• 株式会社AOZORA
  • 代表取締役社長
  • 佐保昭一 氏

覚悟なき企業には技能実習生を送り出し出来ません!タイ人送り出し機関を営む佐保氏のお話。(後編)

目次

↑快く取材に応じていただいた佐保昭一氏

技能実習生は安い労働力でしょ。いくらで雇えるの?なんてスタンスで技能実習生を受け入れようとする企業にうちの実習生は送り出し出来ません!

そう言い切るのは株式会社AOZORA代表取締役社長の佐保昭一氏です。

佐保氏は自動車関係の大手企業役員として、人材不足が深刻だった傘下の自動車修理工場が技能実習生を雇用できる仕組みを構築し、100名以上の実習生受け入れを行ったという異色の経歴をもつタイ人送り出し機関経営者です。

前編では、技能実習生受け入れ企業の役員だった佐保氏が、なぜ送り出す側に回ったのか、そしてなぜタイのチェンライに拠点を作ったのかご紹介しました。

後編の本記事ではタイ人が日本に定着するための独自の教育・管理制度と、実習生を受け入れる企業が絶対に意識すべきポイント、及び同士の目指す送り出しビジネスの理想形についてご紹介いたします。

教育で大切なのは日本の就労・生活慣習を教えること。

↑AINでの日本語教育の様子

ーー候補者の方はどのように教育されているのですか?

佐保氏:「日本語」「技能」そして「日本の生活習慣や文化」以上3分野の教育を行なっています。

ーーそれぞれについて教えてください!

佐保氏:まず日本語学習についてですが、通常技能実習生は160時間の学習を義務付けられていて、日本に来てからも補足的に学習を行います。しかしはっきり申し上げてその160時間で日本語が流暢に話せるようになる実習生はゼロなんです。

ーーそうなんですか!?

佐保氏:日本人の英語学習を思い起こしていただきたいのですが、160時間の学習で話せるようになることはほぼ不可能ですよね。それと同様で6ヶ月の研修で日本語が話せるようにすることは不可能なんです。ですから最低限必要なこととして、日本人が言っていることをひらがなで全部書き取りができるようにすることと、基本的な生活を送れるような日常会話を集中して教えています。

ーー技能についてはどういった内容を指導されていますか?

佐保氏:弊社では建設や農業の実習生が多いのですが、それぞれ本当に基本的なことを指導しています。ただ農業については弊社でさくらファームという農園を運営していますので、そこで実践的に学んでいます。

ーーさくらファームはどういったものなんですか?

佐保氏:さくらファームは送り出し機関が運営する本当の農場です。送り機関から約800mのところに1500坪くらいで営んでおります。そこで作った野菜は病院やEC販売や市場などに卸しています。日本の技術を取り入れて、ビニールハウスを用いてスイカもメロンも作れますから、そこで学んでいる実習生が日本に行って学んで、帰ってきて再びそこで働くこともできるし、独立することもできます。ここで作った農作物によって、実習生の生活費もさらに下げることもできています。

ーー素敵な仕組みですね。

↑さくら日本語学校の卒業式(6ヶ月間で日本の文化についても教える。)

ーー最後に生活習慣や文化についてはどのようなことを教えているのでしょうか?

佐保氏:一番大切なのは日本の生活習慣を教えることですね。厳しいゴミの分別は日本の分別と同じものを用意して実践させています。そして一番教えなければならないのは、日本の時間を守る、約束を守るという文化です。タイには、

マイペンライ

という言葉があって、まあいいじゃない、どんまいどんまいという言葉なんですが、タイ人は朝8時に集合ねというと、8時に家を出るんですよね。バンコクには日本のようにがむしゃらに働こうという雰囲気は全くないんです。日本に行くとなったらそうはいかないですよと、だから時間に関しては特に厳しく見ています。

ーーなんだか羨ましい文化な気もしますが(笑)具体的にはどのように時間厳守の文化を徹底されているのでしょうか?

