更新日:2020/12/23
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(在留資格「特定技能1号2号」及び「技術・人文知識・国際業務」要件比較表©︎Lift.inc)
改正入管法が2019年4月1日に施行され、新しい在留資格「特定技能」が設けられました。これを受け、人手不足が深刻であると認められた14の分野(上図参照)において外国人労働者の就労が可能となりました。政府の方針では今後5年間で最大約34万5000人の外国人労働者の受け入れを行うとされています。
そこで本記事では、在留資格「特定技能」の概要と企業が行う実務を説明していきます。
▶︎その他の在留資格については、在留資格徹底解説をお読みください。
新在留資格「特定技能」なぜできた?
上図に記載の14分野は単純労働とみなされ、今まで原則として外国人労働者の従事は禁止されていました。しかし同分野において少子高齢化に伴う働き手の不足が深刻化し、生産性の向上や国内人材の確保のための取り組みを行ってもなお、状況の改善には不十分であると判断されたため、外国人労働者の受け入れが解禁される運びとなりました。
「特定技能1号」とは?
「特定技能」には1号と2号があります。「特定技能1号」はそれぞれの分野毎に課せられる「技能試験」及び「日本語試験」に合格するか、技能実習2号を良好に修了することで、当該分野に限り5年間の就労が可能になる資格です。これまでの就労資格との違いは、在留資格の認可に「学歴」や「母国における関連業務への従事経験」が不要とされていることです。受け入れ側に細かなルールが課せられるものの、取得希望者からすると、非常に敷居の低い資格となっています。
「技能実習」との違いは?
そもそも「技能実習」は「技術移転による国際貢献」、「特定技能」は「労働力の確保」と目的が異なります。現状、技能実習制度が本来の目的から逸れてしまっている実態はありますが、今後、労働力として技能実習生を使うことは難しくなってくるでしょう。
そういった根本の部分で違いがありますが、実務上のポイントは2つです。一つ目は「特定技能」資格者は同分野内での転職が可能であること、二つ目は受け入れに人数制限がないことです。
①転職が可能
技能実習制度説明のページに記載した通り、技能実習生は原則として転職することができません。一方で「特定技能」資格者は同一分野内で転職が可能です。そのため「技能実習生」よりも「特定技能」資格者はより労使の関係性構築が重要になると考えられます。
②受け入れに人数制限がない
「技能実習」の場合には常勤職員の総数に応じた人数枠(参照)があります。一方で特定技能の場合には「介護」と「建設」分野を除き受け入れ人数に制限がありません。
「特定技能2号」とは?
「特定技能2号」は「特定技能1号」修了者が移行できる資格です。現在では「建設」と「造船・船舶工業」の2分野のみ1号からの移行が可能です。「特定技能2号」は更新が無期限であるため、就労先がある限り日本に在留することが可能です。そのため「特定技能2号」まで取得すれば、10年間の日本在留が要件となる「永住権」を取得できる可能性が拓けます。
「特定技能」外国人の対象職種は?
前掲図の通り、下記の14分野となります。分野によって更に細かく職種が定められています(建設分野の左官職種といった感じです)。
介護、ビルクリーニング、素形材産業、産業機械製造業、電気・電子情報関連産業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業
結果見送りとはなりましたが「コンビニ」が特定技能の対象職種にとの提言がなされるなど、今後、分野・職種は確実に追加されていくでしょう。
「特定技能」外国人を採用する流れは?
採用に関して法令遵守されている企業であれば、「支援計画の策定」と「ビザの申請」が必要であること以外に、日本人と特別な違いはありません。またその二つとも認可を受けた登録支援機関に委託することが可能です。
↑在留資格「特定技能」保持者の就労までの流れ ©︎Lift.inc
(外国人材の就労までの流れ ©︎Lift.inc)
「特定技能」外国人の雇用主(特定技能所属機関)となるには?
具体的な条件は下記の4点です。
①外国人と結ぶ雇用契約が適当(日本人と報酬が同等以上)
②機関自体が適当(5年以内に法令違反がない)
③適切な支援体制(外国人が理解できる言語で支援可能)
④外国人を支援する計画が適当(日本語教育、住居確保など支援計画の作成)
*受け入れ企業としての適当性に係り、下記のような細かな欠格事由が存在します。
・直近で非自発的離職者(解雇者)を出した場合は受け入れ不可
・もともと派遣の方がいた場合の雇い止めの場合でも更新を期待させた場合はNG
・試用契約を結んでいた社員の本契約を拒否した場合はNG
*③、④の支援体制については「登録支援機関」に一切を委託することで条件を満たしたことになります。登録支援機関は個人事業主でもなれる敷居が低い機関です。だからこそ委託する前に母国語でサポートできるスタッフの人数や外国人材雇用に携わってきた期間などを確認することをお勧めします。
適切な支援とは?
