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更新日:2020/07/30

目次

福田氏プロフィール画像-1
IkuZo! Japanese Education Center Principal

福田 健太郎(フクダ ケンタロウ)

立命館アジア太平洋大学でインドネシア語を専攻。2004年から2010年までジャカルタの新聞社に務める。退職後帰国し、1年間限定で日本式の教室運営や生徒管理、マネタイズの方法を学ぶ。2012年より本格的に同社の経営に携わる。インドネシアには計15年以上在住。

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↑一番左が福田健太郎氏

「バブル期のイメージのまま日本とアジアの現状を捉えている方があまりにも多すぎます。現在の日本は物価も給料も安い国です。」そう語るのは現在インドネシア在住15年目、現地で日本語学校を経営されている福田健太郎氏です。現地に長年滞在し、多くのインドネシア人職員と協働されている同氏に「インドネシアから見た日本の姿」を伺いました!

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インドネシアにおける日本語の存在感は、日本における〇〇語の存在感と同じくらい

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↑「習字」を体験する塾生。アニメや漫画、ゲームなどの人気度合いがうかがえる。

ーーインドネシア現地での日本語学校を営むことになったご経緯を教えてください。

福田氏:2004年からお世話になった教授の紹介でジャカルタの新聞社に就職し2010年まで勤めました。在籍中の2006年に大学時代の友人(華人系のインドネシア人)と現在の会社を創業し、しばらくは本業の傍に行う小さな私塾として運営していました。転機は2010年に勤めていた新聞社を退職し、日本の学習塾で経営について1年間学んだことです。インドネシアよりも日本の方が学習塾の競争が厳しいため、非常に多くのことを学ぶことができました。その後インドネシアに戻り2011年から現在まで経営に専念しています。

ーーどういった方が塾生にいらっしゃるのでしょうか?

福田氏:メインの塾生は中学生や高校生で、ほとんどの生徒は漫画やアニメなどの日本文化をきっかけに学習を始めます。インドネシアでは2000年ごろから爆発的に日本の漫画やアニメがブームになり、現在ではブームは去ったものの、娯楽の定番として溶け込んでいます。

ーービジネス目的で日本語を学ぶ方は少ないのでしょうか?

福田氏:そのように思われている方が多いように思えるのですが、インドネシアにおける日本語は、日本におけるフランス語やドイツ語と似たような存在です。確かに1980年代の日本語学習者はビジネスを目的としていました。しかし1990年代後半からポピュラーカルチャーの方で日本語に興味を持つ人がマジョリティになり、現在ではビジネス言語としての地位が圧倒的に下がってきています。

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↑日本及び日本語のインドネシアにおける存在感(※現地における感覚値)©︎Lift.inc

ーー在留資格「技能実習」や「介護」で日本にいらしている方も徐々に増加してきており、てっきり現地での日本のプレゼンスは非常に高いのかと思っておりました。

福田氏:全くもってそんなことはありません。インドネシア人が「出稼ぎ先」としてイメージするのは、中東、台湾、香港などです。基本的に日本がイメージされることはありません。例えば、インドネシアで以前流行った、女性が出稼ぎに行き、男性は家事や育児に奮闘するというドラマでは、出稼ぎ先としてステータスが高いのは中東、香港、一番ステータスが低いのがマレーシアとして紹介されています。日本は選択肢としてイメージもされていません。

日本企業が抱く期待とインドネシアの実情には乖離がある。

Ikuzo4↑インドネシアの経済階層のイメージ ©︎Lift.inc 技能実習生は経済下流層がメイン。

ーーそれでは日本にいらっしゃる方はどういった方なのでしょうか?