佐保氏:学校では毎朝8:30から朝礼をスタートしますが、毎日私の携帯に全員がガッツポーズしている集合写真が送られて来るようにしています。それは記念撮影ではなく、出席を確認しているんです。仮に欠席があったらその理由を全部その日のうちに聞き出すようにしています。

タイは日本よりも情報共有ネットワークが優れている。

↑2019年9月12日の集合写真の様子 全員集合でバッチリの写真

ーー集合写真の連絡が来るとのことですが、技能実習生とのコミュニケーション網がしっかりされているということでしょうか?

佐保氏:そうですね。よく勘違いされている方がいらっしゃるのですが、今の実習生は100%スマートフォンを持っていて、全ての関係者とLineかFacebookで繋がっています。実習先の企業毎にもグループがあって、何かあったらすぐに連絡が取れるようにしてあります。

ーーチェンライには山民族が住んでいるとのお話が先ほどありましたが、情報インフラは既に整っているのですね。

佐保氏:タイはどんな田舎に行っても4G回線ですし、どこに行ってもwifiが無料で公開されています。日本もスタバとかマクドナルドとかありますけど、タイはもっともっとwifiが使えますので、ひょっとすると日本よりも自由にネットワークを使用することができるかもしれません。

ーーそうだったんですね。であれば実習中の家族との連絡もバッチリですね。

佐保氏:そうです。だから企業の嘘が通用しなくなっていますただし決め事として全体グループで企業ごとの給与明細や社員旅行などの待遇の良さは絶対に乗せてはいけないことにしています。当然条件は企業毎に異なりますので、全体グループに公開されてしまうと私はあっちに行きたかった、私はこっちに行きたかったとなって実習に支障をきたしてしまいます。そうならないように、企業毎の細かな情報を載せることは絶対にご法度としています。

ーー金銭面は載せないにせよ、暴力を振るうなどの悪質な企業は自然淘汰されていきそうですね。

佐保氏:そうですね。それは仕方がないことです。ただ技能実習生が感情的にそういった書き込みをすることは少ないです。書き込みによって企業との関係が悪化し、さらにひどい状況になってしまうこともあります。また、詳しく話を聞いてみると実習生の側にも問題があったということもあります。実際そういった問題の多くは企業担当者や私に個別で相談すれば、すぐに改善できる場合がほとんどですので、実際は緊急事態に関するところは実習生もあまり全体には載せないですね。

ーー個別相談のルートは確保し、解決可能なものは解決してできる限り双方にwin-winになるように支援されているということですね。

実習生を受け入れるなら問題は必ず起こることを覚悟する。

↑技能実習生が獲得したビザ。ビザを取得し日本に行くことは簡単ではない。

ーー実習生の受け入れを考えている企業にこれだけは押さえてほしいと思うポイントを教えてください。

佐保氏:技能実習生を受け入れるのならば、問題は必ず起こります。だからこそ企業側にはその問題に対処する覚悟が必要です。

ーー問題は必ず起こるとはどういうことでしょうか?

佐保氏:文化の違いから問題は必ず起きるのですが、解決できないような問題は起きないです。例えば頭を撫でたり、軽くたたいたり、人前で大きく叱責したりすることはご法度です。そういったことにタイ人は慣れていないので、すごくいじめられているように感じてしまい、

「なんで許してくれないんですか?神様は許してくれます。」

というようなことをいうことになってしまいます。これは歩み寄りながら解決していかなければなりません。

ーー企業にはどういう姿勢が必要になるでしょうか?

