「留学生のアルバイトさんに卒業後も引き続き働いてもらえたらいいのに。。。」
そう思っていらっしゃった方に朗報です!
本年度5月30日より日本の大学や大学院を卒業した日本語力の高い外国人留学生は、卒業後にこれまで禁止されていた製造業の単純労働や飲食店、小売店など販売スタッフ職に従事することが可能になりました。
具体的にはどんな条件下で許可され、雇用上どんな課題があるのかなど、本記事では上記内容を規定した在留資格「特定活動」の46号告示について詳細を解説いたします!
その他の在留資格についても知りたいという方は、あわせて在留資格入門編をご参照ください!
特定活動46号告示とは?
在留資格「特定活動」とはその他の資格で通常許可されていない活動内容でも、法務大臣より特別に許可された場合に日本に在留することができるようにする在留資格です。今回ご紹介するのは現在告示されている49号のうちの46号です。他の告示内容の紹介など「特定活動」の詳細については下の記事をご参照ください。
在留資格「特定活動」とは?
特定活動46号告示制定の経緯
これまで外国人留学生の就職は狭き門でした。一般的な就労ビザである「技術・人文知識・国際業務」では飲食店及び小売店などのサービス業や製造業の作業員として就労することは不可能だったためです。
しかし実際には、訪日外国人の増加や外国人労働者と日本人スタッフの橋渡しを担う外国人の採用ニーズは多くありました。今回の46号告示はそれらのニーズに応える内容になりました。
特定活動46号告示を制定した政府の思惑
(在日留学生数の推移)
2016年6月に閣議決定された日本再興戦略で、
「外国人留学生の就職率を3割から5割に向上させる。」
という目標が告示されました。
2016年当時、日本における就職を希望する外国人留学生は全体の約64%である一方で日本の大学及び大学院を卒業した23,946人の外国人のうち国内に就職した者は8,610人(36%)という状態でした。(出典)「平成28年」「日本学生支援機構」
この約30%のギャップの主たる原因は、先ほど申し上げたような有効求人倍率の高いサービス業や製造業などの業界で日本語を話せる優秀な外国人を採用することが在留資格の制限上非常に難しかったことがあります。
数値目標を達成するため「46号告示」を制定し大幅な規制緩和を行うことで、大学・大学院卒業後に日本に残りたい外国人の就労の選択肢が増やしたかったと考えられます。
特定活動46号告示で規定されている仕事の条件は?
在留のために満たさなければならない条件は大きく6つあります。一つ一つご紹介します。
①常勤(フルタイム)での雇用であること。
アルバイト・パートは対象にならず、派遣形態も認められておりません。
②日本の大学、日本の大学院を卒業・修了し学位を授与されていること
中退者や、海外大、短大、専門学校卒は対象になりません。学位を持たない場合は「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」での就労が考えられます。
③日本語能力試験N1を取得しているまたはBJTビジネス日本語能力テストが480点以上であること
例外として大学・大学院で「日本語」を専攻して卒業した方は認可されます。弊社に在籍しているN1の外国籍社員と話してみた実感としては日本語での会話にほとんど違和感がないレベルです。
※ただしN1を保有している方でも、日本人との会話経験の差によって、会話力に差が出てしまうことは当然です。逆に面接時に日本語力がイマイチな方でも、仕事をしているうちにブラッシュアップされて、違和感なく話せるようになる方もいらっしゃいます。資格はあくまでも参考程度に考えていただければと存じます。
④日本人と同等額以上の報酬であること。
昇給面を含め、日本人大卒者・院卒者と同等額以上の報酬である必要があります。同じ業務に従事する場合の給与相場や、母国での実務経験がある方はその経験が加味された報酬であるかどうかも考慮に入れて報酬額を決定する必要があります。
⑤日本語を用いた円滑な意思疎通を要する業務であること。
実習生などの他の外国人社員と日本人をつなぐ「翻訳・通訳」の要素がある業務や、日本語を使ってコミュニケーションをする業務である必要があります。要は単純労働のみでは許可されないということです。
⑥日本の大学や大学院で習得した広い知識及び応用的能力を活用する業務であること。
日本で学んだ学問の知識を背景とする業務が一定水準以上含まれていること、または将来的にそういった知識労働に従事することが見込まれていることが必要。このビザで滞在している外国人が転職する場合には他の就労ビザの変更手続きが必要です。
※以上が6つの要件ですが、現時点では運用開始直後ということもあり、実際の申請時には、業務内容やその時間配分などの詳細な説明を求められることが多くなっています。
特定活動46号告示で可能となる仕事の具体例は?