福田氏:前提となる情報を整理すると、そもそも日本語を学びたいと思うような余裕がある方は都市に住む経済中間層以上です。彼らは仮に日本に留学するにしてもビジネス目的というよりは、日本の文化により親しむためです。一方技能実習制度を活用して現在日本に行っている方の多くが農村出身の方です。技能実習で日本に行く方の多くが母国への仕送りを目的としています。収入平均としては、月収1万〜3万ほどの層です。

ーー来日の目的が留学か技能実習かによって構成する経済層や日本語レベルが異なるのですね。

福田氏:日本企業と現地日本語学習者との認識のギャップを表す象徴的な事例があります。昨年日本で「介護」のビザが解禁された影響か、介護関係者がかなりインドネシアの日本語学校に訪れました。しかし日本企業が提示する条件では全く候補者が集まりませんでした。日本の介護事業者が提示できる条件で日本に来たいと思う現地の日本語学習者はほとんどいないということです

逆に日本企業が提示する条件で技能実習を希望する方の家庭は、全く塾通いができる経済層ではありません。受け入れ企業の担当者はインドネシアの日本語学校で*N4、N3レベルまで育てて欲しいという条件を提示されるのですが、そのレベルまでの教育にかかる費用を負担できる当事者がいないのが現状です。受け入れ側が日本語教育にかかる費用まで負担する以外他に方法はありません。

※日本語能力試験-JLPT4級または3級のこと。目安についてはこちら

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↑日本語を学ぶ塾生

ーー日本語学習にかかる費用については想定されていない事業者が多いと思います。実際に学習費用から負担されている企業の事例等はございますか?

福田氏:介護関連事業を行なっているある日本企業は、日本語学習にかかる費用や渡航にかかる費用を一部負担しています。具体的な話で行くとこの企業はタンゲランにある介護系の大学で希望者を募集し、初年度は5名の希望者が集まりました。彼らは昨年の5月から毎日塾で日本語のトレーニングを開始し、12月の試験でN3を取らなければなりませんでしたが、残念ながら全員落ちてしまいました。その後、5人中4人はNATテスト(日本語試験の一種)でなんとかN3同等の資格を取ることができ、日本に行けることになりました。「介護」資格における日本語要件はかなり厳しいということが実情です。

ーー日本企業は実情を把握して適切な施策を打っていく必要がありますね。

インドネシア国籍の方と働く上で気をつけるべきこととは?

Ikuzo6↑教室の様子

ーー 講師の方はほとんどインドネシアの方とのことですが、一緒に働く上で気をつけていらっしゃることはありますか?

福田氏:最も重要なのは観察力と想像力だと思います。ジャワの人は日本人と同じで本音と建て前の使い分けがうまいですし、上司、しかも外国人に腹の底を話してくれるまでの関係を構築するのは容易ではありません。ですから、表面的に出てくる情報よりも、日常のちょっとした表情や、従業員間の会話の量、誰と誰が一緒にランチを食べているかなどを観察して、社内の人間関係や誰がどんな不満を持っているかを推測するしかないと思います。

ーー何気ない動作から従業員の状態を読み取ることが大切なのですね。宗教の違いについては注意されている点はございますか?

福田氏:当社の講師はほとんどがイスラム教徒ですが、キリスト教徒や仏教徒もいます。よく断食月には特別な配慮が必要であると教えられますが、ムスリムである従業員にあれこれ配慮をしてしまうと、ムスリムではない従業員は不公平に感じることもあり得ます。一方でその不公平感はなかなか口に出して言いにくい種類のものということもあり、彼らの中に不満として蓄積してしまう。断食中のムスリムに配慮することに異議はないですが、やり方やバランスを考えないとかえって職場の雰囲気を悪くしてしまうこともあり得るのです。

常識的に考えれば、社内の特定のグループにのみ恩恵を与えれば、それが与えられなかったグループが不満を抱くのは当たり前の話です。それが外国の文化、宗教に関わることだと、その当たり前の考えができなくなることはよくあります。この例で言えば、自分がムスリムだったらどう感じるか、自分がムスリムじゃなかったらどう感じるか。様々な立場を想像してみることが必要ではないでしょうか。

反日感情を政治に利用されないように、受け入れ企業には丁寧な対応が求められる。

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↑取材に快く応じてくださった福田氏 (場所は弊社のオフィス)

ーー今後インドネシアの方と協働していく上で知っておくべきことはありますか?

