更新日:2021/08/03
目次
代表取締役社長 鈴木 盛夫
所在地:〒169-0072 東京都新宿区大久保2-3-18 三蔵住建第一ビル5階 TEL 03(3207)1000/FAX 03(3207)1013
設立:平成15年3月1日
事業内容:とび・土木工事業
社員及び専属下請作業員数:約100名
(佐々木架設の皆さん。同社では計5名の技能実習生を受け入れている)
「今後の日本を考えれば、もっと外国籍の方の雇用条件を良くして、建設業界に定着してくれる方を増やしていかなければならないと思いますね」
そう語るのは佐々木架設株式会社(とび業)の鈴木社長です。
同社では技能実習生の指導員に特別手当を支給したり、実習生に主食のお米を全支給したりと非常にユニークな取り組みを行っています。
今回は同社がなぜそのような取り組みをされているのか、建設業界全体の課題と技能実習制度の活用に関する考え方を取材しました!
もう昔ながらの技術指導は通用しない
(とび業について分かりやすく説明してくださる鈴木社長)
ーーまず技能実習制度を雇用しようと思ったきっかけを教えてください。
鈴木社長:以前はGATENなどの建設業界に強い求人媒体に求人情報を掲載すれば、5人以上の反響があり、そのうち2、3人を採用することができました。定着するのはその内1名とかなのですが、それでも継続的に採用できるのであれば良いなと思っていたんです。しかしここ5年は求人広告を出しても応募すら来ません。昔と比べ給与は格段に上がっているのにも関わらずです。
ーーなぜ募集が難しくなってしまったのでしょうか?
鈴木社長:若者の価値観の変化と建設業の旧態依然とした風土が原因だと思っています。今の若者はお金ではなくて、楽な仕事や自分の時間が欲しいと考えます。豊かな時代に育ったため、
「お金を稼いで豊かになってやる。」
というギラギラした思いを持っている方は少ないですよね。辛いことを我慢してお金を稼がなくても、もう十分豊かだと考える訳です。
ーーなるほど、旧態依然とした風土とはどういうことでしょうか?
鈴木社長:例えば「仕事は見て覚えろ!」や「朝は下っ端が一番にきてテーブルを拭け!」といった昔ながらの教育のことです。2年前に高卒の子が入社したことがあったのですが、私より上の世代の親方の下につけたところ、その価値観が合わずに1ヶ月くらいで辞めてしまいました。
ーーただでさえ就労希望者が少ない中で、せっかく入った社員が辞めてしまったのでは苦しいですよね。
鈴木社長:そうなんです。だからこそ業界の人間には意識改革が必要です。もう時代は違うんだと。私も上の世代の職長達に
「見て覚えろという時代じゃないんだからきちんと言葉で教えてあげてください。理不尽なルールなどはもう辞めてください」
としつこく伝えるようにしてきました。だんだん彼らも後輩が増えていかないことに気づき、変わらないといけないという意識が芽生えつつありますね。
(見て覚えろということはせず、高所での作業を行う前に必ず丁寧に研修を行う)
体力等よりも、一緒に来る実習生同士の仲を重視
(技能実習生の皆さん)
ーー実際に技能実習生の受け入れを決めるにあたり不安はありませんでしたか?
鈴木社長:日本語がどのくらい話せるのかというのは少し不安でしたが、基本的な言葉はベトナムで教わってくると聞いていましたし、他社さんも結構採用していましたので、そこまで心配はしなかったですね。
ーー採用にあたり気をつけられたことはございますか?
鈴木社長:ベトナムのハノイで行われた面接では、まず、実際に足場を組み立てているところや体力テストとして腕立て伏せをしているところを見たのですが、それよりも私は一緒に日本に来る実習生同士の仲の良さを重視しました。
ーーそれはなぜでしょう?
鈴木社長:最低日本で3年間共に働いていく上で、実習生人同士のコミュニケーションが取れていないと大変だと思ったからです。友達がいないと辛かったり、くじけたりしてしまうのではないかと。私自身大学時代に1ヶ月間海外旅行に行ったことがあったんですけど、仲間うちでも、ずっと行動を共にしていると仲が険悪になってくることがありました。赤の他人であればなおさら厳しいですよね。
ーーなるほど!仲の良さはどのように判断されたのですか?
鈴木社長:面接時に、このメンバーとは仲が良いかと聞いたり、この先3年間この人となら一緒にやっていけるかと聞いたりして、一緒に頑張れるという回答が帰ってきた子達を選ぶようにしていました。ちなみに1期生は建設短期大学の同期と聞いたことが決め手です。
一生懸命で明るくて本当にいい人材だと思います
(技能実習生のチュオンさん)
ーー技能実習生の受け入れが開始して良かった点を教えてください!
鈴木社長:やっぱりみんな一生懸命ですし、休まないですし、明るいし、いいですよね。コミュニケーション能力が非常に高く、仕事を覚える吸収力も非常に高いです。こういったら何ですが、日本の若者よりうちに来ているベトナムの子達の方が本当にいい人材だなと思っておりますね。今の日本人はすぐ休んだり、休んでも連絡してこなかったり、そのまま音信不通になってしまう事も多々ありますから。彼らは3年間は必ず頑張ると覚悟を決めてきているので、そう簡単に休まないですし、そこがいいですよね。
ーー逆に困った点はございましたか?