①飲食店の接客スタッフ
飲食店に採用され、店舗において外国人客に対する通訳を兼ねた接客業務を行うものです。それに併せて、日本人に対する接客を行うことを含見ます。
※ 厨房での皿洗いや清掃にのみ従事することは認められません。
②工場のラインワーカー
工場のラインにおいて、日本人従業員から受けた作業指示を技能実習生や他の外国人従業員に対し外国語で伝達・指導しつつ、自らもラインに入って業務を行うものです。
※ ラインで指示された作業にのみ従事することは認められません。
③小売店の接客販売
小売店において、仕入れや商品企画等と併せ、通訳を兼ねた外国人客に対する接客販売業務を行うものです。それに併せて、日本人に対する接客販売業務を行うことを含みます。
※ 商品の陳列や店舗の清掃にのみ従事することは認められません。
④ホテルや旅館のスタッフ
ホテルや旅館において、翻訳業務を兼ねた外国語によるホームページの開設、更新作業を行うものや、外国人客への通訳(案内)、他の外国人従業員への指導を兼 ねたベルスタッフやドアマンとして接客を行うものです。それに併せて日本人に対する接客を行うことを含見ます。
※ 客室の清掃にのみ従事することは認められません。
⑤タクシードライバー
タクシー会社に採用され、観光客(集客)のための企画・立案を行いつつ、自ら 通訳を兼ねた観光案内を行うタクシードライバーとして活動するものです。それに併せ て、通常のタクシードライバーとして乗務することを含見ます。
※ 車両の整備や清掃のみに従事することは認められません。
⑥介護スタッフ
介護施設において、外国人従業員や技能実習生への指導を行いながら、外国人利用者を含む利用者との間の意思疎通を図り、介護業務に従事するものです。
※ 施設内の清掃や衣服の洗濯のみに従事することは認められません。
2020年4月2日 入管窓口で確認した内容を追記します。
①パチンコ店やゲームセンターなどの店舗管理
窓口の方曰く、
「少なくとも技人国のビザを取ってるのは見たことない、風営法関連の業務だからダメといった規定はないが、実際は難しいのではないか。特定活動46号でも厳しいと思う。」
とおっしゃっていました。風営法関連業務の業種については例え『管理』業務であっても難しいようです。
②特定活動46号で建設現場作業+実習生サポート(管理・通訳)
窓口の方曰く、
「特定活動46号で建設現場作業と実習生の管理・通訳業務の兼務であれば、在留資格が降りる可能性が高い。むしろそういう仕事のためのビザ。」
とおっしゃってました。
日本の4年生大学を卒業した方でN1を持っている方の場合、現場作業を敬遠する可能性が高いですから、在留資格の問題というよりは、人材募集の方が課題となりそうです。
③飲食店などの一般的な店舗管理
窓口の方曰く、
「店舗管理自体は技人国の対象だが、本人の能力や企業の規模が重要。本当に管理で人を雇うだけの規模なのか、本人がそういう能力のある人なのかを重点的に審査する。」
とのことです。大規模にチェーン展開している企業でないと厳しいようですね、、、
特定活動46号告示で外国人留学生を雇用するためには?
採用フローは基本的に日本人を雇用する場合と一切変わりません。自社で募集するか、人材会社に依頼するかです。就労の際に在留資格変更申請が必要となります。
特定活動46号告示で在留している外国人転職者を雇用するには?
通常外国人を雇用する場合には在留カードをチェックすれば良いのですが、特定活動46号告示外国人の場合、在留カードには「特定活動」とのみ記載されていますので、それだけでは該当の外国人を雇用可能かどうかわかりません。必ずパスポートに添付されている「指定書」を確認し、雇用後には在留資格変更許可申請を行ってください。
「指定書」の内容は下記になります。
出入国管理及び難民認定法第七条第一項第二号の規定に基づき同法別表第一の 五の表の下欄に掲げる活動を定める件(平成二年法務省告示第百三十一号)の別 表第十一に掲げる要件のいずれにも該当する者が,下記の機関との契約に基づい て,当該機関の常勤の職員として行う当該機関の業務に従事する活動(日本語を 用いた円滑な意思疎通を要する業務に従事するものを含み,風俗営業活動(風俗 営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(昭和二十三年法律第百二十二号) 第二条第一項に規定する風俗営業,同条第六項に規定する店舗型性風俗特殊営業 若しくは同条第十一項に規定する特定遊興飲食店営業が営まれている営業所にお いて行うもの又は同条第七項に規定する無店舗型性風俗特殊営業,同条第八項に 規定する映像送信型性風俗特殊営業,同条第九項に規定する店舗型電話異性紹介 営業若しくは同条第十項に規定する無店舗型電話異性紹介営業に従事するものを いう。)及び法律上資格を有する者が行うこととされている業務に従事するものを 除く。)
記 機関名: 本店所在地:
特定活動46号告示とその他の就労ビザとの違いは?
