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  • 取締役副社長
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幹部は全員元技能実習生!VINAJグループ株式会社・HALSUCO送り出し機関副社長が語る技能実習生が失踪してしまう原因とその解決策とは?

ヒエップさん取材記事

↑VINAJグループ株式会社HALSUCO送り出し機関

「ベトナム人技能実習生の受け入れを決定し、監理団体から現地送り出し機関の案内を受けたが、果たして信頼できる相手なのだろうか?」

「技能実習生がベトナム現地送り出し機関に騙されて「失踪」してしまったというニュースを見たけれど、そもそもなぜそんなことが生じてしまうのか?」

そんなビジネスパーソンの情報ニーズにお応えするため、今回取材したのは、自身も技能実習生だった経験を生かし、関係者全員がWin-winとなる送り出しビジネスモデル作りに挑戦されているDOAN DUY HIEP氏です。

「技能実習生をお客様として扱わないからトラブルが生じてしまう。」

と語る同氏に、「失踪」などのトラブルが生じてしまう原因や、現在の現地送り出し事情についてお聞きしました!

お金を払った技能実習生がお客様じゃないという現実

ヒエップさん取材記事-1

↑VINAJグループ株式会社・HALSUCO送り出し機関では、技能実習生一人一人をお客様として、丁寧にキャリアサポートを実施する。

ーー単刀直入にお聞きします。なぜ技能実習生は失踪してしまうのでしょうか?

ヒエップ氏:技能実習生が失踪してしまう原因は大きく3つだと考えています。1つ目は適切な教育・情報提供がなされないために、技能実習生の抱くイメージと現実のギャップがあまりにも大きくなってしまうケース。2つ目は技能実習中のサポート、ケアがなく、技能実習生がストレスに耐えきれなくなってしまうケース。3つ目はキックバックや、悪質ブローカーの存在により、日本に来る前に多額の借金を背負ってしまうケースです。

ーーそれぞれについて詳細を教えてください!

Case1:適切な教育・情報提供がなされないために、技能実習生の抱くイメージと現実のギャップがあまりにも大きくなってしまう。

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↑VINAJグループでは、情報の齟齬が生まれないように家族も交えて丁寧に職務内容の説明をする。

ヒエップ氏:私自身の体験を元にそれぞれ説明していきます。まずイメージと現実のギャップについてですが、私が日本に対して抱いていたイメージは、ドラマや映画で観るような洗練された都市の生活「Toyota」「Panasonic」などの素晴らしい会社でみんな働いているというものです。日本に行けば私もそのような環境で働けると思っていました。しかし実際の実習先は古い水産加工の工場で、マイナス30度の凍えるような環境でした。

ーー送出し機関の職員からはどのように話を聞いていたのですか?

ヒエップ氏:仕事を紹介してくれたブローカーや担当してくれた送り出し機関の職員は、

「日本の仕事は簡単ですよ。いろんな先進的な機械があって、あまり人の力を使わないです。」

と言っていました。今振り返ってみると、企業担当者との面接の際に、そういった環境について日本語で説明を受けていたのかもしれませんが、当時は日本語がさっぱり理解できなかったためベトナム語で説明してくれるブローカーや、送り出し機関職員の話を信じて、淡い期待を抱いてしまいました。しかし現実は凍えるような寒さの中で、重い箱を運ぶ重労働給料も一年目は「研修生」ということで月給6万円。何度も逃げようと考えました。

ーー適切な情報が与えられなかったのですね。

Case2:技能実習中のサポート、ケアがなく、技能実習生がストレスに耐えきれなくなってしまう。

ーーそれでも「失踪」せずに実習を乗り越えられたのはなぜでしょうか?

ヒエップ氏:私の場合は、同じように実習に来ていた大学時代の先輩に相談することができ、その先輩に

「大変なのは一年目で、二年目になるとだいぶ慣れてストレスも取れてくるよ。失踪はあまりにもリスクが大きすぎるからなんとか頑張って耐えなさい。」

とアドバイスをいただき、何とか思いとどまることができました。そして実際一年経つと仕事にもなれ、昇給もしましたので、最後まで実習をやり抜くことができました。しかし私と一緒に日本に行った20人中半数以上が失踪してしまいました。私の場合のようにメンタル面のサポートやケアをしてくれる知り合いが彼らにはいなかったのだと思います。

ーー実習中に継続的にサポートしてくれる信頼できる人の存在が重要なのですね。

Case3:キックバックや、悪質ブローカーの存在により、日本に来る前に多額の借金を背負ってしまう。

ーー借金についてはどのような状況だったのですか?