支援しなくてはならない項目は下記となります。
事業主は、自社で支援責任者をたてて支援体制を整えるか登録支援機関に委託をするかして、支援を行う責任があります。
(出典:出入国在留管理庁(平成31年4月)「在留資格「特定技能」について」)
「出入国在留管理庁への届出」を忘れずに
「特定技能」資格者を雇用する場合、出入国在留管理庁への各種届出もしっかりと行う必要があります(上記支援の⑩定期的な面談の報告も含みます)。届出期間内に届出をしないと罰金や過料等の制裁があり、在留資格審査にも影響が出ますので、下記の一覧表で内容をチェックしておきましょう。

(「特定技能」人材の雇用に伴う入国管理局への届出一覧票 ©︎Lift.inc)
「特定技能」人材の採用経路は?
特定技能人材の募集ルートは、大きく下記の4つに分類されます。
①自社の技能実習生に特定技能へ移行してもらう。
②自社の留学生アルバイトに技能試験と日本語試験に合格してもらい社員とする。
③現在海外にいる試験合格者・元技能実習生(他社出身)を採用する。
④現在日本にいる試験合格者・元技能実習生(他社出身)を採用する。
簡単に時間と難易度で整理すると下記のようになります。(上記分類よりも少し細分化してあります。)
(営業活動における体感値を元に、リフト株式会社で作成)
理想は、①、②のように、既に自社と関係を持っている外国人の方と良好な関係を築き、引き続き特定技能として働いてもらうことです。
しかし、「特定技能」は「技能実習」と違って転職が可能で、元技能実習生がより待遇の良い会社を志向するのは防ぎ難いことを考えると、③、④のルートから、いかに上手に採用するかも重要になってくるでしょう。
「特定技能」人材の送出し国は?
では、どの国の人材であれば特定技能として採用することができるのか?
原則として在留資格「特定技能」はどの国籍の外国人の方でも取得することは可能です。
ただし、例外として、改正出入国及び難民認定法違反による退去強制令書の円滑な執行に協力しない国や地域、具体的にはイラン・イスラム共和国の方は「特定技能」の在留資格で来日することはできません。
下記は法務省発表の特定技能外国人の受け入れに関する運用要領からの引用です。
〇 入管法における退去強制令書が発付されて送還されるべき外国人について,自国民の引取り義務を履行しない等,退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域 の外国人の受入れは認められません。
○ 退去強制令書の円滑な執行に協力しない国・地域とは,告示で定める次の国・地域をいいます(平成31年4月1日時点)。
・ イラン・イスラム共和国
なぜ、このような制限が設けられたかというと、改正出入国管理及び難民認定法違反により退去強制命令を下されるも、その引き渡しに母国が協力しないために、入管の収容施設に長期間に渡って収容されてしまうというケースが問題になっているからだと言われています。
劣悪な環境で、長期間に渡って収容されることで、精神疾患を患った方や、講義のための食事拒否活動などが報道されていましたね。
今後、情勢によっては出身国制限が拡大、縮小される可能性はあります。
実際問題として、試験実施の問題もありますので、特定技能人材の出身国は、日本が「特定技能に関する二国間の協力覚書」を結んでいる国がメインとなってきます。
特に、現状を見る限り技能実習生からの切り替えが大多数を占めていますので、現在最大の技能実習生送出し国であるベトナムの比率が当面は高いと考えて良いでしょう。
「特定技能」人材受け入れの費用は?
大きく以下の3つを考えていただければと思います。
①特定技能人材の在留資格申請や支援に係る費用
②特定技能人材の教育、紹介に係る費用
③送出機関に支払う費用
「日本にいる技能実習生が切り替えで特定技能の資格を得た場合」は②の教育費や紹介料、③の送出機関に払う費用が発生しませんし、「支援を自社で行う場合」は①の支援に係る費用が発生しません。このように「どういった経路で採用するか」、「支援を外部に委託するか」などケースバイケースで変動しますので、詳しくは、こちらの記事をご参照ください。
「特定技能」外国人を派遣形態で雇うことは可能なのか?
原則として派遣形態での雇用はできません。農業・漁業以外はフルタイム、直接雇用のみ認められています。農業・漁業に関しては季節及び地域によって繁閑の差が激しいため、派遣形態での雇用が可能になっています。
最後に:「特定技能」の創設は移民政策なのか?
安倍首相は「出入国管理及び難民認定法の改正は移民政策ではない」と繰り返し述べています。移民をどう定義しようが、既に在留している外国籍の方は300万人にも上っていること、少子高齢化を背景に特定技能人材の方が今後増加することを考慮すると、外国籍の方の定着・包摂を見据えた出入国在留政策の議論は避けて通るべきではないでしょう。
Global HR Magazine運営会社からのお知らせ
今後、労働者として外国人材を雇用したいと考えている企業様は「特定技能」への対応が急務になるかと思います。
弊社も登録支援機関として特定技能人材の受け入れサポートサービスを提供しておりますので、「特定技能について詳しく知りたい!」という方は、下記フォームよりお気軽にお問い合わせください。