更新日:2023/04/20
目次
外食業の人材不足は2023年で29万人と見込まれています。
新型コロナウィルス感染症の影響で一時的に採用需要が冷え込んではいますが、中長期的に見たときに飲食店スタッフの人材が不足するという大きな流れは変わりません。
そこで本記事では、外食業で働くことのできる在留資格「特定技能」について解説いたします。
特定技能に関する基本的な概要につきましては、以下の記事もあわせてご確認ください。
▶︎在留資格「特定技能」とは?特定技能外国人の採用から支援まで徹底解説
⑴「外食業」の「特定技能」はなぜできた?
在留資格「特定技能」は、深刻化する人手不足に対応するための生産性向上や日本人確保のための施策を行っても、人材確保が困難な状況にある業界において、一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れる制度のことです。
外食業の人材不足は、2023年で29万人と見込まれております。当然この数字は、機械化やAI分析による労働生産性の向上でも対応が難しいため、特定技能の対象業種となりました。
実は外食業分野においては、すでに18.4万人の外国人が活躍しています。
下記は2019年10月末の統計をもとに作成した外食業における在留資格別の構成比です。
( 農林水産省 食料産業局 外⾷業分野における新たな外国⼈材の受⼊れについて )
同表で約7割を占めている留学生・家族滞在の方は働ける時間に制限がありますし、専門的・技術的分野に関する在留資格は資格要件が非常に厳しいため、これまで外食業分野における外国人の就労は大変難しいものでした。
今回の「特定技能」の目的は「人手不足に対応するため」となっており、これまでの在留資格よりだいぶ融通が効く資格になっています。政府の発表では同資格によって外食業では5年間で4万1000人〜5万3000人の外国人を受け入れる見込みです。
特定技能の在留期間は5年が最長となっていますが、「特定技能2号」が認められれば、永住権への道も開かれます。
⑵「外食業」の「特定技能」の外国人が従事可能な業務は?
外食業 | 特定技能 | 技能実習 |
技術・人文知識・国際業務 |
留学生 | 家族滞在(就労ビザ外国人の家族) |
従事可能な範囲 | 制限ほぼなし | 飲食チェーンのセントラルキッチン等の大規模食品加工拠点における、食品の加工 | 外国人の通訳対応・店舗マネジメント・母国の伝統料理の調理 | 制限ほぼなし | 制限ほぼなし |
時間制限 | 日本人と同様 | 日本人と同様 | 日本人と同様 |
週28時間 長期休暇中は週40時間 |
週20時間 |
取得難易度 | 易 | 易(ただし企業側のコスト大) | 難 | 易 | 易 |
( 外食業における在留資格比較表 )
特定技能外国人が従事可能な業務は外食業全般です!
具体的には飲食物調理や接客などの業務への従事が可能になります。喫茶店や、宅配専門店も可能です。
これまでできなかった、飲食店でアルバイトしている留学生が卒業後にそのお店で正社員になることも可能になります。
※仮に日本語がN1レベル以上の外国人であれば、特定技能と違って支援義務がない「特定活動(本邦大学卒業者)」資格での就労も可能です。下記の記事をご参照ください。
⑶ 特定技能外国人が「従事できない業務」は?
風営法規定の「接待飲食等営業」を営む営業所における就労及び、同法規定の「接待」を行うことはできません。
その他宅配だけの仕事や清掃、皿洗いだけの仕事など、調理や接客を全く行わないことは認められておりません。
※ちなみにフィリピンパブで働いているフィリピン人は、「日本人の配偶者」や「永住者」などのいわゆる身分系ビザで日本に滞在している方々です。身分系ビザについては下記の記事をご参照ください。
日本人を雇うのと変わらない?「身分系ビザ」の詳細をまとめました。
⑷ どうすれば「外食業」で「特定技能」を取得できるの?