ヒエップ氏:ベトナムでは技能実習制度を活用する若者は借金がしやすくなっています。そしてその貸し出し金利が高く、私が借金をした時は利息が年間14%でした。ベトナムのブローカーに騙されて100万円の借金をしてしまったので60万円の利息を支払わなければなりませんでした。ですから初年度の月収が6万円と分かった時は、本当に絶望感を味わいました。

ーーそんなに苦しい状況だったのですね。

ヒエップ氏:こういう辛い状況にある時にスーパーに買い物に行くと、日本に住んでいるベトナム人悪徳ブローカーが近寄ってきて、

今どういう条件で働いている?俺に20万円支払えば、より好条件な企業で働けるように斡旋してあげるよ。

と勧誘されます。ここで失踪するとどうなるかということを理解していない技能実習生は日本にいるブローカーの甘い言葉を信じてついて行ってしまうのです。私が日本にいた時、そういった悪質なブローカーはたくさんいましたし、現在もこういったブローカーの存在が失踪の大きな原因になっているようです。

日本をよく知らない送り出し機関と昔ながらの商習慣が悪循環を生む。

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↑ VINAJグループ株式会社・HALSUCO送り出し機関ではブローカーを通さず自社で全ての人材を募集できている。

ーーなぜこのような状況が生じてしまっているのですか?

ヒエップ氏:送り出し機関の社長には昔台湾やマレーシア、中東をターゲットとした人材送り出しビジネスをされていた方が多いです。彼らは日本についてよく知らないし、技能実習生の経験もありません。そもそも実習生に伝えられる情報を持っていないのです。

ーーよく聞くキックバックの問題もそういった商習慣の違いが背景にあるのですか?

ヒエップ氏:そうですね。どこでキックバックが生じているかというと、過去に中華圏とビジネスをしていた送り出し機関が多いんです。

監理団体との関係が無ければ、送り出しビジネスは成り立たないため、特に営業力が弱い送り出し機関は監理団体に対し、

うちを利用してくれたら1名採用につき30万〜40万円支払います。

という昔の中華圏のやり方で営業をしている場合が多いです。破格の監理費、例えば2万円で監理している監理団体などは割りに合わない部分を送り出し機関からのキックバックでまかなっている可能性があります。

ーー安い値段にはそれなりの理由があるのですね。

ヒエップ氏:可哀想なのは技能実習生です。キックバックの費用も技能実習生が負担することになってしまいます。現在、悪質にキックバックしているような送り出し機関の技能実習生は在留資格を取得できないことになっており、状況は徐々に改善されつつあります。

VINAJグループ株式会社・HALSUCO送り出し機関の4つの新しい取り組み

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↑VINAJグループ株式会社・HALSUCO送り出し機関が日本に送り出した技能実習生。

ここからは、ヒエップ氏が本年2月より開始された送り出しビジネスにおける変革について教えていただきます。

①主体性を養う教育

ーー軍隊のような教育が問題になっていますが、そのような状況をどのように改善されたのでしょうか?

ヒエップ氏:「もしそれができないと誰に迷惑がかかるのか?」ということを自分で考えて、自発的に行動できるような教育に転換しました。それだけではなく、技能実習生で3年間で困った経験から日本で働くための20テーマを絞り、例えば「将来設計」「いかにして日本人と仲良くなるのか?」「日本とベトナムの文化の違うところ。」などを丁寧に教育し、日本の生活していく上での理想と現実のギャップを可能な限り小さくしようと努めています。

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↑寮生活では日本での生活で困らないように5S(整理・整頓・清潔・清掃・躾)を常に意識。

②サポートスタッフになんでも相談できる信頼関係の構築と月一ビデオ面談

ーー実習中はどのようなサポートをされているのでしょうか?

