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外国人技能実習生の失踪を防ぐには?法務省発表の新防止策で何が変わる?

目次

技能実習制度 防止策

「技能実習生の失踪が増えて、防止対策が厳格になるって聞いたけど、実際のところ何が変わるの?」

「うちの実習生の失踪を防ぐには結局どうしたらいいの?」

先日出入国管理局(法務省)から新たな失踪防止策が発表されました。

この発表を受け、上述の疑問が浮かんだ方も多いかと存じます。

本記事では、先だっての発表内容の詳細から、防止策が打ち出された背景、及び失踪を防ぐための具体的なノウハウまで解説いたします。

ぜひ貴社の技能実習生の「失踪防止」にご活用くださいませ。

令和元年11月12日に出入国管理庁が発表した新たな失踪防止策の内容は?

注目すべきは下記の4つの内容です。①〜③は年度内に法務省令が改正され、順次施行される予定です。

①一定期間の新規受け入れ停止措置

以前は失踪原因が実習先にある場合にのみ、その機関の新規受け入れを停止するという対策を年度内に開始する予定としていましたが、今回の発表では、

『失踪原因が不明』

でも、失踪者が短期間に多数出ていたり、継続的に出ていたりするケースで停止措置が講ぜられることになりました。

しかもその対象が実習先だけではなく、監理団体と海外現地送り出し機関に広がっています。失踪に対する処置がより厳格化されたと言えるでしょう。

②無期限受け入れ不可とする措置

仮に賃金の未払い等の違法行為が原因で技能実習生が失踪してしまった場合は、その機関が無期限受け入れ不可処分を下されるように変わります。こちらも実習先だけでなく、監理団体や海外現地送り出し機関が対象です。

③技能実習生の在留カード番号のハローワーク報告義務

これまで「外国人雇用状況の届出」でが求められなかった、技能実習生の在留カード番号をハローワークへ報告することが義務となります。失踪者の特定を容易にするためです。

ただ、こちらに関しては特に意識する必要もないでしょう。

④【現在検討中】違法行為をしていた企業名の公表

こちらは現在検討中です。仮にこれが決定されれば、失踪者を出した企業が違法行為をしていた場合、企業名が公表されることになります。ただ技能実習生を雇用できなくなるだけではなく、社会的な制裁を受ける仕組みに変わるということです。こちらが施行されるようになれば、悪質な企業を本当に淘汰できるかもしれません。

なぜ技能実習生の失踪防止策が打ち出されたのか?

それは外国人技能実習生の失踪が年々増加しているためです。下記は平成27年〜平成30年までの技能実習生数と失踪者数を表しているグラフです。失踪率は例年約2%と変動はないのですが、技能実習生の母数が平成30年で約42万人と急激に増加したために、失踪者も比例して増加しているということです。。平成30年の失踪者数は9052人、今年上半期に失踪した技能実習生は前年比256人増の4499人と増加しています。

↑出入国管理局統計よりリフト株式会社で作成

なぜ実習先、監理団体及び送り出し機関への措置が厳格化されたのか?

それは失踪者を出してしまった実習実施機関への追加調査で、数多くの不正行為が確認されたからです。

今回、「受け入れ停止措置」や「受け入れ不可措置」の追加実施を発表することにより、より厳格な制度運用を促したいということでしょう。

平成31年に行われた法務省の調査によると、技能実習生が失踪してしまった4280の実習実施機関の多くで不正行為が黙認されていたことが分かりました。下図がその内容です。

↑法務省 技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム発表の平成31年3月28日 『調査・検討結果報告書』のデータを元にリフト株式会社で作成

↓は上記の不正行為の定義です。

ア 本調査における不正行為等の分類

 ① 最低賃金違反

当時における地域別最低賃金を下回る賃金 しか支払われていないおそれのあるもの(労 基法第28条,最低賃金法第4条参照)

② 契約賃金違反

契約条件を下回る賃金しか支払われていな いおそれのあるもの(労基法第24条第1項 参照)

③ 賃金からの不適当

賃金から住居費や食費等が控除される場合 な控除 において,実費を上回る過大な控除がなされ ているおそれのあるもの(労基法第24条第 1項,最低賃金法第5条参照)

④ 時間外労働等に対 時間外労働等に対する割増賃金が適正に支 する割増賃金の不払 払われていないおそれのあるもの(労基法第 37条参照)

⑤ 残業時間等不適正

36協定未締結の状態で,又は36協定に 違反して,残業又は休日労働をさせているお それのあるもの(労基法第32条~第36条 参照)

⑥ その他の人権侵害

①~⑤に該当するもののほか,暴行・脅迫 ・監禁,違約金・強制預金,旅券・在留カー ド・預金通帳等の取上げ,正当な理由のない 帰国の強制,ハラスメント等の重大な人権侵 害に該当するおそれのあるもの

⑦ 書類不備(重大)

賃金台帳が備え付けられていないもの又は 保存期間の満了前に賃金台帳を廃棄した等の 重大な不備があるおそれのあるもの(労基法 第108条,第109条,同法施行規則第5 4条,第56条参照)

⑧ 書類不備(軽微)

賃金台帳の必要的記載事項の一部に不記載 が認められる等の軽微な不備があるおそれの あるもの(参照条文は,⑦と同じ)

⑨ その他の不正行為

技能実習計画との齟齬(法第16条第1項 等 第1号参照),虚偽帳簿書類の提出(同項第 5号参照)等に該当するおそれのあるもの

出典:平成31年3月28日 『調査・検討結果報告書』 

法務省 技能実習制度の運用に関するプロジェクトチーム

 

技能実習生の失踪を防ぐにはどうしたらいいの?