「特定技能(外食業)」を取得可能なのは「医療・福祉施設給食製造」の第2号技能実習を修了した者か、①外食業技能測定試験 ②「日本語能力試験(JPLT)N4以上(国内・国外)」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)(国外)」に合格した外国人です。前者はまだ修了者がいないので、今回は後者についてまとめます。
01 外食業技能測定試験
技能試験とは正式には、一般社団法人外国人食品産業技能評価機構(OTAFF)が運営する、「外食業特定技能1号測定試験」のことです。2020年11月に国内で行われた試験では、4,211人中1,979人が合格し、合格率は47.0%となっております。試験は全国各地で実施されます。今後の試験日程はこちらのページでご確認ください。
また国外試験は、カンボジア、フィリピン、インドネシア、タイ、ネパール、ミャンマーの6か国で行われています。
試験内容
試験では下記の3分野について問われます。
①接客全般
②飲食物調理
③衛生管理
配点についてA,B,Cタイプがあり、標準的なAタイプ、調理の配点重視のBタイプ、接客の配点重視のCタイプから受験者が希望職種に合わせて選択できます。
受験資格
在留資格を持っていて、試験日に満17才以上である人が受験できます。観光などで短期滞在ビザを取得した人も対象です。在留資格のない不法滞在者は受験できません。
受験料
個人負担で7,000円かかります。将来の試験合格者を囲い込みたい企業は、この試験料を負担してあげるといいかもしれません。
合格基準
満点の65%以上の得点率となっております。
不正行為に対するペナルティ
カンニングなどの不正行為を行った者は5年間の受験資格剥奪などのペナルティが課せられます。
どう学習すればいいのか?
学習用のテキストは一般社団法人日本フードサービス協会で無料配布されています。
テキストをご確認いただければ分かりますが、日本語がある程度できれば、試験のレベルはさほど難しくありません。日本語の学習に力を入れると良いでしょう。
②「日本語能力試験(JLPT)N4以上」または「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」
「日本語能力試験(JLPT)N4以上」はある程度日常会話ができ、生活に支障がない程度の日本語能力と言われています。試験はマークシート方式で年2回7月と12月に行われます。
「国際交流基金日本語基礎テスト(JFT-Basic)」はJLPTと同様の目的で行われますが、実施場所ごとにスケジュールが異なります。スケジュールはこちらのサイトからご確認ください。日本国内での試験は2021年3月1日から実施されます。
「外食業」で「特定技能」外国人を雇用するための条件は?
①食品産業特定技能協議会へ加入し必要な協力を行う
食品産業特定技能協議会とは農林水産省、特定技能所属機関、登録支援機関、業界団体、関係省庁の連携強化を図り、「特定技能」が適正に運用されるように統括を行う機関のことです。「特定技能」外国人を受け入れる各企業は、一人目の1号特定技能外国人の在留資格が許可された日から4ヶ月以内にこの協議会への加入が必要です。
②空港への送り迎えなど定められた支援内容の全てを実施
特定技能外国人の受け入れのためには法律で定められた支援を行う体制を構築するか、あるいは支援内容の一切を「登録支援機関」に委託する必要があります。
特定技能1号外国人が外食業企業で働ける期間は?
現状のところ5年間です。
但し、医療・福祉施設給食製造の技能実習や留学生アルバイト活用ができる場合、より長期での雇用が可能となります。
特定技能1号外国人を雇用する場合の費用相場は?
特定技能1号外国人の給与に関しては同職種に従事する日本人と同等以上とされています。
さらに、在留資格申請に係る費用や登録支援機関に支援を委託する場合には支援委託料として30-50万円程発生します。また、送出機関を通して海外から呼び寄せる場合の手数料が発生することがあります。
まとめ
今回取り上げた「外食業」の「特定技能」によって、調理、接客業務に従事する外国人の雇用が可能になりました。が、法で許可されたからといって、実際に外国人が自社の店舗に就職、定着してくれるかは保証されません。技能実習生とは違い転職可能であるという特定技能の特徴から考えても、いかに幸せな職場を用意できるのかが重要な課題です。ただ、人材確保のチャンスが増えたことには違いありませんので、積極的に活用していきましょう。
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