福田氏:保守派の台頭についてですね。現在、インドネシアには二つの政治派閥があります。一つは「様々な民族と宗教グループがあるのだから、お互い妥協し合ってやっていかなければならない」という共存共栄派。もう一つは「マジョリティであるイスラムに基づく価値観を重視しよう」とするイスラム保守派です。これまでは前者がマジョリティでしたが、最近の大統領選挙では保守派が惜敗するなど、かなりその差が詰まってきています。

ーー西欧諸国でも極右政党の躍進が見られますが、インドネシアにもそういった潮流があるのですね。

福田氏:昔から潜在的な違和感はありました。その違和感とは、「華人などのイスラム教徒ではない、この国のメインストリームではない人ばかりがいい思いをしていて、メインストリームであるはずの「プリブミ」(肌の黒い東南アジア系の人々)である我々が、なぜ取り残されているんだ」という被害者意識です。その意識が正しいか正しくないかは別として、そう認識している方が以前から存在しており、近年思想的に力を持ち始めているのです。

ーー日本も排斥されかねないということでしょうか?

福田氏:現在のインドネシアは親日です。しかし数十年前にはマラリ事件のような反日暴動が起きたことだってあるのです。インドネシア人労働者が日本でひどい扱いを受けていることが頻繁に報道されるようなことになれば、親日の空気がひっくり返ることだってないとは言えません

賠償留学生だった前国民協議会議長のギナンジャール議長をはじめとして、戦後インドネシアと日本は政治的に太いパイプを維持してきました。現在は、松下電器と合弁企業を行なったモハメド・ゴーベル氏のご子息のラフマット・ゴーベル氏がもっとも強力なパイプですが、同氏は大臣職を更迭され、これが新幹線誘致で日本ではなく中国製が用いられることにつながったとも言われています。このように政治的なパイプも弱体化しているため、外国籍労働者の待遇に関する問題が表面化してきたときに、ハイレベルな政治対応がどの程度できるのか不安があります。

そういった背景もあり、日本企業には安価な労働力を求めてのインドネシア進出はして欲しくありません。私の周囲にいる関係者の方々は非常に誠実にビジネスをされていますが、一定数いる悪質な業者を排除できない限り、数年後には日本に対するイメージが激変している可能性も考えられます。対日感情が悪化すれば、在外邦人の安全にも関わってきます。日本企業には慎重な対応をお願いしたいと思います。

日本は物価が安い国。1980年代の認識を改める必要がある。

Ikuzo8↑中流以上のサービスにおける料金 ギャップ ©︎Lift.inc

ーー日本企業は慎重に外国籍従業員の受け入れを進めていく必要がありますね。

福田氏:企業だけではなく日本人は全体的にイメージを改めなくてはなりません。そもそも日本は物価が安い国です。それを知らない方がたくさんいます。例えば昨日日本で食べたイタリアンランチは1800円でしたが、同じようなランチをジャカルタで食べると確実に3000円以上になります。インドネシアは屋台等のサービスは非常に安いですが、中流以上のサービスで考えると、ジャカルタよりも日本の方が圧倒的に安いです。インドネシアの中心部にいる華人や、シンガポール、香港から見ると日本は物価も安いし、給料も安い国です。にも関わらず、未だに日本人のマインドはバブル期のままなんですね。

ーー正直私も東南アジア諸国と比較して日本の物価は高いものだとばかり思っておりました!

福田氏:私は日本に帰ると、服などの雑貨をまとめ買いします。それは物価が「安い」から。現在来日する外国人が多い理由の一つはコストバリューにあります。アジア各国の中央都市と比べると、日本は物価が安く、空気が綺麗で、静かだと認識されています。もし外国籍の方に日本で働いて欲しいなら日本人はバブル期の認識を改め、いずれは埋まっていくであろうわずかな賃金の差以外のメリットを訴求していく必要があります。

ーー大変視野が広がるお話をいただき誠にありがとうございました!

編集後記

今回は長年インドネシアでビジネスに取り組んでおられる福田氏に「インドネシアから見た日本」というテーマでお話を伺いました。今でこそ農村地区との賃金ギャップがあるものの、今後その差が埋まっていくでしょう。日本企業は外国籍人材から選ばれる企業になるためにはどうすれば良いのか考えて行動していく必要があります。

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