まずは失踪の原因を理解することから始めましょう。下記は平成30年法務省発表の「技能実習制度の現状」から作成した失踪者へアンケート結果に関するグラフです。

↑平成30年法務省発表「技能実習制度の現状」よりリフト株式会社で作成。

ここから技能実習生の失踪を防ぐための7つのポイントが読み取れます。

ーー外国人技能実習生の失踪を防ぐ7つのポイントーー

①契約書通りの適切な給与を与える。

②帰国後の就職先があるか、事前に送り出し機関に確認しておく。

③昔ながらの指導法を改め、思いやりを持って指導する。

④違法な残業は決してさせない。本人が望まない残業を強要しない。

⑤絶対に暴力を振るわない。

⑥実習計画に沿わない行動を強制しない。

⑦適切な送り出し機関・監理団体を利用する。

技能実習制度活用の心構え

以上を踏まえて、技能実習制度活用のための注意点について時系列に沿ってまとめていきます。

1. 基本的な考え方

外国人技能実習生は『安い労働力』ではないことをとにかく強く意識してください。仮に最低賃金に近い水準で働いたとしても、渡航費用や監査費用などを含めると日本人の派遣とほとんど変わらない水準になります。さらに、人権侵害をするような企業は、公的な機関よりも早く、実習生からの口コミで早々に社会から追放されます。決して甘い考えで制度を活用しないようにしましょう。

2. 技能実習実施前に注意すべきこと

技能実習実施前は下記4点に注意してください。

①適正な送り出し機関と監理団体を利用する。

これがもっとも大事です。誠実な事業運営を行なっている監理団体及び送り出し機関を選択してください。認定されている監理団体はこちらのページ、認可を受けている送り出し機関はこちらのページでそれぞれ確認することができます。

②技能実習後に母国で仕事があるか確認しておく。

帰国したくないから」失踪する実習生もいます。それは母国に帰っても仕事がない可能性に対する不安が原因です。現在では日本企業が出資して、日本で育てた人材を母国の事業の中核を担う人材として活躍してもらうという仕組みも徐々にできつつあります。技能実習生の帰国後の不安感の払拭ができる環境であるかしっかりと見極めるようにしておきましょう。

③面接時に技能実習の制度と実習中の待遇について丁寧に説明する。

技能実習中のスケジュールや、具体的にどのくらいの賃金がもらえるのか、どんな職務内容に従事するのかなど、待遇に関することも丁寧に説明してください。「聞いていたことと違う!」ために失踪する実習生が非常に多いです。面倒くさがらず丁寧に説明してください。

④実習生の選考には必ず、経営層の方が立ち会うこと。

面接時には実習生の両親と会い、大事なお子さんを預からせていただきますと挨拶する場があります。この機会により、組織で力を持った方が、技能実習生の人権を守る責任があることを強くできるようになります。適切な技能実習の実施に関してはこちらの取材記事をご参考ください。

3. 実習開始後に意識すべきこと

①技能実習生の指導員を適切に任命する。

技能実習の成功はここにかかっていると言っても過言ではありません。うまくいっている企業さんを取材すると、決まって、担当の指導員の方と技能実習生の方の関係が良好です。どうか慎重に指導員の方の認定を進めてください。

②あらかじめ伝えてあった業務内容に従事させる。

簡単に言えば、約束は守ろうということです。先述しましたが、「聞いていた業務内容と違う!」というのはトラブルの原因になります。母国で説明していた通りの業務内容に従事させてください。

③賃金の支払いも遅滞なく約束通り支払う。

冒頭で述べた通り、今後これができない企業は受け入れ不可になるだけではなく、企業名を公開され、社会から追放される可能性出てきました。くれぐれも気をつけるようにして下さい。

4. 実習終了時に意識すべきこと

①「特定技能」への変更は出来るだけ早く

「特定技能」に変更する場合、できるだけ早い段階、通例3ヶ月前から申請をするようにしましょう。一度帰国してから申請するよりも、日本で申請する方が認可が早く降りる場合が多いです。

②空港に見送りまでしましょう

実習は帰国するまでが実習です。帰国日に失踪ということも生じています。今後は失踪の原因を問わず、受け入れ停止処分に変わりますので、可能であれば、見送りまでするようにお願いします。

まとめ

誠実に技能実習制度を活用していれば、そもそも今回解説した新たなペナルティに該当することはほとんどありえないでしょう。実際、現在も幸せな実習を行なっている企業が大半です。もしあなたがこれから技能実習制度の活用をお考えであれば、今回まとめたような内容に留意して、失踪を防いでいきましょう。

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特定技能の要点

 
関根謙志郎

取材班

福島県内の高校卒業後、東北大学に入学。在学中は硬式野球部に所属。英語学、心理学、英語教育学を専攻。卒業後は社会を構成する『ヒト・モノ・カネ・情報』が遍在することで生じる歪み(社会問題)をビジネスを通して適正化するというミッションに共感しリフト株式会社に入社。現在はマーケティングを担当。