鈴木社長:強いてあげるとしたら日本での基本的な生活の仕方を教える最初の段階ですかね。例えば電車の乗り方等です。建設業の多くの企業は親方の家に集まって車で一緒に現場に行き、作業するときも帰るときも一緒という形なのですが、弊社は電車に乗って自分達で直行直帰の会社ですから、最初は電車の乗り方を教えるために、私も実習生の寮がある明大前駅から現場まで一緒に行ったりしていました。私が行けない時はうちの社員も誰か必ず連れて行くようにしていましたね。ただ慣れてしまえばそういった補助も必要なくなるので、そこまで困ることもないですね。
ーー日本語の面で困ることはございましたか?
鈴木社長:個人差は多少ありますが、1期生の子達は日本に来て2年経たないくらいですけど、電話でも普通に会話できるぐらい日本語力が向上していますし、会って話しかけても普通に返事が返ってくるようになりました。彼らは言語の習得が本当に早いですね。
ーー日本に来てからの上達ということでしょうか?
鈴木社長:そうですね、最初は職長たちに厳しく教えられていましたが、来て6ヶ月ほどの2期生達も徐々に話せるようになって来ております。実際に日本で働いてコミュニケーションをとると、机上の学習よりも上達しやすいのでしょうね。
(鈴木社長と2期生の皆様)
ーー厳しい指導とのことですが、やはり昔ながらの指導法が残ってしまうこともあるのでしょうか?
鈴木社長:危ない現場なので、仕事中に危険が無いように厳しく注意することはありますが、もちろん暴力はないですし、厳しいのも仕事中だけです。私が入った頃は本当に厳しくて、ヘルメットをバンっと叩かれて体で覚えるということがありましたけど、昔と違って今はコンプライアンスが厳しく問われてしまいます。だからこそ弊社は実習生の指導員に特別指導手当という形でインセンティブを与え、職長達に丁寧な指導の重要性を理解してもらうようにしています。
少しでも不自由のない生活を
(同社のお花見の様子)
ーー実習生の待遇面で気をつけていらっしゃることはございますか?
鈴木社長:家はもちろん一人一部屋+共有スペースという形でプライベートが守られるようにしています。また、ベトナムの子達は米が主食なので、米は満足に食べられるように、全支給していますね。いつも米がなくなると実習生達から、
「米がなくなりました!」
と連絡が来るので、私が担いで持っていきます。彼らの友達が働いている企業さんでも米の支給はなかなか無いみたいで、非常に喜んでもらっています。
外国人に活躍してもらわないと今までのような経済活動は維持できない
ーーオリンピックで仕事が一段落するという噂がありますが、その辺はどうなんでしょうか?
鈴木社長:みなさんそう思われるのですが、オリンピックで工事が一段落するかと思いきや、東京だとまだまだ再開発案件がいっぱいあるんです。一方で、オリンピックを目処に年配の作業員が減ってしまう可能性が高いのでそこが正念場ですね。
ーーオリンピック後に引退される方が多いのはなぜでしょうか?
鈴木社長:オリンピックまで頑張ろう!というモチベーションで働いている年配の方が非常に多いからです。そこで技術を持ったベテランの職長達が引退してしまうのが心配ですね。外国人技能実習生達ももちろん大切なんですけど、現状の枠組みでは3〜5年で母国に帰ってしまいます。やはりそれでは高度な技術は身につかないので、体制としてはベテランの職長を基軸に日本人の作業員が何人かいて、技能実習生が補助的に作業してもらうという形になります。
ーー可能であれば残って欲しいということでしょうか?
鈴木社長:もし可能であるならずっといてほしいですよね。というより今後の日本を考えれば、もっと雇用条件をよくして、建設業に定着してくれる外国人を増やしていかないと回っていかないと思います。相撲見てても外国人ばっかりじゃないですか?もっと外国人入れていかないと、日本人はどんどん減っていくわけですから、今までのような経済活動は維持できないと私は思いますけどね。
ーー最後にこれから外国人の受け入れを行う同業他社へのメッセージ願います。
鈴木社長:この先日本の人材が減っていく中で私の知り合いには、
「うちは日本人だけで頑張る。」
とおっしゃる社長もいます。それも一つの考え方だと思いますが、やはり外国人の力も活用しつつ、やっていくのが良いのではないかと思いますね。そして、どうせやるなら早いうちに着手して、学校じゃないですけど、3年の実習期間の中で、1年生、2年生、3年生のような形でずっとサイクルとしてやっていけるのが理想ですね。まだ3年経っていないので完成はしていないのですが、一番上の代が下の子たちを面倒見てあげてという形ができてくればいいのかなと思います。
ーー大変勉強になるお話をいただきありがとうございました!
編集後記
働き手の不足という危機感から、業界の体質を変革していこうとされる鈴木社長のお話は非常に勉強になります。日本に働きに来た外国籍の方に、
「日本はいい国だな」
と思ってもらうことが、先進国が軒並み人口減となる時代に日本を選んでもらうことに繋がるのは間違いありません。情報発信を通じて、佐々木架設さんのように日本に来た外国籍の方を大切にする企業を増やしていければと思っております。
外国人材の採用・定着に課題を抱えている建設業様は、下記よりお気軽にお問い合わせください。専門コンサルタントによる無料相談を承っております。