を持つ特定技能外国人は一部に限られております。また2023年11月現在、特定技能分野の中でも、建設分野,造船・船用工業分野にのみ、特定技能2号への資格変更が認められています。
05 就労前後に関与する事業者数
「技能実習」の場合には「監理団体」「技能実習機構」「送出機関」など、企業と実習生の間に入る関係者が多いのが特徴です。一方で「特定技能」の場合には原則、企業と外国人のみです。詳細は以下の記事をご覧ください。
▶︎ 在留資格「特定技能」とは?特定技能外国人の採用から支援まで徹底解説
06 受け入れ人数の制限有無
「技能実習」の目的が「技能移転」であるため、適切に指導ができるよう、受け入れには人数制限があります。
一方で「特定技能」の目的は「人手不足の解消」であるため、受け入れ人数に制限がありません。
ただし、建設分野・介護分野に限り、制限が設けられているので、注意が必要です。詳細については以下の記事をご覧ください。
▶︎ 特定技能外国人は何人まで受け入れられる?建設と介護以外は無制限って本当?
⑵ 登録支援機関と監理団体/組合の3つの違い
登録支援機関と監理団体/組合の違いについても理解しておきたいポイントです。
基本的なところでいくと、登録支援機関は「特定技能外国人」を雇用する場合に発生する支援業務を代行できる法人です。
一方で、監理団体/組合は「技能実習生」を受け入れる企業を監理する義務を負う団体です。公益財団法人や、商工会議所又は商工会などの団体が担っています。下記3つの違いを押さえましょう。
01 業務の目的が大きく異なる
登録支援機関の業務目的は、「特定技能外国人」を雇用する『企業の支援』となりますので、企業に代わり、特定技能外国人を受け入れる際に国が企業に義務付ける支援を、企業の代わりに担う機関となります。
一方で、監理団体/組合の業務目的は「技能実習生」の受け入れ企業にて、実習が適切に行われるよう「企業を監督すること」です。ですから、監理団体には3ヶ月に1回以上、受け入れ企業を監査し、必要に応じて当該機関を指導します。
02 民間企業や個人事業主でも登録可能か否か
監理団体/組合は非営利法人である協同組合が運営していて、民間団体や個人事業主は認可されません。
しかし、登録支援機関は条件を満たしていれば、民間団体や個人事業主が新規参入することができるという違いがあります。
そのため、登録支援機関は監理団体よりも質の善し悪しが分かれてくる可能性が高いです。企業はより慎重に、パートナーを探す必要があるでしょう。
03 費用形態が異なる
監理団体/組合の場合、企業は当該団体に毎月契約で定められた監理費を支払います。団体ごとに料金は異なりますが、監理費の相場は1名あたり「約25,000円~50,000円/月」です。
一方で、登録支援機関への支援委託費用の相場は「20,000円〜35,000円/月」と割安になっています。また、企業が自社で支援責任者や担当者など支援体制を内製化する場合、登録支援機関に支援費用を払う必要がないので、外部コストを抑えることができます。
とは言え、複雑な手続きも発生するので「手厚いサポートが受けたい」「はじめの受け入れで不安」といった場合には、まず登録支援機関を利用することをオススメします。
また建設分野など、特定技能人材を受け入れるにあたり、業界団体または協議会に収める費用が別途発生する分野があります。
⑶ 2つの制度のメリットとデメリット
最後にまとめとして、「特定技能」と「技能実習」のそれぞれメリット・デメリットを整理しておきます。
メリット:『特定技能』
① 建設分野と介護分野を除き、受け入れ人数の制限がない
② 技能実習と比べて、外部コストを抑えられる
③ 技能実習と比べて、受け入れ後の事務作業が簡素
④ 国内人材の受け入れが可能なため、就労までの期間が短い
⑤ 技能実習から資格変更する場合、3年~5年の業務経験があるため、即戦力化しやすい
⑥ 相対的に日本語力が高い
⑦ 日本人が行う付随作業も従事できるため、取り組める幅が広い
デメリット:『特定技能』
① 現時点では海外での試験が限定されているので、技能実習と比べて候補者の確保が難しい
② 早期退職の可能性がある
③ 企業都合での解雇者(日本人従業員等)ができなくなる
メリット:『技能実習』
① 3年または5年間で関係性を構築できる
② 人材の確保が比較的容易
デメリット:『技能実習』
① 外部コストが高い
② 受け入れ後の事務作業が煩雑
③ 就労目的の在留資格ではないため、従事できる作業が定められている
④ 地域・職種によって、募集が困難
⑤ 採用後に入社するまでに一定の期間が生じる
⑷ まとめ
全体的に特定技能の方が自由度が高い制度といえますが、支援体制の整備が義務付けられていますので、入社前、入社後ともにそれなりの手間や費用は発生します。
一方で、「技能実習は転職ができないから良い」という意見も聞きますが、そもそも、転職を認めないという個人の権利を無視した仕組みに甘えているようでは組織としての成長はありえません。
どちらの制度としても、メリット・デメリットはありますが、『即戦力人材の獲得を目的』とするか、『中長期的な人材育成を目的』とするか、企業ごとによって考え方が変わってくるかと思います。
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