下記の一覧表をご参照ください。
(就労ビザ特徴比較一覧表)
特に特定技能は単純労働業種の中でも14業種に絞られているのに対し、特定活動は業種・職種の制限がないことに注目です。
※ただし風俗営業活動や大学・大学院で習得した知識や能力を必要としない業務のみに従事することはできません。
特定活動46号告示で在留している外国人の家族はアルバイトできる?
結論から申し上げますと可能です。
「特定活動46号告示」で在留する外国人の家族は在留資格「家族滞在」ではなく「特定活動47号告示」で在留することになります。
出入国管理局に問い合わせたところ「特定活動47号告示」で在留している配偶者の方がアルバイトをしたい場合、資格外活動許可申請をすれば可能だということです。
資格外活動許可については下記の記事をご参照ください。
留学生がアルバイトする際に必要な「資格外活動許可」とは?
特定活動46号で外国人を雇用するメリットは?
大きなメリットは3つです。
①即戦力が期待できる。
本資格で採用できる方は、少なくとも4年以上は日本に在留しているため、日本の文化やコミュニケーション方法を理解しており、特にアルバイトからの正社員雇用だと即戦力となることが期待できます。
②「特定技能」や「技能実習」とは異なり、日本人とほぼ同じように採用・管理できる。
日本人と異なるのは在留資格の変更・更新に関する手続きに関する書類作成くらいです。「特定技能」や「技能実習」で雇用する場合には特定支援団体や監理団体などの第三機関に支援や監査を依頼する場面が多々出てきますので、その煩雑さがないこともメリットの一つでしょう。
③長期的な関係が期待できる。
在留資格の更新に制限がないため、仕事がある限り日本に在留することが可能です。技能実習や特定技能だと在留期間に制限があるため、どうしても短期の存在になってしまいがちですが、特定活動なら長期的な関係にできる可能性があります。
想定される課題
想定される課題は下記の2つです。
①留学生から該当職種の人気がない。
多くの日本語力の高い人材は貿易事務や通訳など、母国語と日本語の両方を活用できる職場を希望する傾向があります。制度は整っても対象となる外国人が製造業やサービス業での就労を望まない可能性があります。
②実習生を雇用している企業は、日本語力は高くとも技術的には未熟な特定活動人材が入社してきた際に、給与額の差で不満が生じないか?
日本語が得意というだけで、自分よりも仕事ができない人間が上司となることで、既存の外国人社員が不満を持ってしまう可能性があります。
課題の解決策
課題に対し考えられる施策は下記の2つです。
①キャリアアップの道筋を明確に示す
多くの外国人にとっては、この特定活動46号ビザから始まり、その後より高度な業務にキャリアアップしていくというのが理想でしょう。どのように頑張ればキャリアアップを目指せるのかという道筋を示すことで製造業やサービス業への就労が選択肢になかった外国人に自社の魅力をアピールすることができます。
②既存社員にどんな目的で雇用したのか第三者から明確に伝える。
既存の日本語がまだ得意ではない外国人社員の上位職として採用する場合、既存社員への説明が非常に重要になります。同じ仕事を期待している訳ではなく、日本語が得意で通訳ができるから上位職での雇用なのだという理由をはっきりと伝えるようにしましょう。日本語ができるようになれば同じように昇給する可能性も示し、学習のインセンティブになるように誘導すれば一石二鳥になるでしょう。
Global HR Magazine 運営会社からのお知らせ
2019年5月30日告示のおかげでこれまできなかった、サービス業と製造業での外国人雇用ができるようになリます。
在留資格の許可要件は↓の6つです。
- フルタイム正規雇用
- 日本の大学を卒業・大学院を修了
- 日本語能力試験N1またはBJTテスト480点以上
- 日本人と同等以上の報酬額で雇用される
- 日本語を用いたコミュニケーションを必要とする業務
- 大学で学んだことを生かせる仕事
諸々の課題は残されていますが、今回の46号告示によって、外国人留学生を雇用しやすくなったことは間違いありません。
特定技能とあわせて留学生の選択肢を増やすべく、リフト株式会社でも積極的に人材紹介を行っておりますので、アライアンス提携ご希望の学校様は是非お問い合わせください。