ヒエップ氏:ベトナム側のサポート部が月一で実習生とビデオ面談し、問題がないかヒアリング、適宜アドバイスをしています。ベトナムで教育している6ヶ月間でなんでも相談できる関係性を作っておくことで、トラブルになる前に相談してもらえます。

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↑月に一回ベトナムにいるサポートスタッフと面談し、悩みを解決する。

ーーどんな話をするのでしょうか?

ヒエップ氏:日本での生活についての質問や、人間関係のカウンセリングです。例えば、電車の乗り方や、ベトナムへの送金の仕方であったり、日本人社員とどうすれば良い関係性が築けるのか、技能実習生同士の喧嘩の相談だったりです。こういった細かな不安を一つ一つ丁寧に解消しておくことで、必ず失踪を防ぐことができると考えています。

ーー痒い所に手が届く対応が必要となるのですね。

③実習生の家族に対する丁寧な情報提供

ヒエップ氏:また、日本での実習が決まった技能実習生のご家族への情報提供を丁寧に行なっています。関係者全員が適切なコンセンサスを持っておかなければうまく行かないことも多いからです。

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↑実習生の家族訪問の様子、正しい情報提供で実習生のセーフティネットを作る。

ーーかなり手厚くサポートされているのですね。

ヒエップ氏:ベトナムでは、Facebookのグループで送り出し機関、日本企業の良し悪しが一瞬で広まります。2月にスタートした本事業ですが、いい噂が広まって既に200人まで急増しています。

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↑出国前の家族説明会の様子。

④顧客のLTV(顧客生涯価値)を最大化するビジネスモデルの構築

ーーご自身の経験があるからこその改革ですね。先程のお話でいくと、教育や実習中のサポートに力を入れると経営が厳しいのではないですか?

ヒエップ氏:そこは長期的な視点で考えることにしています。誠実にサポートをして、信頼関係を築くことができれば、実習が終わってからもお付き合いすることができます。彼らが実習3年間を終了してからの進路は2パターンあり、一つはベトナム国内で就職を希望するパターンもう一つは日本に再度戻ることを希望するパターンです。どちらの場合も我々はサポートが可能で、そこでも利益を上げることができます。これが私たちが考える、送り出しビジネスの全体像です。

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↑実習後のサポート。顧客のLTVを最大化する。

VINAJの取り組みがミャンマーにも広まる。

ーーミャンマーでも送り出し事業を開始されたとお聞きしました。

ヒエップ氏:ミャンマーの送り出し機関の社長とお話させていただく機会がございまして、弊社の取り組みを説明したところ意気投合し、一緒に事業を行うことになりました。ミャンマーは現在人口6000万人くらいですが、国に仕事が少ないため、若者の仕事があまりない状況です。一方で、日本に送り出すインフラはまだまだ整っていません。言ってみればミャンマーはベトナムの十年前と同じ状態なのです。そこで私たちの送り出し機関としてのノウハウを生かそうということになりました。ミャンマーでも最適なビジネスの形を追求していきます!

ーーミャンマーでの挑戦も応援しています!今回は貴重なお話誠にありがとうございました!

編集後記

今回は技能実習生、送り出し機関職員の経験を生かして人材ビジネスを展開しているヒエップ氏を取材しました。誠実な送り出し機関か見極めるためには、

①実習前の教育カリキュラムに認識のギャップを埋める工夫がなされているか?

②実習中のサポート体制は十分か?

③実習後のキャリア形成支援制度を有しているか?

以上3点が大切なようです。

また監理団体に関しては、

①監理費用(監理団体に毎月支払うお金)が2万などあまりにも安い場合、その監理団体は送り出し機関からキックバックを受けている可能性が高いこと。

②そのキックバック代はほとんどの場合技能実習生の借金から支払われ、経済的困窮から失踪の可能性が上がること。

以上2点も頭に入れておく必要があります。

全ての値段には理由があり、良識ある選択が必要であるということですね。

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DOAN DUY HIEP 氏

VINAJグループ株式会社・HALSUCO送り出し機関 取締役副社長

2009年から日本の水産加工業者で3年間の技能実習を経験。その後2011年から2019年の1月までベトナムの送り出し機関で働く。その後独立し2019年2月より現職。技能実習生だった経験を生かし、技能実習生、企業双方が幸せになる事業の形を模索している。現在はベトナム現地大学と提携した、ITエンジニアの送り出し事業および、日本企業のベトナム進出コンサルティング事業も展開している。

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