佐保氏:技能実習生を日本人と同じかそれ以上に大切にする姿勢が必要です。日本人よりも実習生は古い日本人と感覚が近いです。今の20代の日本人は親に仕送りなんてしないですよね。それが実習生は手取りで12万円が入ると実に8万円は家族に送金してしまいます。そんな背景を踏まえた上で企業はこの外国人が入ることによって事業が大きくなる、さらには日本人の採用も豊かになることに対する感謝の気持ちを持たなくてはなりません。

ーーまずは感謝の気持ちが必要なんですね。

佐保氏:彼らは普通の日本人のような自由がない状態で、家族のために働きに来ています。だからこそ彼らの人権を守り、日本に来ている間の住む場所や賃金の支払いは必ず当初の契約通り履行することを約束して欲しいです。それができないのであれば、実習生なんて入れちゃダメです

ーー約束を履行する覚悟のない企業は技能実習生を受け入れる資格がないんですね。

佐保氏:そうです。そう行った基本的なことが守れない企業さんには私どもとしても実習生を紹介しません。一部の自社の利益だけを考えて受入をしている企業がニュースになっていますが、はっきり言ってそういうのは実習事業じゃないです。きちっと家族との絆を大切にして、日本人と同等ないしはそれ以上に大切にするという意識を持って雇用するということを約束できない企業には、決して技能実習生達を送り出してはいけません!

ーー勉強になります!

↑誠実な取り組みが奏功し、現地の学校との紹介協定を結ぶなど徐々に好循環が生じてきている。

運命が決まってしまっていた孤児にもチャンスを与えたい

ーーここまでのお話で技能実習生のトラブルがなぜ生じるのか、企業としてどんなことを意識しなければならないのか見えてきました。最後に今後成し遂げたいことを教えてください!

佐保氏:適正に得た利益を、実習生がより低コストで行ける仕組み作りに再投資して、これまでは決められた人生を歩むしかなかった人達に日本に行くチャンスを与えることと、送り出した以上は実習生達が誰一人途中で途切れることなく安定して働けるようにすることを実現したいです。

ーー決められた人生を歩むとはどういうことでしょうか?

佐保氏:タイには生まれながらにして、家業である農業を継がなければならないという方や出国に必要なIDすらない孤児がいます。そういう方々は貧しくて大学にはいけません。彼らはインターネットで世界にはいろんなチャンスがあると知り、日本に行って帰ってきたら、もしかしたら自分は経営者になれるのではないかと希望を抱きます。そういう人たちにも平等に日本に行くチャンスを提供し、最終的にタイで事業を起して欲しいと思います。そうすれば日本から企業が進出して共に仕事をしてもいいし、どんどん地域経済を活性化させることができます。

ーーIDすらない孤児とはどういうことでしょうか?

佐保氏:中々日本の常識だと中々イメージできないと思いますが、ミャンマーやラオスの国境のところは親が亡くなって居たり、親の名前すら分からない子達がいて、彼らはIDがないため出国できないのです。例えば候補者と面接すると、やたら1月1日生まれが多いんです。それは出生が不明だった孤児がのちにIDを受けたからです。

ーーそんな子達がいるとは、まったく無知でした!

佐保氏:1年前のタイの洞窟に閉じ込められた13人の子供達の中にもIDの無い子がいました。今回の件がきっかけで全員にIDが付与されたんですね。ただそのようなきっかけがない子達の方が圧倒的に多いです。どんな境遇にあっても、能力があり、意欲があり、家族想いな若者に、もっと日本に来てもらえるよう、事業を通してチャンスを創出し続けていくのが私の理想です。

ーー大変勉強になるお話をいただきありがとうございました!

↓佐保氏のインタビュー動画はこちらです!

Global HR Magazine編集部からのお知らせ

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特定技能の要点

 
佐保昭一 氏

株式会社AOZORA代表取締役社長

30歳の時、平社員で自動車修理大手FC本部を営む企業に入り、後に常務取締役となる。約1000店舗FC店舗があったが、働き手の不足や高齢化によりFCの継続が困難になったため、技能実習生をたいから受け入れる仕組みを構築。51歳の時、2015年11月に独立、タイの若者をたくさん日本に送り出して日本で活躍してもらうという活動を事業にしようと考え、タイの送り出し機関に投資して副社長に就任し事業を開始。現在徐々にビジネスの循環が回り始めた。

                各サービスに関する料金体系、 就労までの流れなどの資料